第18話 帰国道中
巨大な魔物との戦いも、あっさりと終わっていた。
戦い終えたアディ達は、なんてことない出来事だったと平常心のよう。巨大で凶暴そうな魔物だったのに、数人で立ち向かって犠牲者もなく倒せたというのに誇ったり興奮すらない。
巨大な魔物は目の前に居るだけで強烈なプレッシャーを感じる。そんな敵を相手に戦っていたアディだったが、恐怖を感じている様子は無かった。戦った後に変わらず談笑しながら、森の中を突き進んで行くだけだった。
彼女たち全員そうだったので、巨大な魔物に恐怖していた僕だけが反応を間違っているような感じですらあった。
いやいや。巨大な魔物を無傷で倒せるなんて凄いことだろうと思ったし、彼女らの戦いを近くで見ていただけの僕も、強烈な恐怖を感じていたというのに。
僕と彼女とでは、明らかに違っていた。経験豊富だから、それほど恐怖を感じないし、慌てないのだろうか。
ジョゼットたちは、どうやらリスドラの森でやりたい事はやり尽くしたよう。
多数の魔物とも戦えたし、巨大で強力な森の主と思われる強敵の魔物とも戦って、無事に勝つことが出来た。
ということで、道に詳しいというセレストの示す最短距離で森を出らるという進行ルートを歩いて行くことになった。
「お、出口が見えたぞ」
先頭を歩いているジョゼットの言葉、彼女の指差す方向を見て、森から抜けられたことを知る。
本当にセレストの知識が正しく、その通りに最短距離を進んできたらリスドラの森を通ることが出来た。アッサリと感じるくらいの簡単さで、森の中を通り抜けるのに成功した。
しかし、ここはまだ目的地ではない。森を出た先にあった道をたどり、歩いて行くという。その道を進むと、街があるらしいとセレストが教えてくれた。
「今日は、その街で一晩休みだな」
ジョゼットのその言葉を聞いてようやく休めるのかと、僕は安堵した。彼女たちの後ろをついていくだけで精一杯だった僕は、街に早く到着できないかと期待して歩くスピードを早めた。
動けなくなったら、アディに抱えられて運ばれることになりそうだから。街に自分の足で進んで、目的地に到着できるように頑張る。
リスドラの森を抜けて、最初に到着した街。ここでも、森を抜ける前にあったあの反乱を起こしていた街と比べて同じような暗い雰囲気になっていた。
つまり、市民に元気がなくどんよりとした空気、将来にも希望がないというような落ち込んだ感じのある街だった。
「早く宿を決めて休みましょう」
テンションが終始低いままであるセレストが要求するのは、早く休める場所を探し出すこと。
「酒場にいこう、酒を飲みたい」
コチラは終始酒を飲みたい様子を見せているニアミッラ。彼女は、すぐに酒場へと直行して酒を飲みたいという。
「先に宿を探してから、酒場に行く。これは決定だ」
セレストとニアミッラの意見対立に、判決を下したのはジョゼット。早速みんなで宿を探しに街の中心部へと向かう。すると、すぐに発見できて宿も簡単に部屋を取ることが出来た。しかし……。
「あの、僕の部屋も一緒で大丈夫なんですか?」
「ん? 問題ないだろう?」
僕の問いかけにジョゼットは、何か問題有ったのか、という表情を浮かべている。
やはり男としては見られていないらしい。僕も彼女たちと同じ大部屋で一晩泊まることになんた。
まぁ、僕が男だからといって一部屋を特別に取ってもらうのも出費になってしまうから、彼女たちが気にしていないのならば良いのだが。そして、その日の夜は何事もなく僕は就寝した。
こうして街に寄って補給と休憩を取りながら、次の街を目指し街道を進んでいく。時折、魔物と遭遇するけれどアディたちが戦って勝つ。何の脅威もない。それの繰り返しで、ドンドン目的地へ近づいていった。
何日か歩き続けてきて、ようやく国境に一番近い街へと到着する。その街の雰囲気も悪い。今まで寄ってきた街の中でも、より一層どんよりとした落ち込んだ雰囲気。居るだけで気が滅入るような立ち入りたくない、と感じる街だった。
「ここは相変わらずだね」
「すぐ、出国手続きをしして国を出ましょう」
ジョゼットは、街の様子を見回して感想を述べる。相変わらず、という事はコレがこの街の標準らしい。
セレストがすぐに王国を出て、先に進みたいと希望を言う。
「そうだな。急ぐか」
アディ達もすぐに街から出て王国からも出る、という事に賛成のようで、みんなの意見が一致したということで立ち寄った街から補給だけして出ることに。
早速だけれど、出国の手続きができるという門へ向かう。この門を通り抜ければ、王国から出られる。門の前で警備している兵士に声を掛けて、ジョゼットが手続きを進める。
「この国では最近ずっと、どこもかしこも争い合って物騒だからな。国から出るのは正解かもな」
街の雰囲気に大きく影響されたような兵士が、出国の手続きをしているアディ達を羨ましそうに眺めていた。
「貴方達も、この国を出たらいいじゃない」
「そうしたいのは山々だが、俺たち兵士は無理だぜ」
「これでも一応、王国に仕えている兵士だからな」
ジョゼットが手続きを進める最中、兵士たちに望む通りにすればいいとアドバイスするが、兵士たちは即座に無理だと判断して諦めていた。表情を暗くしながら語る、王国の兵士たち。
そんな悲壮感漂う兵士たちと会話を交わしながら、出国の手続きを終える。
そしてようやく、出国の手続き等も終わって門を通された。ついに国境を超えて、王国から出るに至った。
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