第21話天国と地獄
「えーたーー!(君)」
心の中ででも『君』と言わないとまだ落ち着かないんだよ!
さっき崩落しているような大きな音がしたのもあって、エータ君になにも悪いことは起きて無いといいのだけど……と考えながら、高速にかつ慎重に山を駆けあがって行く。
あ!人影が見えた――エータ君みたいだ!よかったよ無事な様子だった、エータ君もこちらに気が付き……あれ?手を振ってこない、なぜだぁ!
――というかその両手には、一切モフモフなどはしていない、むしろつるっつるだ、しかも見た目は爬虫類……なのに、なのに――めちゃくちゃ可愛いお子様ドラゴンが?!
やばい――理解の範疇を超えてしまったようだよ……えーたくん?
「その腕の中にいる子達はどうしたのかなぁ?ぜひ私にも抱っこさせてもらえないでしょうかぁぁぁぁ」
ほわわわわわぁぁぁ……あまりの可愛いらしさに土下座して頼んでしまった。
「ああぁぁぁ!セツナさ――セツナ!そんなことしなくても大丈夫ですよ、ただ寝ているようなので静かにお願いします」
そう言いながらエータ君は白い方の子を私に差し出してくれたので、有難くその子をそっと抱き寄せた。
「プスゥーー……プスゥーーー……」
私の両腕で生後間もない赤ちゃんを抱っこするかように抱きかかえられたその子は……あまりにも可愛らしい寝息を立ててくれている、片腕で抱きかかえることもできるが、片腕だと若干心もとない重量なので両手で大事に抱える、生まれたてだと思われるその子の儚さにとろけてしまう……。
「ふぁぁぁああ……かわいい」
「セツナの方の子は『ルリム』と言います、それでこっちの黒い子は『シュブ』です、この寝顔は反則ですよね」
ふふふっと笑うエータ君、あぁ……かわいいかわいいかわいいカワイイかわいい可愛い。
――ん?そういえば?
「エータく……、エータ、この子達どうしたの?」
「う~ん……そうですね、僕がセツナと別れて山を登り始めだ後に何回かモンスターを
――ほうほう、そんな状況だったのか、よく無事だった。
「そのまま僕は何もできないまま竜を観察していると……ふと気が付いたんです。その竜は、
私は、エータ君……良くやったよ――!っという意思を示すように思わずサムズアップで称えていた。
◆ セントラル――残ったメンバー
「なんなんだよ、このおっさん」
「どういうことですか?このお方は」
「むぐぐぐぐ……!」
「ぶへぇぇぇぇぁ」
◆ ツカサ視点
なんなのだこの人は……下手にセツナ嬢について行ったた、残されたサクヤ様を危険にさらすことになるのではないかと思い、セントラルに残ることを決めて、セツナ嬢とエータ氏を送り出したのだが……。
残ったメンバーを相手に、修行をつけてやるなどと言い放ってから、このジャックとかいう輩はおかしい……ふえぇえ?
ゲームマスターだ、ある程度強いのは分かる、だが明らかに動きがおかしいのだ……セバスとも何かが違う、熟練された技術のように感じる気がする……だが私はベータテストに参加してはいないのでサクヤ様をお守りする必要最低限以外は動かないように務めていた――その影響もあって他のプレイヤーの情報は少し欠けていて普通との差を判断できなくなっていた。
この人はギルマスという設定だけじゃなく、裏事情か何か――絶対にあるはずだ。
――だが、とにかく今はそんなの関係ねぇ……ぐぁぁああ……!。
初めて使ったときの弓よりも
お嬢様の役に立つことができない
……そこで意識を飛ばされた、――がある意味ありがとうギルマス!コンプライアンスだけは守れました。
◆ サクヤ視点
ツカサが苦戦している!!?あのツカサが??ハーバードを出てその後、
相手は少なくとも今は、敵対関係にある人ではないのは分かっている……分かっているのではあるが歯がゆい、どうにも納得できない感情がうごめいてしまっている……思わず叫んで応援している私がそこにはいた。
「がんばれーーー!ツカサーーー!」
◆ マチルダ視点
――この人はどうやら『魔法』が使えるらしい。
私の愛読書
――だが目の前には、
……人は自分の想定しえない事象を神の仕業、や悪魔の所業……、そして魔法、魔術と呼びます。
だけどこの人は全方位に氷弾や火の玉、雷の矢、石のつぶてが顕現してくるのです。
――そのまま何時間も……セツナ達が返ってくるまでは訓練を続けていた、このおっさんのことはもう考えられないほど精神的に疲れた――そんななかで考えることが出来たのは、大好物な魔法や化学の現象。
空気中の原子、分子……いや、それらから生成するには無理のある光景が目の前には繰り広げられている、なんなのだこれは――何かの罰ゲームなのか?
まだまだ私の妄想力(想像力ではない)は足りていないようだな……仕方がない、我が封印されし魔眼の宿りし右眼を解放するか。
「くっ……右目がうずく」
「くっ……右目がうずく」
「くっ……右目がうずく」
ごめんなさい、なにも起きなかったです――。
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