第36話 不可侵条約、それから
戦争に勝ったアマゾン国に、隣国から賠償金が支払われた。革命が成功したばかりで、政治的にも不安定だったその国に支払えるようなお金は無かった。アマゾン国が受け取った金額は、非常に少なかった。
その他にも、アマゾン国と隣国は不可侵条約を結び、今後十年は干渉しないという約束事を決めた。少なくとも今後十年間は、お互いに戦争を仕掛けることをしない。もしも、この約束を破ったときには他の国から非難が集中するだろう。
なので、どちらの国も容易には手出しすることはできないという状況で、終戦後は落ち着いた。
強引な理由で戦争を仕掛けてきて侵略してきたのに、償いが一見すると軽いように見える。けれど実際には、困ったのは隣国の方だろう。
今までは、豊富な物資があるアマゾン国に輸入で大部分を頼っていた。けれども、不干渉によって交易路が閉ざされ、物資不足に陥った。商人テゲルの失墜も、大きく影響している。
商人テゲルは今回の戦争を裏で支援して、アマゾン国に対する恨みを晴らしつつ、儲けようと企んでいたようだった。けれど、その策略は大失敗。結局、商売人を続けられないほどの損失を被ったと、商人たちからは伝え聞いていた。
戦争に負けて、革命したばかりで国民の生活も不安定なのに、物も手に入らない。真綿で首を絞められるように段々と、取り返しのつかないほど苦しい状況に追い込まれて、貧しい国となっていった。
今回の戦争では圧倒的に勝ったアマゾン国は、すぐに日常の生活に戻っていった。戦いの犠牲者は、ほぼ居なかったから。
死傷者はゼロで、軽く怪我を負ったアマゾネスが数人だけだったという。アディも傷一つなく、無事に帰ってきてくれた。他のみんなも、怪我一つなく無事に戦いから帰ってきた。さすがの戦闘能力だった。
そんな彼女たちは翌日から、いつものように森の中に魔物を狩りに行く。そして、日が沈む前には街に戻ってきて、大量の収穫品を持ち帰ってきてくれる、という生活に戻っていった。
そして相変わらず僕は、アマゾン国のために働いている。国のお金を管理したり、書類にアマゾン国の状況をまとめたり、商取引について交渉したりなど。それが僕のアマゾン国での日常になっていた。
夜になると、家に帰る。アディの家だ。僕は彼女と、今も一緒に生活をしている。
「ただいま」
「おう、おかえり」
アディが料理を準備して待っていた。
「ごめん、待たせたかな?」
「いいや、ちょうど出来上がった」
料理は先に家に帰った方が作る、というルールが自然と出来ていた。彼女はいつも僕の作った料理を、美味しそうに食べてくれる。今日はアディが先に家に帰っていたので、作ってくれたようだ。けして調理が得意というわけではないけれども、豪快で食べごたえのある食事を用意してくれているアディ。
初めの出会いでは、所有物だとか言われていた。それが今は、その、えっーと、ふ、夫婦、のような関係になれているような気もする。別に、結婚式を挙げたという訳ではない。ただ、僕がそう感じているだけだった。
「ノア」
「え?」
「料理が冷める前に、さっさと食べようか」
「あ、うん。わかった」
テーブルの上にはアディが作った料理が並べ終わっていた。彼女に促されてから、席について、2人で食事を始める。
「……」
「……」
いつもは他愛もない話をするのだが、今日はなんだか静かだった。アディが珍しく食べるのに集中しているからなのか、2人の間に沈黙が続いていた。
どうしたのだろう。僕はチラッとアディの表情を見てみるが、美味しそうに料理を食べている。様子の変わったところは見当たらない。
まぁ、話したくない日もあるのかな。そう思って、僕も黙って料理を食べ進める。突然だった。なんの前触れもなく、アディが話し始めた。
「そういえば、この前。何か、皆の役に立ちたいって言ってたな」
「あー、うん。そんなことも言ってたね」
アディに問いかけられて、少し前の過去について思い返した。確かに、そんな事を言ってアディや、他の皆に聞きまわって仕事を探していた。なにか、僕でも役立てることはないか、と聞いて回った。
今は、自分ができることを一生懸命やろうと思えるようになっていた。だから僕は、色々と任されるようになったアマゾン国のための仕事を成功させようと考えて、気持ちを込めて仕事に臨んでいる。
そんな事を考えていると、彼女は全く別の事を言いだした。
「ならさ、私と子作りしよう」
「は……、え?」
こづくり……。アディの言い放った単語の意味を一瞬理解できなかった。その言葉を把握するのに、しばらく時間がかかった。
「こ、子作り?」
「最近、色々とあったけど、ようやく落ち着いてきたからな。今が、いいタイミングだと思ったから。狩りでいっぱいお金を稼いでおいたから、しばらくは働かなくても大丈夫。だから、子供を作ろう。それが、あたしの役に立つ」
「な、なんで、そんな突然? というか、僕?」
「子供を作るのは、女と男が必要だろう。アマゾン国には今、お前しか男が居ない。セレストの奴も、密かにノアを狙っているて聞いたからな」
午前中、一緒に仕事をしていたセレストが? そんな狙われていただなんて、全く知らなかった事実。
「あ、ちょっと」
「飯も食っただろう。ならヤルだけだ」
座っていた椅子から強引に立ち上がらされて、体を抱えられる。そのまま寝室まで運ばれてしまった。
「ほ、本気?」
「もちろん」
攻めてくるアディと、攻められる僕。男女、立場が逆のような気もするけれども、強引に始まった。
***
その後、アディだけではなくセレストや、ドリィ、ジョゼット、ニアにミリアまで関係を持つことになった。こうして僕は、アマゾン国で幸せな人生を送るのだった。
僕とアマゾネス~外れスキル&チートスキル~ キョウキョウ @kyoukyou
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