第一章 心の修復

女幼馴染、襲来

第十一話 女幼馴染とルームシェア①

 土曜日。引っ越し業者が来たのは昼過ぎだった。トラックに荷物を詰めこみ、母の車でトラックの後ろを追う。僕はまだマンションの場所も、誰とルームシェアするのかも聞いていない。不安だらけだ。


「なんで教えてくれないの?」

「サプライズよ、サプライズ。全部あっちでわかるから」

「はあ……」


 皆目見当もつかない。これで赤崎や壊与がいたら発狂する自信がある。まあ、母はそんなことはしないだろう。だとするとロイヤルぐらいか? でも連絡くれって言ってたし、違うか。



 ◆



「着いたわよ~」

「……は?」


 腰が抜けるかと思った。僕が住む予定の場所は、学校の近くで一番高いマンションだった。いろんな意味で。


「え? は? え?」

「うふふ、その顔が見たかったのよ~」


 母は楽しそうにしている。もう文句を言う余裕もないので、そのまま笑わせておいた。


「じゃ、荷物運ぶの手伝いな」

「は、はい」


 緊張する。こんな場所に来ると思わなかった。


「え、お金はどこから……?」

「あっちが全部出してくれたわよ」

「はっ?」


 金持ちの知り合いなんていたか? あ、学校ではぼっちだった。ほとんど知り合いいないや。いや、ほんとに誰?



 ◆



 入り口には各部屋につながるインターホンがある。母が話しているのを聞いていると、どうやら女性のようだ。そんな知り合いいたっけ?


 部屋に荷物を運ぶためにエレベーターに乗る。四十三階!? そんなに高い部屋!? 一層不安を感じながら、部屋に向かう。


 母が部屋のインターホンを押す。少し待つと、ガチャッと音がして女性が出てきた。


「お疲れ様です!」

「お疲れ様~。翔琉と会うのは久しぶりでしょ? 大きくなったでしょ、この子」

「あ、翔琉くん。久しぶり! 覚えてる?」


 ん? どこかで見たことがあるような……。


「たぶん忘れてるわよ?」

「あら、残念。昔はうちによく遊びに来てたのに」


 え? 昔? ……もしかして……。


「立ち話もなんだし中入って」

「あ、お邪魔します」

「いや、今からあんたの部屋でしょうが」

「え、あ、うん」


 中に入ると、二人で暮らすような部屋ではなかった。すごく広い。


「こ、こんな部屋……」

「大丈夫、お金なら心配しないで」

「そういうことじゃないんですが……」


 ガチャッ。

 玄関のほうから音がした。


「あ、帰ってきたの? おかえりー」

「ただいま。翔琉、久しぶり!」


 部屋に入ってきたのは女の子だった。その顔を見て、夢のことを思い出した。


「あ、小学生のとき、壊与と三人で遊んでた……」

「そう! 福住華奈クズミハナ! これからよろしくね!」


 ルームシェアの相手は、幼馴染だった。

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