旅九日目、元祖モンハン!? スサノオ様VSヤマタノオロチ

 髭を剃られる前だったらヤマタノオロチと真っ向勝負しても、勝ち目があったかもしれません。


 しかし、今は神のチート能力が半減していて、返り討ちにされてしまうかもしれません。

 スサノオ様に何か策はあるのでしょうか……。

「アシナヅチとテナヅチな夜までに、酒を八つ作ってくれ!」


 私達が心配する必要もないかもしれません。どうやら、スサノオ様は何か考えがあるようですね。


 アシナヅチ様はテナヅチ様は大急ぎで、お酒を作りはじめ。神のチート能力で日が暮れるまでに、お酒を八つ作りました。。


 そして、八つの酒樽を家の周囲に置いて、準備完了です。


 うーん、お酒が大好きな私としては、アシナヅチ様達が作ったお酒が気になります。

 一口いただいてみましょう。


 ごく、んっ!? 


 この、お酒、味はともかく、メチャクチャアルコールが強いです。

 

 こんなに度数の強いお酒を作らせて、スサノオ様は一体何を企んでいるのでしょうか?



 


 夜になりました。


 太陽の光が消えると、急に家が異様な雰囲気に包まれます。

 この空気、黄泉の国ほどではありませんが、嫌な感じがします。ヤマタノオロチの気配に悪霊達が、寄ってきているみたいですね。


 スサノオ様は大丈夫でしょうか?


「(。-ω-)zzz スヤァー」

 待ちくたびれて家の中で寝ています。恐ろしい怪物との対決前だというのに、感心するほど図太い神経をしています。


 おや、なんだか生温かい風が吹いてきました。全身に鳥肌が立つほど、ものすごい邪悪な気配が近づいてきます。そして外では、家の側を流れる川は怯えるように震えています。


 山の向こうから巨大な影が迫ってきます。その正体はラオシャンロンではなく、八つの頭を持つ巨大な蛇でした。


 あの怪物がヤマタノオロチに間違いありません。



「ん、ついに来たか!? クシナダ姫は渡さない」


 スサノオ様も異変に気付いて目を覚まし、鞘から愛剣である天羽々斬あめのはばきりを抜きました。


 しかし、飛び出す事はせず、家の中で身を隠し、外の様子を伺っています。


 私達、神話の旅人は、この世界の住人達の目には写りません。外の様子を見てみましょう。

 

 いくつもの鬼灯ほおずきのように赤く不気味な目が、家の様子を見ています。きっとクシナダ姫様を探しているのでしょう。

 

(こいつが、ヤマタノオロチか……でかいな! 俺の策、果たして、上手くいくか)

 スサノオ様の額から一筋の汗が流れ落ちます。流石に緊張しているようですね。剣に握る手にも、一層力がこもります。


 天にスサノオ様の思いが通じたのか、クシナダ姫様を狙ってきたヤマタノオロチでしたが、酒樽が置いてある事に気付きます。


「ン? 酒ガ置イテアルゾ!」

「アシナヅチト、テナヅチ、ドウイウ風ノ吹キ回シダ?」

「キット、食前酒ニ違イナイ」

「ソウダ! 飲モウ! 飲モウ!」

「乾杯♪」



 スサノオ様の読み通り、ヤマタノオロチはお酒が大好きなようでした。え、どうやって、その情報を仕入れたのかって? 勿論、あれですよ。神のチート能力です!



 あらら、八つ頭はそれぞれ、酒樽に頭をつっこみ、ゴクゴクとお酒を飲み始めましたね。

 お酒が好きな私でもビックリするくらい、アルコールがキツかったのに、あんなに勢いよく飲むと、すぐによいが回っちゃいますよ。


 案の定、ヤマタノオロチはすぐに酔っぱらったようです。頭を地面に着けて、ぐうぐうとイビキをかいて眠り始めてしまいます。


 その時、家の中でずっと隠れていたスサノオ様が、外に出ました。


 ついにヤマタノオロチ討伐がはじまるようです。

 

 私は雰囲気を出すため、スマホでモンスターハンターのテーマソング、『英雄の証』を流します! 


 テテテテー、テテテテテテテーテレレーレーレーテレレー♪

(大変良い曲なのですが、本筋から大きく外れるので割愛させていただきますm(_ _)m )


 スサノオ様はヤマタノオロチが寝ている隙に、次々に首を斬り落としていきます。そして、手に汗にぎる展開もなくヤマタノオロチを倒しました。


 うーん、なんだか一方的な戦いでしたね。まるでチャージマン研とジュラル星人の戦闘のようです。

 

 頭を全て斬り落としたスサノオ様は、最後に尻尾に向かって剣を振り下ろしました。


 なんだか、鋭い音が響きましたね。

「うん? なにかあるのか?」


 スサノオ様も不思議に思ったようで、尻尾を縦に裂くと、中から一本の剣が出てきます。


 モンハンなら尻尾を切った後に剥ぎ取りを行うと、生産素材の逆鱗や天鱗が、低確率で出てくるところですが、ここはチートの世界なのでいきなり剣が出てきます。

 このヤマタノオロチから出てきた剣が、後に三種の神器の一つである草薙剣になるわけです。


 こうして、ヤマタノオロチを退治したスサノオ様とクシナダ姫様は結ばれました。


 様々困難を乗り越え、またクシナダ姫様と結婚したスサノオ様は、精神的に成長したのか、乱暴な性格が一転します。

 

 まず、スサノオ様はヤマタノオロチから出てきた剣に、天叢雲剣あめのむらくものつるぎと名付け、これを高天原にいるアマテラス様に献上する事で和解しました。


 そしてクシナダ姫様と家庭を築くため須賀の地という所に、須賀の宮という宮殿を建てました。


 この宮殿にクシナダ姫様と住みはじめたスサノオ様は、義父であるアシナヅチ様を呼び出しました。

「アシナヅチよ、名を稲田宮主須賀之八耳神イナダノミヤヌシスガノミヤツミミノカミと改めて、我が宮の長となってくれないか」

 アシナヅチ様はこの申し出を快く受け入れます。


 そしてクシナダ姫様との間に、数人の子供をもうけた後、母であるイザナミ様のいる堅洲国かたすくにへと向かうのです。


 さて、皆様。新たなる神話の扉が開きました。どうやら、その向こうは美しい海に囲まれた、島のようです。

 少し扉を開けて、様子をみてみましょう。


「俺と結婚してくれー!」

「いやいや、俺の奥さんになってくれ。毎日、アクセサリーや好きな服を買ってあげるから!」

「俺の子供を産んでくれー!」

 なにやら、風光明媚な景色に似合わない、サカッた男達が押し寄せているようです。

 

 早速、新たな扉を潜りましょう!



【補足】

 草薙の剣と天叢雲剣は同じ剣です。天叢雲剣はヤマトタケルが火攻めにあった時、この剣で周囲の草を薙ぎ払い急場をしのぎました。つまり、ヤマトタケルが草を薙ぎ払った剣だから、天叢雲剣は草薙の剣という名前に変わったのです。


 母のいる根の堅洲国と書いていますが、正確にはイザナミ様のいる黄泉の国の隣にある国だと言われています。

 

 あと、モンハンネタが多くてすいません(あと、チャー研ネタもね)。わからない人はごめんなさい。好きなんですモンハン……


 

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