第25話 聞き込み調査-ミリアリダ
戦闘力では、どうやら今すぐに皆の役に立つというような事は出来ないという事が分かった。それじゃあ、他に何か役立てることは無いだろうか。
スキルを使って、何か皆のために出来ることはないだろうか。しばらく考えてみたけれど、良いアイデアが思い浮かびそうにはなかった。だから僕は、アディの他にも知り合いの皆に話を聞きに行ってみようと考えた。
街の中を散策する。出会った人に話を聞いてみようと思って。
***
「おう、お前はアディのところに居る男か。何の用だ?」
「こんにちは、ミリアリダ」
家から出てきて、水浴び場の前までやって来ると出会ったのは、上半身裸のままでくつろいでいたミリアリダだった。
彼女は服を身に纏うのが嫌いらしくて、この街に居るときは恥ずかしげもなく半裸姿で生活しているのを、よく見かけた。初めて出会った酒場でも、上半身裸で居たのを目にした事を僕は覚えている。
水浴び場に居ては、裸姿となってのんびりしている姿を見かける。そして今日も、水浴び場に来てみたら案の定、彼女は居た。
裸姿で居るのに、恥ずかしげもなく普通に対応してくるミリアリダに、僕もだいぶ慣れてしまっている。
いや。慣れたと言うか、視線を彼女の顔に固定して余計な部分を見ないようにする技を習得してから、恥ずかしがる必要も無くなった、と言うべきか。
この街では男性である僕の方が異端であり、いちいち僕が視線を向けても誰からも注意なんてされないし、何とも思われることなんてない。気にする必要もないようだが、気にしてしまう。
だから僕は、なんとか反応しない方法を見つけて普通に生活していったほうが楽だと思った。
今では、反応しないように顔だけ注視する事で僕も彼女たちの裸を見ても、すぐに視線を逸らすことで何とも思わなくなった。
……男として、それはどうかと思ってしまうけれど。
話を戻して僕は早速、ミリアリダに相談してみることにした。
「実は相談したいことがあって」
「ん? なんだ? どうした?」
僕が相談したい事があると話すと、ミリアリダは真剣な表情で、話を聞いてくれるようだった。意外と、面倒見が良さそうな人。
「僕も何か皆の役に立ちたくて、何か困っていることは無い?」
「困ってること? いきなり言われてもなぁ、思い浮かばないかなぁ」
相談というよりも、ミリアリダに悩み事がないかどうか聞き出し、その悩みを僕が解決できないかどうかという、悪く言えば善意の押し売りのようなことを始める。
嫌がられるかもしれないが、何か役立てるような仕事を探し出そうと必死だった。話に付き合ってくれるミリアリダは、僕の質問に答えてくれようと一生懸命に悩んでいた。
「それじゃあ1つ、悩みを聞いてもらいたいな」
「なに? どうしたの?」
そう言ってひねり出してくれたミリアリダの悩み事。僕は喜び、彼女の話を聞く。解決できると良いなと、思いながら。
「実は、私には仲が悪い友達が居てなぁ」
「うん」
「そいつと、仲直りするにはどうしたら良いと思う?」
「その仲の悪い友達って誰?」
「それは言えない」
仲が悪いとは、一体誰のことだろうか。僕が問いかけても隠して教えてはくれないミリアリダ。
うーん。多分、僕の予想ではアディの事なんだろうと思うが。
いつも2人が顔を合わせた時には喧嘩腰に突っかかっていくミリアリダに、冷たくあしらうアディ。それだけを見ると、確かに仲が悪そうにも見えるけれども、実際は
そんなに仲が悪いという印象はない。好意が、一方通行のようには見えるが。
仲直りしたい相手とは、アディの事なのだろうか。けれども確定ではない。それにミリアリダは誰なのか隠しているので、わざわざ暴く事もするべきではないだろう。
とにかく、ミリアリダは友達と仲直りをしたいと考えている、と言うことで悩んでいるらしい。
けれども、僕は何年も監禁されて生活していた身。友達なんてものは、遠い記憶の存在だった。上手くアドバイスできるかどうか不安ではあったけれど、何とか考えた言葉を選び、ミリアリダに伝えてみる。
「仲の悪い友達とは、今でも会う?」
「うん。まぁ、時々会う」
「その友達と、話はする?」
「それも、時々かな」
「どうして仲が悪いの?」
「うーん……、向こうが悪いから?」
「向こうが悪い、ということはミリアリダは悪くないのに、仲が悪くなってしまったということ?」
「あ。いや、えっと、そのー。……私も少し悪かったかも」
何度か友達に関しての質問を繰り返して、ミリアリダの気持ちを探ってみる。
すると、きまりが悪そうな顔で自分も悪かったかもしれない、と彼女は告白する。さらに僕は、会話を続けてみた。
「仲直りをしたいと思っているのなら、他の仲の良い友達と接するようにしてみて、仲の悪い友達とも普段通りに接してみたらどうかな」
「えー、それはちょっと、こっ恥ずかしいって言うか、……その、なんだ」
僕のアドバイスを聞いて恥ずかしそうにしているミリアリダ。でも、もうひと押しすれば改善してくれそうな感じだった。
「大丈夫だよ、ミリアリダ。普段どおり悪意なく自分から声を掛けてみたら、相手もちゃんと反応してくれるよ」
「そ、そうかなぁ」
僕のアドバイスが絶対に正しいというわけでは無い。それよりもむしろ、間違っていることの方が多い気がする。けれど、必死に考えてアドバイスをしてみた。それが伝わったのか、ミリアリダはお礼を言ってくれた。
「ありがとう、ノア、だったか? 今度試してみるよ」
「うん、頑張って」
その後、僕たち2人は水浴び場の前で色々な事について話し込んだ。そうして、色々とアドバイスしてみた結果、以前と比べて少し仲が良くなった僕とミリアリダ。
ちゃんと彼女の話を聞いてアドバイスができたと思う。ちゃんとミリアリダの役に立てただろう。
けれどまだ、他の皆にも役立つような仕事を見つけることは出来なかった。
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