第十八話 始業式と転校生
赤崎に関わることなく、校舎の中に入った。華奈は転校生なので、一度職員室に向かい、ホームルームの時間に教室に来るそうなので、途中でわかれた。ただ、同じクラスになる保証はないらしい。……同じクラス、だといいなあ。
「じゃあ、ここデ」
「うん、またね」
ロイと教室前でわかれ、自分の教室に入る。昇降口付近で話し込んでいたので、だいぶ人が来ていた。……知り合いはいない。一年のときに同じクラスだった人はいるけど、話したことが一度もない人しかいなかった。
……なんだか、視線がきついなあ。そう思いながら、出席番号順に決められた席に座る。座っても話しかけにくる人はいない。
「なあ、あいつ……」
「ああ、あいつだ……」
僕のほうを小さく指さしながらひそひそ話をしているようだ。僕は一番前の席なので、後ろを見ず、聞き耳を立てる。
「さっきめちゃくちゃかわいい子と一緒にいた」
「そのかわいい子って誰だ? 赤崎とは別れたって話だろ? 赤崎じゃないとして誰だ?」
「わからん。ただ、かわいかった……」
「くそー、俺も見たかった……」
ああ、さっき華奈といたからか。華奈は転校生だから、誰も知らない。もしかしたら華奈と中学が同じ人がいるかもしれないけど。
「おーし、全員いるかー。始業式だから移動するぞー」
後ろに聞き耳を立てている間に、これから担任になる先生が入ってきた。いつの間にか始業式が始まる時間だったようだ。席を立ち、体育館に向かう。始まるまでも、終わってからも、話しかけられることはなかった。
◆
「おーし、じゃ、転校生がいるから紹介するぞー」
『転校生!?』
「どんな人だろ?」
「かわいい子だといいな~」
「イケメンかも!」
やっぱり華奈は同じクラスだったか。そんな気はしていた。それにしたって、みんなは転校生に理想を持ちすぎじゃないだろうか。華奈はかわいいからあながち間違いではないけど。
「じゃ入れー」
「はーい」
『おおっ!?』
先生に呼ばれ、華奈が入ってきた。その瞬間、教室の中が一気にうるさくなる。
「かわいいー!」
「女子でもあれは惚れるよ」
「女神だ……」
すごい喧騒だ。華奈も心なしか引いてる。
「はい、自己紹介よろしく」
「はい。
うるさい中でもちゃんと自己紹介する華奈。僕だったら無理だ。
「さっきこいつと一緒にいたよな? どういう関係?」
さっき後ろでひそひそ話していた人の一人が僕を指しながら言う。すかさず華奈にアイコンタクト。さすがに同じ部屋に住んでるとは言えないから。すると、華奈はちらっとこっちを見て、教室を見渡して笑顔で言った。
「青木くん、ううん、翔琉を追いかけて来ちゃいました!」
『ええー!!!?』
……それはそれでダメな返答だよ。
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