第二十八話 幼馴染とゴールデンウィーク④了

 ホテルの部屋はもちろん男女で分かれた。実は、僕が一緒に寝たことがある女の子は、赤崎だけだ。だから、たぶん緊張して寝れないと思う。……まだ赤崎が好きなのかな、僕。


 翌朝、ロビーで集合して、チェックアウトした。大きな荷物は先に家に送ってもらった。


「さて、今日は海の方に行くぞー!」

「おー」

「楽しみです」


 おそらくアトラクションのテイストが違うんだろう。……今日も絶叫系に乗せられるのかな?


「まずはここー」

「ジェットコースターじゃなくてよかった……」


 最初に来た所は高い建物だった。いきなりジェットコースターだったら心臓が保たない自信がある。


「方向性が違うけどジェットコースターみたいなものだよ」

「ええ……」

「あと乗りたいジェットコースターは三つほどあります!」

「宣言されて申し訳ないけど行きたくないよ……」

「まあ無理にでも連れて行くので」

「心の準備させて……」


 建物が高いのは中にエレベーターがあって、それが上下に激しく動くアトラクションだからだった。確かに方向性が違うけどどっちもダメだよ……。


「さーて、次行こー!」

「二人とも元気過ぎ……」

「翔琉先輩が弱すぎるだけですよ」

「人には向き不向きがあるんだよ?」

「理屈はいいから行くよー」

「はーい……」



 ◆



「ふう……」


 やっとの思いで家に帰ってきた。結局、華奈と真唯ちゃんにいろんな乗り物に乗せられて体がついていかなかった。今ベッドに寝そべったらすぐに寝られると思う。


「ホテルからの荷物っていつ届くんだっけ……って寝てる」


 二人はリビングのソファーで寄り添って寝ていた。帰る最中、興奮が抜けきらずにずっとおしゃべりしてたから疲れが一気に来たんだろう。


「……こんなかわいい二人が僕に好意を寄せてくれているんだな」


 毛布を二人にかけながら思う。もし、赤崎の件がなかったら、二人に再会しなかったのかな、とか、二人のどちらかと付き合ってたのかな、とか。……いや、今は二人のおかげでだいぶ心が癒されてるはず。二人のどちらかを選ぶか、違う人を選ぶか、とか。いろいろ考えておかないと。二人が待ってくれているとはいえ、僕が一歩踏み出さないと。


「……おやすみ」


 リビングを暖かくして、自分もカーペットに寝そべる。二人が風邪をひくときは僕も一緒だ。



 ■



「……あれ?」


 華奈が目を覚ます。同時に、真唯も目を開けた。


「……こんなところで寝てしまったんですね」

「あれ、翔琉も寝てる」

「翔琉さんは優しいです」

「本当にね。この人を好きになってよかった」

「同感です」


 二人は翔琉の横に寝そべると、また寝始めた。翔琉の腕を抱き締めながら。

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