第十六話 高二の始業式と転校生

 春休みも終わり、新学年が始まる日、つまり始業式の日を迎えた。僕は憂鬱でしかない。また赤崎、壊与と顔を合わせることになると思うと、どうしようもなく不安になってしまう。


「……クラスが別ならいいな」


 一年生から二年生に進級するときに、クラス替えがある。文系と理系に分かれるためだ。僕は理系なので、壊与が文系なら大丈夫だ。赤崎は別れる前に文系に行くと言っていたので、壊与と同じクラスにならなければ会うことは少なくなるだろう。


 制服に着替え、華奈の作った朝食を食べた。華奈の料理はおいしい。少し元気が出た。


「……うん」


 考えても仕方ないから行こう。


「翔琉待って!」

「え? うん」


 華奈も一緒に行きたいようだ。学校が違うから途中で別れるだろう。……彼女と別れてから三ヶ月間ずっと傷心状態だったくせに、あっさり立ち直って美人の彼女をつくった、なんて噂になったら大変だし、できれば一緒に行動はしたくないところだけど。


「ん? どしたの?」

「……なんでもない」


 こんなかわいい顔で見つめられたら折れるしかない。

 華奈は小学生のときもかわいかった。春休みの間に小学生のときのアルバムを見たけど、僕なんかが一緒にいたら嫉妬で殺されるぐらいだった。あの頃によくいじめが起きなかったな。

 小学生の時点でかわいいということは、今の華奈は言いようがないくらいだ。ファンに後ろから刺されそうだ。


「……行こうか」

「うん!」


 彼女でもない女の子と登校するなんて、考えたこともなかった。今年は何か違う。いろいろと。



 ◆



 学校に着いたのは朝礼が始まるよりも三十分も早かった。でも、クラス替えのせいか、昇降口付近は人が多かった。初めて会う人とコミュニケーションを取り、クラスで上位カーストに入ろうとする意志が見える。……僕はそんなことしなくても有名だけど。赤崎のせいで。


「じゃあ、僕は行くから」

「え? 私も行くよ?」

「え?」

「え?」


 どういうこと?


「華奈って学校違うよね?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

「何を?」

「今日からこの高校に転校したんだよ」

「そうなんだ。……え?」


 え?


「えええええ!?」

「ちょっと! 声が大きいよ!」

「ご、ごめん」

「こっちこそごめんね! 言うの忘れてた!」


 どうしよう。不安の種が増えてしまった。


「私、翔琉の心の傷を治すって言ったじゃん! 同じ高校に通えばいいと思ったの!」

「……」


 これは大変なことになりそうだ。

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