第七話 ホワイトデーと元カノ①

 もう赤崎とは元の関係には戻れないと思った、バレンタインデーから一ヶ月。三月十四日、ホワイトデー。今年は誰からももらっていないので、返す相手がいない。


「ま、また明日……」

「う、うん」


 赤崎は隣の席からぎこちなく接して来る。一ヶ月も経つと、だいぶ赤崎と話すのも苦ではなくなった。赤崎と住んでいたアパートから実家に帰り、今は実家から電車で学校に通っている。そのおかげかな。


「……ん?」


 僕のクラスの前に、イケメンがいる。隣のクラスの壊与だ。どうやら赤崎を迎えに来たようだ。


 僕が赤崎と別れたことは、バレンタインデーの後日、隣のクラスの友達に頼み、学校中に流してもらった。壊与と付き合ってるらしい、ということも。そのおかげか、壊与は普通に僕のクラスに来るようになった。


 僕の近くに壊与の横をすり抜けてハーフの男がやってきた。


「おうおウ、赤崎にフラれた翔琉クン? 元気かイ?」

「うん、まあ前よりは元気になったよ」

「そうかイ、そいつはよかっタ」


 この片言のハーフが、僕の友達の奥泉オクイズミロイヤル。僕の噂を流してもらった。中学生からの友達。赤崎の告白の時、赤崎を応援してたらしい。今の状況については、


「なんであんなに御執心だったのか、ってぐらい冷めてるよネ」

「そうだな」

「壊与はイケメンだからネ、顔で負けたかナ?」

「そうじゃないのはロイが一番知ってるだろ?」

「そうだけド」


 赤崎と僕は違う小学校だったが、ロイと赤崎は一緒だったらしい。クラスも同じで、話す機会も多かったため、赤崎の性格はだいたいわかるそうだ。


「翔琉クンは何か心当たりハ?」

「……ない」

「翔琉じゃ満足できなかった、ってことカ?」

「……それは、あるかも」


 だって、壊与と話している赤崎は楽しそうだから。赤崎があんなにうれしそうにしているのは、最後に見たのはいつだったかわからない。


「弱みでも握られたかナ?」

「それは、なさそうだけど」


 完璧美少女の彼女に弱点はないはず。成績は一番じゃないけど、上位者だし、運動神経もいい。友達もたくさんいるし、何よりかわいい。弱点がわからない。


「まあ、次の恋を頑張れヨ、じゃあナ」

「うん、じゃあね」



 ◆



 放課後は生徒会の仕事をしていた。生徒会は赤崎の部活が終わる時間に合わせるためにやっていたが、今は楽しくやってる。


「あ……」


 また部室棟の前を通ることになった。仕事上仕方ない、急いで通ろう。


「壊与~」


 ──赤崎の声だ。

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