第二十九話 幼馴染と勉強会

 ゴールデンウィークももうすぐ終わる。だけど、僕は焦りを感じていた。


「ゴールデンウィークが明けたら中間試験だね」

「……うん」

「そうですね」

「んー? 翔琉、どうしたの?」


 ここ最近、赤崎のことや、華奈のこと、真唯ちゃんのことがあり、あまり勉強をしていない。赤崎と別れた直後は特に。だから、成績はだいぶ落ちている。


「翔琉、成績悪かったりする?」

「うっ」

「小学生のときも平均点に届いてなかったですよね」

「うっ」

「でも、わたしたちの高校ってそこそこ偏差値高いですよね?」

「受験のときだけ頑張ったの?」

「うう……」


 幼馴染が辛辣な言葉ばっかり言ってくる……。事実だからあんまり言い返せないし……。


「一緒に勉強する? 前の学校では成績良かったよー」

「お願いします……」

「わたしもいいですか? 高校で初めての定期試験なので不安で……」

「じゃあ、二人とも見てあげる~」


 華奈に勉強を教えてもらえることになった。良かった。



 ◆



「華奈、ここ解けなくて」

「そこはこの公式とこの公式を組み合わせると……」

「ああ、わかった」

「すいません、わたしはここが」

「マイちゃんのは……文章中に作者が伝えたいことが隠れてるんだけど、この文とこの文から……」

「あ、つながりました」


 華奈が教えてくれるから、『わからないところはすぐに聞く』、を実践してみた。赤崎といた頃は、一人で勉強してたし。なんか、迷惑かけたくないって思いが強かったから。


「ふー、だいぶ勉強したね。休憩する?」

「え、もうこんなに時間経ってたの?」


 三時間近くは勉強してた。わからないところがわかった時の快感を久しぶりに感じたからかな。


「お茶淹れるね~」

「ありがとう」


 華奈がキッチンに向かった。


「翔琉さん」

「ん、何?」


 真唯ちゃんが暗い表情をしている。


「……まだ、ダメですか」

「……」

「わたしは、隣にいるだけで心臓の鼓動が早くなってしまうのに」

「真唯ちゃん……」

「華奈さんも同じだと思います。好きな人と同じ部屋にいるのに、感情を抑えているしかない。つらいんですよ?」

「……わかってるよ。僕が元カノを忘れられない、情けない人間だってことは」

「翔琉さんは情けなくないです。立派です。情けないのはわたしの兄と、赤崎さんだけです」

「……そうじゃなくて」

「……考えがうまくまとまりません。恋って、こんなにつらいんですね」

「……」

「……勉強会が終わったら、帰ります」


 華奈が戻って来たあとは、真唯ちゃんと顔を合わせづらくて、ずっと下を向いていた。いつの間にか、真唯ちゃんは帰っていた。


「翔琉、マイちゃんと何かあった?」

「……」

「まあ、しょうがないかー。これも試練だねー」


 試練、か。僕が今立たされている状況は、そんな言葉がぴったりかもしれない。



 =====


お久しぶりです。卒業研究と卒業論文と内定先の会社の行事で忙しかったのと、体調がずっと悪かったので書けてませんでした。また頑張ります。

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