第二十六話 幼馴染とゴールデンウィーク②

 ゴールデンウィーク初日。今年のゴールデンウィークは、僕に好意を寄せている女の子二人に振り回されることになるだろう。……いや、もうすでに振り回され始めてる。


「翔琉先輩、緊張してます?」

「真唯ちゃんが緊張させてるんだよ……」

「もう、緊張しないでよー」

「華奈もさせてるんだよ?」


 午前中からうちに来た真唯ちゃんと、朝からやたら気合いを入れて準備をしてた華奈から、警察に連行されているように、両腕をホールドされながらショッピングモールに連れて来られた。すれ違う人たちは振り返ってこちらを見てくる。恥ずかしい。

 ちなみに、真唯ちゃんが僕のことを先輩呼びにしているのは、生徒会に入った関係だ。僕だけずっと名前呼びされるのは、ね。


「で、今日は何か買いたいものがあるの?」

「翔琉と出掛けたかっただけだよ?」

「理由がなくても一緒にいたいのが翔琉先輩ですよ?」

「あ、えー……うん……」


 返答に困るんだけど。


「あー、その顔は信じてないな? 本心なのにー」


 信じてるけども……。そういうことじゃなくて、両腕を解放して欲しいんだよ……。目当ての店にレディース専門店があったら離脱できるかな、とか考えてただけだよ。


「今日は離しませんから」

「それに、ここだと見つからないはずだよ!」


 僕たちは電車で何駅か移動した先のショッピングモールにいる。つまり、学校の最寄り駅からは離れている。この辺りに住んでいる人じゃない限り、僕たちを見ることはない。華奈はそう言いたいんだろう。でも、そうじゃない。どっちにしろ恥ずかしいんだ。両脇に女の子を連れているのが。こういうことしてる人もいるけど、僕の場合は付き合ってない女の子といるわけだ。問題がありすぎる。


「翔琉先輩の悪い癖が出てますね……」

「考えすぎだよ……」


 二人が考えてなさすぎなんだよ。危機感持って欲しい。


「あ、行きたいところ思い出した」

「どこ?」

「ここ」

「え……」


 どう見ても女性用下着のお店だった。


「拒否権はありませんから」

「ちょっと」

「じゃ、入ろうか」

「あ、あああ……」


 助けを求められる人もおらず、連れて行かれた。



 ◆



 なんとか生還した。今日は僕が調理当番だったから、何か仕掛けようかと思ったけど、女の恨みは怖いのでやめた。


「真唯ちゃんはどこで寝るの? さすがに華奈の部屋だよね?」

「今日はそうします」

「え、ええ……」


 ゴールデンウィークはまだ始まったばかりだ。

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