第11話 仲間たちの合流

 アディとドリィという2人の女性が歩いている間に挟まれ、両方から手を引かれて街の中に入っていく。


 高身長の2人に対して背の低い僕は、まるで幼い子供のようだろう。周りにいる人たちから、自分がどんな風に見られているか想像をして、恥ずかしくなった。でも、気にしないようにした方が良さそうだ。




 大きめの都市だと聞いていたのだが、中に入って見てみると聞いていた話とは違い何だかとても寂れているようだった。僕がそう感じたのは、街の通りに居る人たちの活気が無いから、というのが原因だろうか。人通りも少ないようだし。


 実際に見て感じた印象では、大都市とは思えないような賑わいを失った雰囲気。


 しかし街の交差路や建物の影などに目を向けてみると、あちらこちらに市民たちが集まって何事か叫んだり、歌っていたり、泣きわめいたりしている奇妙な集団が居るのを目にする。


 街の中とは思えない、おかしな光景を何度も目にしていた。


 これは一体、何事なのだろうか考えてみるが見当がつかず。どうして、こうなっているのか謎は深まるばかり。


「到着」

「よし、ようやく酒を飲めるのか」


「中で皆、待ってくるよ」

「みたいだね。宴会で楽しんでる声が、ここまで聞こえてくるよ」


 ドリィに案内されて到着した場所には、酒場があった。店外に居る僕にも聞こえてくる女性の叫ぶような大声や笑い声、中で騒いでいる声が耳に入ってくる。


 酒場の中へと入ると、そこにはアディの仲間達だと思われる女性達が複数人居た。そして何故か、彼女たちの周りには放り捨てられたように重ねて倒れている男性たちが死屍累々としていた。ここでも、何か事件が起こっているようだ。


「アディじゃないか!」


 赤髪のショートヘアで活発的な見た目をした、そして何故か上半身を裸に露出した女性が居た。って、なぜだ。何も身に着けていない大きな胸を目にした瞬間、慌てて僕は目を逸らす。思わず飛び込んできた光景。女性の裸体が。あわわわわ。


「どこに行ってたんだよ、アディ!」


 逸した視線の先に、白っぽい金髪のセミショート、そして背が小さいのが特徴的な女性が居た。アディを責めるような言葉だが、表情は嬉しそうに笑っている。


 そんな彼女は、お酒の入った大きなジョッキを片手に持ったまま、勢いよく椅子の上から飛び降りた。


 彼女もアディの仲間の1人なのだろう。アディの仲間達の中では、一番に背が低いだろうと思われる女性。と言っても、僕と同じぐらいな背の小ささに見える彼女が、嬉しそうな表情を浮かべてアディに近寄ってくる。


「Zzz……」


 店の奥にあるテーブルに突っ伏して眠っている、銀髪の女性も居る。これだけ皆が騒がしくしているのに、起きる気配が無い。とんでもない状況で熟睡している彼女もアディの仲間なのだろうな。


「さぁ、駆けつけ一杯だ。飲め」


 両手になみなみと酒の注がれたジョッキを両手に持って、片方をアディにほらよと突き出してきたのは、腰まで伸びる長い黒髪の女性。


 酒場に居て宴会をしていた女性たちにアディとドリィ。その場に集まった女性達は多種多様な容姿と性格をしていた。だが、皆が共通して美人であり肌の露出度が異様に高かった。


 惜しげもなく晒された体は、女性としては異常なぐらいに鍛えられたスゴイ肉体を持っている。


 誰もが個性的であり、目にした瞬間にアディの仲間なのだろうと納得させられる、強烈なメンバー達だった。


 アディは長い黒髪の女性から差し出されたジョッキをを受け取り、何の躊躇もなく一気飲みを始めた。


「ぷはぁー! 美味い」


 僕は、アディの腕の中に掴まれたまま。集まってきた彼女達の輪に混ぜ込まれた。頭がくらくらっとするのは、お酒のニオイのせいなのか、それとも集まってきて輪になった女性達から漂ってきたニオイのせいなのか。


 というか……。


「服を着て下さい。胸が見えてますよっ」


 僕の目の前に、ちょうどの高さで見えてしまっている柔らかそうでフワフワとした双丘。ごく自然に半裸姿で僕の視線なんか気にせず立っている女性に、耐えられず。


 僕は口に出して、赤髪の彼女を注意してしまう。


「ん? コレは何だ?」


 だが返ってきた反応は、疑わしげな表情とアディに向けた質問。先ほど、ドリィに向けられたのと同じようなリアクションだった。


「ふっふっふっ、実はこの子、凄いスキルの持ち主なんだ」

「なんだ、その凄いスキルとやらは」


「そのスキルとは、ズバリ”魔物寄せ”だ!」

「魔物寄せ? 初めて聞くスキルだが」


「もしかして、その名の通り魔物を寄せるって効果なのか!?」

「その通りッ!」


 アディが勿体ぶって、僕の魔物寄せというスキルについて仲間の皆にも説明した。話を聞いた彼女たちの視線が、スキルを持っている僕に集中する。ジッと見られて、居心地が悪い。


 魔物寄せという名のスキルについて。その名の通り、花に吸い寄せられる蝶のように魔物が集まってくる、という効果を説明する。


 そのスキルの説明を聞いた酒場に居た女性たちが皆、話を聞いている内にドンドン目をキラキラとさせて期待している様子に変わっていった。興味津々だった。


 僕の持つスキルについて説明しているアディが自慢げだったのは何故だろう。


 ……でもよく考えてみると僕は彼女の所有物らしいので、僕の持つスキルは彼女の持ち物でもあるのか。それじゃあ、問題はないのか。


 現実逃避のように、僕はどうでもいい事に頭を悩ませる。注目を一身に浴びているが、考え事で気を紛らわせる。


「そんなスキルがあるのか?」

「そのスキルがあれば、わざわざ遠出しなくても向こうから魔物が寄ってくるのか。それは、良いな!」


「めでたいな。飲もうか」

「Zzz……」


 アディも喜んでいたし、その仲間たちも同じような反応を見せるだろうと思った。予想の通り、全員が魔物寄せというスキルを便利なモノだと認識して喜んでいるようだった。


 というか、まだ寝続けたままで起きてこない女性。半裸の女性も胸を出したまま、服を着ようとしないし。隙を見つけては、お酒を一気に飲み干そうとする酒豪の女性も居るし。


 本当にトンデモナイ面子で、今までの人生では見たこともないような人達だった。飛び抜け過ぎていて、笑いすらこみ上げてくる。


 アディ1人だけでも、僕は振り回されていっぱいいっぱいだったのに。


 これが彼女の仲間たちなのか。個性の強い人達の集まりを見て、これから僕は一体どうなるのかと、心配な気持ちになった。

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