第13話籠の中の雛鳥と籠の外の雛鳥

 男の子を孤児院に誘導していき、パーティメンバーと合流して男の子について、事情の説明をした……そして私たちの眼前には、孤児院の扉がある――教会のような建物だ、中から子供の声は聞こえているし運営はしているようだ。


 そこに到着するや否や元気印のマチルダが一声あげた。


「たっのもーーー!」


 なんだか違うような気はするが、孤児院の中からパタパタ走ってくるような音がしたのでそのまま扉の前で待つ、すると院長さんらしき獣耳な女性とともに孤児らしき・・・これまた獣人の子供や、ヒューマン(人型)の子供が院長先生と思われる女性のエプロンをつかんで警戒しつつ、こちらを見つめていた。


「え~~っとぉ……そのぉぉぉ……」


 あ……だめだマチルダだめだ、大勢に見られていると緊張して、なにも説明できないタイプ人だな、しかたがないな私が説明するか――って、エータ君?


「先ほど、村の反対側でこちらの子供を保護致しました、迷子のようでしたので、こちらで預かってはいただけないでしょうか?」


 おおぅエータ君、大人な会話だ……!


 いつもはあんまり話しをしないけど、大人っぽいやりとりができているよ!その横でこっそりとダメダメなマチルダのほうをジト目で見るとバツが悪そうに鳴らない口笛を吹いていた。


「なるほど、かしこまりました、お預かりいたしますね。遅ればせながら私は当院の院長のマリエールと申します、男の子に関してはこちらで引き取らせていただきます……ですが『ちら』すでに30人を抱える院でして、食費のこともあるので『ちら』代わりにと言ってはなんですが寄付を、お願いできないでしょうか『ちら』」


 院長先生だった人は何度もこちらをチラ見しながら話した後は、目を閉じて色好い返事を待っているようである……というか、つまりは寄付の要求だ。


 やり手だ……お願いしに来ている手前、こんなの断れないでしょう?汚い、さすが院長、汚い――ぐぬぬぬぬぬ、やられた……。



 後で聞いた話だが、この時の私の顔は心底嫌だと思うような酷い顔をしていたらしい、お金を取られる話になると、どうやら顔に出てしまっているようだ――大阪の虎柄のおばちゃんのようだなと思われないように、そこそこ……いや、だいぶ気を付けようと思ったのは秘密なのである。



 ――話し合いの結果、明日多少のコインを寄付する事となった……とにかく、少年に孤児院で面倒を見てもらえる事になったということについて、説明することにした。


「ぼく……大丈夫?今日からはここで暮らせることになったよ?お友達と仲良く遊べるかな?」


「おと……も、だ……ち?たの……しい?」


 首をかしげながらだが、たどたどしい言葉使いではあるが、必死に質問を投げかけてきた。


……それはそうだよね、突然見知らぬ人間に連れられて来て、突然知らない環境に引き渡されるのだ、不安はあると思う……とにかく不安にさせないように返事をしよう。


「うん!ここには君と年齢の近い子もたくさんいるみたいだし、友達になって一緒に遊べると思うよ?そうですよね?」


 院長先生の方を見ながらそう問いかける


 突然話を振られ、しどろもどろになった院長先生ではあったが、意図は伝わったのか話に乗ってくれて、孤児院での生活について説明をしてくれた、男の子は納得したようで院長先生い背中を促され、先輩の孤児たちのほうに走っていった。


 ……


「じゃぁ院長先生や大人の人・・・・の言うことをちゃんと聞いて、お友達とも仲良く・・・・・・・・するんだよー!」


 っと言い残し、私たちは孤児院を後にした。


「なんだか良いことをしたっつー気分になるよな」

「だけど孤児院となると、今後どうなるんでしょうね?」

「なるようになるでしょー」

「うーん」

「……。」


 …


「心配であればもっと寄付をすればよいのでは?」


……!??!


 その瞬間私はすごい顔をしていたらしい、それは(お金は)ありえないよっと……その顔を見て引きつった顔をしたツカサさんは、まとめるように話をした・


「そうですね……お金でなくともボランティアなど、孤児院のお手伝いなどはいかがでしょうか?」


 などなど、話をしていたのだがサクヤは浮かない表情をしているし、話に入ってくる様子は無かったのでサクヤにも孤児院について聞いてみたのだが……。


「いえ……ただ少し違和感があったので、少し考えさせてください」


 と言いにくそうな返事をしてきたので、今はそれ以上の追求をやめておくことにした。


 そうこうしている間に宿屋に着いたので、部屋で休息を取りつつ、今日は起床ログアウトすることになった。


 ……


 朝……起きるや否や、早々に布団から抜け出し、服をそそくさと着替えて廊下に駆け出していく佐久夜さくや


十文字じゅうもんじ!ちょっと?どこにいるの?」


 慌ただしく十文字じゅうもんじさんを呼びつけた|彼女はそのまま廊下を進んで行き、それを追うように早乙女さおとめさんも付いていった。


「どうしたんだ?あれ」

「……。」

「すやぁ――ずぴぃ(zzz)」


 多和田たわださんは起きたばかりなのだが、もうすでにソファーで寝息二度寝を立てている……。


 いつもの佐久夜さくやと様子が違うのは、この天然魔女っ子以外は、皆感じ取っていた。


◆ 佐久夜さくやと???


「昨日出会ったNPCなんだけど、学習能力があるように感じたわ、どういうことなの?」


 佐久夜さくやは昨日孤児院に送り届けた少年のことを疑問に思っていた、もちろん設定として自己進化するようなパターンのNPCもいるのだが、それにしてもリアルすぎるような……何か微かに感じた違和感を拭えたなかったのだ。


「なん……だと?!」

「そんな検証結果はなかったはずだ」

「DDOS攻撃か?ハッキングじゃないか?」

「まだバグが残っていたか?」


 説明を聞いた錦財閥スタッフの面々、さらに十文字じゅうもんじさんを含めたベータテストに協力した執事達がざわめく。


「うーむ……私共のデバッグではそのような事例は確認されませんでしたし、『ヴァジェッタの村』にはそのようなクエストも、NPCも配置されてはいなかったと思います、プレイヤー年齢制限は13歳以上ですし、さらに記憶をもとに生成されるアバターを人為的に改変することは不可能かと思います、例外として『小人症こびとしょう』という、大人になっても子供の姿をしているという症例があるのでその方がプレイされていた可能性はゼロではないのですが……つまり、一般のプレイヤーだったという可能性もゼロではないかと考えますが、現時点では著しく可能性は低いことですので判断致しかねますね」


 そう、そういう可能性はあるのかもしれない――(NPC)ならなんであんなにたどたどしくしか会話ができない(設定な)のか?小人症は見た目以外では、ほとんど普通の人と変わらないと聞いたことがあるのでなおさら意味が分からなくなっていた。


 しかも疑問に思っていたのは男の子のことだけではない、あの孤児院、それそのものが何かおかしい不自然さがあったのだ。


 ――ともかく、ログアウトしてまだ布団にくるまってるのだが、目を覚ましていた私たちの元に佐久夜さくやが戻って来た、今日は早めにログインをしたいと告げて、また足早に部屋を飛び出して行った。


◆ サクヤ……セツナ


 その日の夜、早めにログインした後、皆が集まる前に気になることがあったので孤児院へと向かった――そこではセツナが冷たい笑い声をあげていた。


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