第9話私たちの冒険はこれからだ

 午前中は現実リアルの世界で苦行という名の座禅タイム……鬼畜の所業だ。


 午後はビーチリゾートでウキウキパラダイスではない、私はというと灼熱屋台を営業をしている。


 寝ているときには夢の中で、座禅中に妄想した華麗な動きをゲーム内でシンクロさせる練習をひたすらに続ける悪夢。


 ビーチリゾートは、もちろん楽しかった……座禅のせいで足がプルプルしていて最初のころは動けなくて大変だったけどね……あれ?友達と楽しい楽しい夏合宿に来ていたんじゃなかったっけ……?


寝ているときログイン時でさえも、ここ数日の間は修行を頑張っていたわけなのだけれど、私の日課であるお使いクエストを消化しているわけじゃない、あくまでも修行になるような様々な体験をさせられていたのだ、つまりお金が一銭も入ってこない日々が続いているのだ、現実世界では屋台のお陰でかろうじて……雀の涙程度は収入があったのだが、どうせなら冒険譚ララバイの中でも稼ぎたい……!


 このような日々がひたすら続き、気が付いた時には既に8月(合宿11日目)だ、早くも夏休み中盤かという時期になって来ていた……そんな地獄のような日々は、ついに終わりを迎える。


「皆さま、今日までよく頑張ってくださいましたね、修行はこれをもって終了でございますので、本日はその苦労を称えて一日ご自由にしていただいて結構です、最終日には打ち上げパーティ予定していますので、本日は楽しんでくださいませ」


「ひゃっほーーーーーーい!」

「やった……」

「終わったの?」

「うへぇぇぇえい」

十文字じゅうもんじ…鬼畜」

十文字じゅうもんじさん容赦ありませんでした…パワハラですね」


 各々解放されたことへの喜びと怨嗟の声を口にしている――リゾートに来たのになぜか座禅という名の痛々しい妄想タイムとか……なんだよこれは!


夏休みなのに休んだ感じがしないよ?いや、宿題だけはみんなでやったからいつもよりかなり楽だったけどね!


この日は解放された嬉しさからかわからないけど、とても遅くまで楽しんだ……!


と言ってもログインララバイのために22時くらいには寝たんだけどね~。


 ……


 ――ついにセバスじゅうもんじによる修行は終わり、本格的にクラン結成クエストに乗り出すことに決まった


「さてエータ様、ご希望のロールはテイマーでございましたね、どのような従魔をご希望でしょうか?」


「鳥……飛べるのがいいですね、できれば乗って飛べるような子がいいです」


「左様でございますか、ふむ……ではこの近辺では出現しないのですが、西方の山岳に大型の飛行能力を有するモンスターが棲息しているという情報がございます、後日そちら……巨影の潜む山『リジッドマウンテン』に行かれると良いでしょう、ほかの皆様もすでに目指すロールは決まったようですね〈と言いながら皆を順々に見る、(私はスキップされたけどね)〉下準備は長くなってしまいましたがそれだけ皆さまは成長できたと思います、

それでは存分にロールプレイングを楽しんでくださいませ、私はここ『シンフォニア』で自分なりのロールを楽しみつつ、皆様の冒険を応援させていただきましょう」


 鬼畜だった十文字じゅうもんじさん……おっとゲーム内ではセバスさんだった、確かにみんな、だいぶ成長したみたいだよね本当に、まったくもう、もうこりごりだよ。


 とにもかくにも目指すロールも決まった。(約一名の私以外)


 ――サクヤは『魔法剣士』で前衛。

自由奔放思いっきり動ける立ち位置だ

縦横無尽に魔法剣で切り倒す!王道のロールだとおもうよ。

本棚から錬金術物の漫画を取り出しては読んでいるようだ、なにかしら影響を受けているらしいが、なにを企んでいるのだろう。


 ――タツ君は『騎士ナイト』。

サクヤを守ってあげなよ?むふふ、もちろん前衛だね!

