第20話白と黒
◆ エータ視点です
セツナさんは意気揚々と洞窟の中に入っていった……はて?洞窟と洞穴ってどう違うんだろう……あとでググってみようかな。
どんな敵が出てきても、セツナさんが相手だとたぶん相手は何もできずに決着が付くのだろうな、ちょっと相手がかわいそうだと思う……練習の時に時々見てたけど、あの速度は鬼――というかやっぱり魔王、名前の通り
「カッコイイな」
僕はセツナさんと別れてリジッドマウンテンを1人で登っている……大きく硬いを意味するこの岩山では登り始めると同時にアイアンゴーレムや、メタルリザード――さらにはリジッドラバーとかいう物凄く硬いダンゴムシを相手にすることになったけれど、まだ誰にも話していない秘密にしていたスキルの効果によって、とりあえずは何事もなく進んでいたし進む先にはアイアンゴーレムがまた見えてくる。
「いやぁ……硬そうだなぁ、まぁ僕にはあんまり関係ないんだけどねぇ」
ヴァジェッタの村に行く道中、盗賊に殺された村人の魂と仲良くなって、リジッドマウンテン道中にいるモンスター達に『憑依』してもらった、それによって特に敵対することもなくモンスターを遠くまで連れて行ってもらえる。
僕が座禅によって習得した能力……それは。
座禅=寺=お墓=死
という自分でも偏ったと思うイメージの中からではあったけど、死んだ人の心を
僕たちは座禅の時、ゲームの中とか現実の生活で『こういうことができたら楽しそう』を強く願った願望に関係のある能力を手に入れてしまっていたということは皆の様子を見ていると明らかだった。
ツカサさんは主であるサクヤさんに
弓を射るたびになぜかタツ君を睨みつけていたようにも感じたがその理由はよくわからない。
とにかく弾幕を浴びせ、サクヤさんを守ることを優先する能力を手に入れていた、弓を射る直前に『ガーディアン・アロー』とか分かりやすいことを言っていたので間違いはないと思う。
普通守るんなら盾とかを想像すると思うのだが、好きな漫画の好きなキャラが弓使いだったようなので納得だ。
ゴーレム戦の時のタツ君は、ただがむしゃらに切りつける感じだった。
気合だけで戦ってるようにも見える、僕の横で観戦していたサクヤさんは。
「あれではまだお父様は納得させられないわね。」
って言っていたんだけどどういう意味だろう?しかしやっぱりクラスNO1の体力はさすがだと思う、剣撃を大量に放ち、ダメージを重ねた結果巨大なゴーレムの討伐に成功している。
サクヤさんのアイアンゴーレム戦について――自分の小ささ……(怒られるか?)、というよりは非力さを隠すというか、
アイアンゴーレム戦の酸化は空気中の酸素を剣を振っている間に先に付けていた『炭素の膜』の外側に『くっつけた』それだけだったらしいだけど、うまいこと酸化してくれたらしい、酸化反応が速すぎる気がするけどそこはゲームだから
……いいのか?……とりあえず今度参考にしようかな、合宿が終わったら漫画借りれるかな……?
みんなの動きを観た時点で僕の戦い方の方向性はある程度固まってきていた、自分が強くなくても、周りの力を利用できれば問題はなさそうだねっと。
それを決定づけたのはマチルダさんだ――化学部かつオカルト好きなこともあるがこの人は得体が知れない。
魔女っ子で化学部でさらにオカルト研究会会員、意味が分からないですよこの人……だけどこの人の説明によって
つまり。
『アーツ』はパッシブ型な常に効果を発生することができる状態変化であり、剣技など、習得すれば忘れないようなものは自転車に乗る技術のようなイメージの物である。
『スキル』はそれを使用するを意識をすることにより発動する、特殊な身体・魔素操作し、属性に関係なく、ゲーム内で設定された特殊効果を表現することができる。
そして……。
『錬金術』
これは分子の操作・変質をコントロールする力であり、やはり無から有を生み出す力ではないようだ。
最後に……『魔法』だ。
これはまだ完全に仮定の話だけどこれは無から有を生み出すことのできない錬金術とは対になる物だと思う、魔素というか魔力というかMPから存在を生み出し、形作ることまでは出来るが、そこからの変質や応用をすることができない能力なのではないだろうか?
ただ、魔法はまだクエストをこなしていないので習得することはできてはいないのだけれど、なんでマチルダさんはクロロホルムを生成することができたのだろうか?
僕が導き出した結論……それは――。
使うことができると認識していない状態なだけで、使う自分が想像できないだけ……実は使用することができる物なのじゃないだろうか?そうじゃないと行動や思想によってスキルが創られていく事が理解できない。
魔法習得クエストやスクロールは、それを手に入れたことで使えるようになったと『信じる』というか『把握』するプラスアルファで『補助』効果があるのだと思うんだけどどうだろう?だけどこれはまだ確証が持てないな、魔法取得クエストクリアしてないしね。
ゲームは順を追って進めるのが楽しいのだからせっかくできた仲間とそれを確かめたい、一喜一憂している
……
前置きが長くなったかな。
……今僕はなぜかドラゴンと対峙している。
とてもとてもとても大きい――おかしいな、僕は鳥のような飛行系モンスターをテイムするつもりでマジリハの街を旅立ったつもりだったんだ――なのに出会ったのは盗賊団、ゴーレム連戦、猿の惑・・・大群。
からの孤児院失踪事件。
とにかく飛べるモンスターをテイムして仲間にしようとは思っていたんだけど……鳥のつもりがドラゴンとはおかしいでしょう?順番通りに楽しんでいきたいと思ったばっかりだったのになぁ――。
そして今目の前にいるのは、飛ぶことのできるタイプではない、ワイバーン種(躯体が大きく羽が小さい)ではなく……飛ぶこともできる竜種(躯体が大きいが、羽も大きい)その中での上位種であるアルビノ個体の”ノワールドラゴン”である、……アルビノだから白のはずなのに名前がノワールとはいかがなものなのか。
ちなみに『龍種』は蛇のような体のタイプでスカイドラゴンとも呼ばれているらしい、出会った瞬間にブレスで焼かれて生き残ったプレイヤーはいまのところいないとの情報だ。
黒のドラゴンが白い――真っ黒な翼に真っ白な体躯
白いのだが黒い――真っ白な瞳に真っ黒な爪と牙
そしてそのドラゴンは向かってくるでもなく、逃げるでもなく、2つの卵を温めていて、それだけは絶対に守るという覚悟を感じた……なぜか僕もそれを見守るようにしばらく向かい合っていた。
――そのままどれくらいの時間がたったのであろう?突如、白黒ドラゴンが宙に舞うように翼を振るったと思ったら周囲の山肌や岩石は音をたたて崩れていった、周りの状況を把握しノワールドラゴンの方に目を向けなおした時にはすでに、ノワールドラゴンの姿は消えてしまっていた。
……ッドーーーーン!
ガラガラガラ・・・ズザザザー……
翼を振るう度に暴風かのような風が起き、地滑りのようなものが一面をが洗い流していく。。
土煙が無くなったあと、そこには『白と黒の卵』だったものが残されていた。
――真っ白な子竜
――真っ黒な子竜
僕は無意識にその子たちのことを
「ルリムとシュブ」
と名付け、抱きかかえた。
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