第九話 現在の壊与と過去の壊与①
今年は、散々なスタートだった。今年に入ってすぐ、赤崎に別れることを告げられ、三周年の記念日になるはずだったバレンタインデーには、幼馴染が元カノを抱いていて、ホワイトデーで完全に諦めた。もう、普通に話すことすら難しい。そもそも、友達がロイヤルぐらいしかいない僕は、クラスでは完全にぼっちになってしまった。
ぼっちがつらいという訳ではない。授業でペアを作るときに困るぐらいだ。今までは赤崎がいたが、元カノとペアなど組めない。僕のクラスの人数が奇数なのもあり、僕が余る。ただそれだけのこと。僕は気配を消して、授業が終わるまで待つだけ。今までに余っていた人は、友達がいたようで、他の人と組んでいる。なぜ今まで余ってたんだ。
◆
卒業式が終わり、三年生は卒業した。僕は四月から二年生になる。赤崎と壊与とは、同じクラスになりたくない。もう、今までと同じ関係ではいられない。
「おっすー」
壊与が赤崎を迎えに来たようだ。同じバスケ部だし、いろいろあるのだろう。
「翔琉、帰ろうゼ」
「あ、ロイ。今日は生徒会があるから」
「そうカ。この前みたいにならないようにナ」
「あ、この前はごめん」
「いいっテ。気を付けろヨ」
「うん、じゃあね」
ロイヤルは優しいなあ。
◆
生徒会の仕事も終わり、帰ろうとした。だが、校門前に立っている人物を見て、固まった。
壊与だ。
咄嗟に隠れる。こっちに気付いていないようだ。会いたくない奴と会ってしまった。
そもそも、僕がなぜ生徒会に入ったかというと、中学からバスケ部だった赤崎と一緒に帰るためだ。大会が近いとき以外の部活が終わる時間と生徒会が終わる時間が同じだったから。今となってはそれが仇となった。
「お待たせ! 帰ろ!」
赤崎が走って来た。やはり赤崎待ちだったか。
「おせえ。早く行くぞ」
「待ってよ~!」
二人で帰ったようだ。そっと物陰から出る。もういなくなっていた。
「それにしても……」
壊与ってあんな話し方だったっけ? 小学生のときとは全然違う話し方だった気がする。そういえば、部室にいたときも、あんな話し方だった。中学の壊与を知らないから、なんとも言えないけど。
◇
「あー、待って~!」
「早く行こー!」
ん? 夢……か? 小学生のときの僕だ。もう一人は……壊与?
「──ちゃん、行こ!」
「うん!」
女の子? 思い出せない。三人で公園にいるようだ。
「ぐえっ!」
「壊与! 大丈夫?」
壊与が転んだ。
「うえー、痛いよー!」
「大丈夫?」
僕が壊与を助けてる。昔ってこんな感じだったか?
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