第十二話 女幼馴染とルームシェア②了
華奈。名前を聞いて思い出した。小学四年から五年になるときに、転校していった。確か、父親に不幸があったとかで……。
「……聞きづらいんだけどさ」
「ん~? 何でも聞いていいよ?」
「……ほんとに?」
「うん!」
言おうか悩む。いや、こういうときは思いきって聞いてみよう。
「その、名字ってさ、母方の?」
「なんだ、そんなことか。違うよ?」
「え?」
「お母さん、再婚したから。私が中二のときだったよね?」
「そうね」
華奈の表情に陰りはない。……本当の父親が亡くなり、義理の父親がいる、という環境を受け入れられているのか。僕なんかより、ずっとつらいはずなのに……
「何、私の心配? 翔琉のほうがつらいでしょ?」
「……え?」
「私がなんでわざわざルームシェアしようと思ったかわかる?」
「え、えっと」
「翔琉のため! 本当は一人になりたいと思うけど、私が心の傷、治してあげる!」
……なんかひっかかる。なんだろう。
「僕の話って、他校まで伝わってるの?」
「んー、赤崎ちゃんはかわいかったから、他校まで噂が広がってたよ。その彼氏が代わったってことで、こっちまで来てたよ」
「あ、そうなんだ……」
悪い意味で知名度が上がっちゃってるな……。
◆
「じゃ、仲良く暮らすのよ~」
「わかった。じゃあ」
「避妊はしなさいね!」
「え、うん……え?」
「翔琉! 聞かなくていいから!」
僕の母と華奈の母は帰っていった。久しぶりに会ったから居酒屋に行くとか。
「華奈」
「んー?」
「ルームシェアを言い出したのは華奈だよね?」
「うん」
「本当に僕のため?」
「あはは、そんなに念入りに聞く? ……今はまだ、女の子を信じられないだけだよ。私で慣れてまた昔みたいにさ、男と女関係なく遊ぼうよ」
「ああ、うん……」
歯切れの悪い返事をした理由。それは、昔みたいに遊ぶこと。恐らく、赤崎の噂に壊与の話も含まれてるはずだから、華奈も知ってるはずなんだけど。
「大丈夫、友達なんて上辺だけの人だっているじゃん! 心からの親友をつくればいいんだよ!」
「……どうやって」
美少女である赤崎と付き合ってただけで男子には少し避けられてたのに。
「私、翔琉の学校に中学の友達が何人かいるから! 四月に紹介するね」
「ああ、うん」
華奈は笑顔で言う。そこまでして、僕に何を求めてるんだろう。怖い……。
「……これは時間がかかりそうだね」
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