第三十話 中間試験と約束

 ゴールデンウィークが終わった。真唯ちゃんは、ゴールデンウィークが終わる前に帰っている。それに加えて、華奈とは何度か勉強会をしたけど、真唯ちゃんが来ることはなかった。話をしたいけど、真唯ちゃんの気持ちを知っているだけに、どうしようもない。


「マイちゃん、結局試験までにうちに来なかったね」

「うん」


 今日は中間試験初日。試験は、数日に渡って行われる。つまり、一日に三、四教科の試験を受けることになる。


「二人で勉強したから、翔琉は大丈夫だと思うよ。マイちゃんは心配だけど」

「うん」

「翔琉~?」

「うん」

「おーい」

「うん」

「……えいっ」

「ひゃわっ!?」


 脇腹に攻撃を受けた。所謂デュクシだ。


「ちょ、びっくりさせないでよ!」

「あはは、ごめんごめん。なんか元気ないからさー」

「うん……」

「悩みすぎ。大丈夫。私だってマイちゃんと同じ気持ちだけどさ」

「……うん」

「意外と元気だよ。逆に、好きな人といられて元気になっているぐらい! だから、今回のマイちゃんは、ちょっと暴走しちゃっただけだと思うよ? 心配しなくても大丈夫。また話せるようになるよ」

「……そうだね。とりあえず、試験頑張るよ」

「その意気だよ!」



 ◆



 試験の順位発表の日。結局、今日まで真唯ちゃんとは話すことはなかった。ただ、成績上位者は掲示板に名前を晒されるため、恐らく上位者である真唯ちゃんは、掲示板の場所に来るはずだ。


「……あ、翔琉さ――先輩。お久し振りです」

「久し振り。試験どうだった?」


 やっぱり、掲示板に向かう廊下にいた。なるべく、自然に話そう。


「あ、えーと、はい、自信はあります」

「そっか、良かった」


 僕のせいで勉強できなかったかな、って心配してたから。


「じゃあ、見に行こう。僕も今回はけっこう自信があるんだ」

「そ、そうですか」


 真唯ちゃんと一緒に掲示板に向かう。ちなみに、華奈は、

『真唯ちゃんと仲直りするんだよ?』

と言って、教室に待機している。後で僕が順位を伝えよう。


「人多いね。見える?」

「んー、見えないです」

「わかった、ちょっと行って来る」

「えっ」


 人混みをかき分け、掲示板を見てから、真唯ちゃんの元に戻って来た。途中、脛を蹴られたので痛い。やっぱり割り込みはダメだね。


「すごいね、真唯ちゃん。学年六位だって」

「あ、ありがとうございます。……翔琉先輩は?」

「僕は十位。こんなに高い順位は初めてだよ」

「わ、すごいですね」


 ……よし、腹を決めろ僕。


「二人ともトップテン入りしたから、今週末出掛けない? 二人で」

「えっ!? 華奈さんは?」

「いや、僕も前に進みたいし。真唯ちゃんのこと、もっと知りたいから」

「……わ、わかりました。よ、よろしくお願いします」

「うん、こちらこそ」


 僕を好きでいてくれる人は、大切にしないと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る