脳筋かと思いきや、ナイト様な立ち位置を選ぶとは隅に置けないのだよ。

いまのところは方法性は分かりやすいけど、戦いは地味になりそうな気がする、カッコつけなくていいのかな?


 ――で、エータ君の希望ロールはさっきも言っていたが『テイマー』だ、つまり魔物使いのようなものだね。

飛べる従魔というのは個人的にも興味がある、魔法のじゅうたんじゃないけど飛ぶのはロマンだと思うんだよね。

ハルピュイアとかガルーダとかズーとか、そういうのが従魔に出来たら見栄えが良さそうだ、いったいどんな魔物が出てくるんだろう?


 ――ツカサさん、希望ロールは『アーチャー』もちろん後衛職だ。

裏方としてサクヤに降りかかるハエを打ち落とす……そんな光景が目に浮かぶ気がする。


 ――マチルダの希望ロールは『魔法使い』なので当然後衛だ。

MP消費量を無視して最大魔法ばっかり使いそうな危険因子になりそうな気がする……というフラグを立ててみよう。

あらかじめ故意にフラグを立てておいたら逆に変なことは起きないんじゃない?っと期待する。


だが、そんな私はフラグ一級建築士……はーっはっはぁ!


 そして私――。


なんか希望するロールが決まらないんだよね。


やりたいことが多すぎるし、何が好きなのかいまいちわからない、ひたすら生活のためになることを優先して来ていて娯楽はあまり考えたことがなかった、もう何でも屋でもいいような気もするけど……だから今は、今後何でもできるように、何があっても対処ができるように武器も防具をいろいろと準備を進めているところだよ。


とりあえず今は何でも屋とでもオールラウンダーとでも、器用貧乏とでもなんとでも呼んでくれぇぃ!

誰にも到達できないいただきに私はなってやろうじゃないか。

ん?その頂は絶壁すぎるって?ビクトリアフォールだの永遠のゼロって言ったのは誰だ?前に出ろぃ!


 …


 次にステータスだが――それは前にも言ったけど秘密だよ。


レベルは全員30以上になったとだけ言っておこうか?

『具体的にしちゃうと今後設定がぶれた時とかに調整しにくいじゃないのさ!』


 では――満を持して、いざ出発だね!


 目指すはガーディナント王国領、魔道都市セントラル!


今までお世話になったマジリハの街(ハジマリ)にさよならバイバイだね!


きっと次は白を意味する街だ……さすがにそれはないか、とくかく……ついに我々の冒険はこれからだ!っと言える時が来た。


『な~~はっはっはっは!』……いや、ちがうよ?!10週打ち切りならぬ、9話で打ち切りは勘弁願いたいよ!


 セントラルに着いたら、クラン結成クエストをクリアしてクランの結成、魔法を取得するためのスクロール収集!


そして自分探しの旅だね……ってどこの学校さぼったやつの言い訳だよ!


……けど魔法は楽しみだよね「ウィン・・ーディア・・レビ・・ーサ」おぉっとどこかの魔法使いが来たようだ、びゅーん、ひょい!ってね。


 え?独り言じゃなくて、ちゃんと冒険譚ララバイの話をしろって?


 ……だってもう、セントラルに着いた・・・・・・・・・んだもん。

なんだね?もっとちゃんと道中の出来事を説明しろというのだね?


仕方がないな、では道中我々が出会った出来事を話そうじゃないか。


『タルタロス』と呼ばれる盗賊団、『冥界の旅団』とのファーストコンタクトだ。


◆  冒険譚ララバイの中、その中で誰も知らない空間ばしょ、その一角

 

それは、何時だったのかもわからない……だがその声はマジリハ周辺にぼんやりと発生していたようだ。


「アのヒトた……チ、タノ……そ……ウ。あイ……イ…くね」


まだ誰にも気が付かれていない『バグ』は自己進化を始めた……。


これはセツナ達がマジリハの街を出発する5日前のことだった。


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