第27話 聞き込み調査-ジョゼット、セレスト

 ドリィに勧められて僕は、初めてお酒を飲んでみた。しかし、翌日になってやめておけばよかったと思う選択だった。


 目が覚めた瞬間、すぐに体の具合いが悪いことに気が付いた。頭はガンガンして、視界もおかしくなって、何もやる気が起きないぐらい酷いものだった。


 初めて飲んだお酒で、体調が回復するまで苦しい時間を味わうことになった。もう二度とお酒は飲まないでおこうと誓うぐらい、こりごりになった。


 よくニアミッラは、あれほどお酒が好きで、飲み続けられるものだと思った。


 昨晩、お酒を飲んで面倒なことは全て忘れたらいいと、ドリィとニアミッラの2人からアドバイスもされたが、僕には合わなかったようだ。


 そして結局、まだ僕の悩みは解消しないまま。


 僕の悩んでいることは、考えるだけ無駄な事なのかもしれない。考えすぎ、という皆のアドバイスを信じるべきなのかもと思う。


 けれど、何かしら解決策を見つけたいと思ってしまう頑固な僕。ただし、次の人に相談してみて悩むのは最後にしようと心に決めて、ジョゼットのもとに行ってみる事にした。



***



「こんにちわ、ジョゼット」

「やぁ、どうした?」


 ジョゼットが居た場所はアマゾン国の中枢区域にある建物、国の運営を取り組んでいる機関で彼女は働いていた。そんな場所に居る彼女は、なんと国政を司る重要官職であった。


 見た目は僕と同じぐらい小さな身長で子供のようだし、アディ達や他の皆と比べてみると、さらに体が小さく見える。見た目だけだと、アディ達より頼りなく思える。けれど、そんな事は全然ない。


 むしろアディ達と比べた場合にも、一番の実力者だと言えるぐらいな戦闘力の高さがあった。実は、かなり頼りになるジョゼットに相談してみることにした。


「相談したい事があるんだけれど。今からちょっとお話、出来ますか?」

「うーん、ちょっと待て。うん、大丈夫だ。アディの奴が、どうかしたのか?」


 いきなり訪ねてきた僕は、さっそくジョゼットに相談事があると言ってみた。何か確認した後に、彼女は快く話を聞いてくれる。


 アディ関連であるだろうと彼女は断定するように、何かあったのかと聞いてくれたけれど、僕は違うんですと否定する。


「アディは全然関係ないです。僕自身に関すること」

「どういうこと?」


 疑問の表情を浮かべるジョゼットに、説明する。自分が今のままで本当に役立てているのか、何か出来る仕事はないだろうか。もっと皆の役に立ちたい、等という話をジョゼットにしてみた。すると、彼女は真剣に悩んでくれて答えまで教えてくれた。


「なるほどな。生活をしている時に役立っているっていう実感が無いのか。それで、何か手伝いをしたいと。……それじゃあ、ひとつ君に仕事を任せてみようかな」

「本当に? よろしくお願います!」


 そんな話をしてすぐ、いきなり何かの仕事を任されるという事態になったけれど、僕はようやく皆の役に立つことが出来るのではないか、という期待で嬉しくなった。



***



 ジョゼットに案内され、やって来たのは建物の奥にある部屋。今までに来たことのなかった場所であり、立ち入りが制限されていそうな、重要人物しか来れそうにない場所で少し緊張していた。


 ジョゼットの後ろについて廊下を歩く。とある部屋の中に入ってみれば、机の上に紙の束が山のように積み上げられているのが、まず目に入った。そして次に、部屋の中央にある立派な椅子に誰かが座っているのが見える。


 紙束の向こう側。突っ伏していて、顔が見えずに誰かが分からない。ジョゼットが彼女の名を呼びかけて、ようやく誰なのか正体が分かった。


「セレスト、助っ人を連れてきたぞ」

「う……。うーん? すけっと?」


 机に突っ伏していたのはセレストだった。いつものように、テンション低く寝起きのようにな感じのぼんやりとした声を出しながら、伏せていた顔を上げる。


 彼女の視線が、僕に向けられた。


「アディのところに居た男の子よね。彼が?」

「そう、手伝ってくれるって」


 セレストの寝ぼけたような視線がジョゼットに移って、再び僕の方に戻ってくる。どうやら、僕に任されるという仕事はセレストに関係する事らしい。


 ジョゼットも僕の方に顔を向けてきて、彼女の手が僕の肩に置かれた。任せたぞ、という感じに力強く。


「今から、セレストの書類処理を手伝ってあげてくれないか。他に手が空いていて、やる気があって、ちゃんと言うことを聞く人材が君の他に居ないのよね。ここに住む人達は本当に、戦うだけしか脳がないから。セレストに任せっぱなしで、いつか大変なことになるかもしれなかった。けれど、君が来てくれて助かったよ」

「なるほど。頑張ります!」


 ジョゼットが切実だという感じて事情を語る、アマゾン国の実態。アディを見ていると、確かに知的な作業に向いていなさそうな事が分かる。


 そして、ここなら僕も彼女たちの役に立てるかもしれない、と感じる場所だということも理解できた。


 後は任せたと言って、部屋から出ていくジョゼットを見送る。部屋の中には、僕とセレストの2人だけが残された。


 とりあえず僕は最初が肝心であるからしっかりしようと、机に座っているセレストに体を向けて挨拶をする。


「よろしくおねがいします」

「うん、よろしく。じゃあまずは、これからお願いできる?」


 どうやら僕の手伝いを彼女は歓迎してくれるようで、いきなり仕事を任されることになった。彼女に面倒を見てもらいながら、さっそく動き始める。


 こうして、その日から僕はセレストの部下という立場となって、アマゾン国の運営に関わるような重要な仕事に携わる事になった。

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