第十五話 華奈の義父と世界的企業

 華奈とロイヤルがリビングで話をしているので、自分の部屋にいる。特にすることもない。一年から二年の間の春休みだから、受験に関する宿題もなく、何冊かドリルを解いて終わりだったので、毎日少しずつ計画的にやっていたら、終わっていた。僕は趣味という趣味もない。インターネットでニュースを見るくらいだ。


「……ん?」


『KUZUMIカンパニー、ファッション業界に進出!』


 なんとなく目についたニュースの見出し。何か聞き覚えがあるような……。


「……あっ!」


 そうだ。華奈の新しい名字だ。確か、福住クズミだった。


「いや、まさか」


 単なる偶然だろう、と思った。けど、これだけすごいマンションを借りてるんだ。華奈の義父はもしかしたら何か関係があるんじゃないか。あとで聞いてみようかな。



 ◆



「翔琉ーもう来ていいよー」

「わかったー」


 華奈に呼ばれたので、リビングに向かう。ロイと華奈は、コーヒーを飲んでいた。


「翔琉もコーヒーいる?」

「あ、うん。お願い」

「はーい」


 何気なく、いつも通りの会話をすると。


「翔琉、だいぶ楽になったみたいだナ」

「……そうだね。華奈のおかげ」


 これは本当だ。なぜかはよくわからないけど、華奈と暮らしているだけで、心が軽くなるというか。小学生のとき、華奈を好きだったのもあるからかな。


「壊与がちょっかい出しに来ないといいけド」

「……」


 壊与に華奈と住んでいることを知られたら、また奪われてしまうんじゃないか、と思う。それだけは心配だ。そうなってしまったら、僕はもう立ち直れない気がする。


「そこは大丈夫だと思うよ」

「華奈」


 いつの間にかコーヒーを持ってきていた華奈が言う。


「山中くんは本当に赤崎ちゃんが好きだったみたいだから」

「そうなの?」

「うん。翔琉の高校のバスケ部に、中学の友達がいて、その子から聞いてたから」

「なるほど……」


 それなら大丈夫かな。でも、用心はしておいたほうがいいかも。


「あ、そうだ。華奈、義父さんってさ」

「あ、言ってなかったね。社長だよ。KUZUMIカンパニーの」


 やっぱりか。それなら、こういうマンションに住めるのも納得できる。


「ちなみにこのマンションはうちの会社のだよ」

「えっ、そうなの?」

「元は建築会社だからね」


 KUZUMIカンパニーは建築会社から成り上がり、様々な業界で名を上げている。世界に進出して、各国で成果をあげてるらしい。ファッション業界に進出したということは、衣・食・住、すべてに進出したことになる。


「ロールくんの父さんは偉い位置にいるんだよ」

「それで知り合いだったんだ」

「そういうこト。じゃ、そろそろ帰るナ」

「うん。またね」


 いい友達を持ったな。新学年は頑張れそうだ。

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