第13話死ねない理由2
あの男を倒さない限り、俺の旅は終わらないんだよな。
長いな、とは思う。男を取り逃がしたのは、かなり悔しい。だが父を殺されたあの日から男の消息も掴めなかったことを思えば、一歩前進といったところだろうか。
奴が生きているのが分かったんだ。自分も生きていれば、必ず会える。義理の両親は、俺からの「仇を討った」という報せを今でもずっと待っているんだ。
その為には、ここを切り抜けなければならないわけだが……………
「…………んん?」
ふとセスは、腹の傷の痛みが和らいでいるのを感じた。
視線を落とせば、淡く控えめに紅いフレニムの光が見えた。その光が、ちょうど怪我をした部分を照らすようしている。
もしやと思い、手で腹を探れば、どうやら出血は止まり傷も塞がりかけているようだった。
「へえ、凄いな」
フレニムが治癒を施したのだとすんなりと理解して、セスは魔剣ならそういうこともできるのかと素直に感心した。
よく見れば、フレニムは高い音を出すのを止めていて、刀身の震えも落ち着いていた。魔剣士が去って、通常の状態に戻ったということか。
もしかして、俺に悪いと思っているのか?
なんだかシュンと項垂れているような魔剣に、セスはニヤリと指で剣の腹を撫でてやった。
「別に怒ってない。おまえの過去は知らないが、色々と事情があるんだろう?でも俺が死んだらどうする気だったんだ?」
フレニムは、まるで人間のようだとセスは思う。あの魔剣士に対するフレニムの態度は、怒り狂う以外の何物でもないし、今はセスの傷を癒したりして反省していると言ったところか。
「俺のこと、少しでも悪いと思っているなら………やることは分かるな?」
この魔剣が、理由は定かではないが同じように黒の魔剣士を憎んでいるなら、尚更共闘できるということだ。
承諾したとでも言うように、フレニムは静かに光る。
ズシンズシンと重たげな足音が、少しずつこちらに近付いてくる。セスは木の幹に後頭部を押し付けたまま、耳を澄ましてタイミングを測った。
そして飛び出すと同時に魔物の方へと向くと脚に狙いを定めた。
「右!」
脛を斬り、繰り出される拳を避けてから腱を断つ。
雄叫びのような声を上げて倒れる魔物の横から、もう一体がセスを掴もうとするのを、勢いそのままに指を切断してから距離を取る。
更にもう一体が遠くから走ってくるのを見ながら、セスは掲げた愛剣にそっと囁いた。
「さあ、食事の時間だ。マイ・レディ―」
カッと紅に激しく輝くフレニムを振りかざし、セスは思い描いた攻撃を言葉と同時に互いの魔力で具現化する。
「鋭利に射抜け!!流水斬鉄矢!!」
フレニムが巻き上げた雨の滴が、無数の矢のように研ぎ澄まされた刃となり、魔物に襲い掛かった。
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