第22話クラン結成

「あ!セントラルが見えてきたよー」

「そうですね、皆どういう修行をしていたんでしょうかね?」

「う~ん、でもセバスさんの修行と比べると楽だったんじゃないかな?」

「そうかもしれませんね、だけどセバスさんの修行はどちらかというと体力的というよりは、精神面を鍛えるような感じだった気がします――ね?シュブ」


 無責任にセントラルに残った仲間のことを黒竜のシュブに尋ねるが。


「グゥゥゥ?」


 当然まともな反応は帰ってこない――当たり前だ、会ったことないし言葉もわからないだろう。


「え~~?そこまで脳筋っていうようにも見えなかったよ、――ね?ルリム」

「ゴァァァ!」


 白竜は相槌を打つ……お?わかってくれているのか!いいねいいね――、けど君たちまだ私たち以外には会ったことないよね。


「この子達、やっぱり物凄く可愛いねぇ」

「それはそうですよ、僕の初めての従魔なんですから当然ですよ」


 エータ君は胸を張って答えてくれた、なんの根拠もないことを言ってはいるけどナイスプレイすぎるよ!


 子犬サイズの小竜が二匹、私たちの両腕に抱かれながら、何もわかっていないような黒竜のシュブ、話しはわかっていそうな雰囲気だが実はなにもわかっていない白竜のルリム。


 自分たちがどういうメンバーのペット仲間になったのかを理解していないのか、楽しそうに――元気に鳴く。


「グゥゥゥ!」

「ゴァァァ!」


 はるか彼方に見え初めて来たセントラル、だが高速で走り抜ける私たちにとっては大した距離ではない――到着し、ギルドの扉を開け放った、そこには……ぐったりとした4人の姿があった。


 何があったのか聞こうかと思ったのだが、4人は修行の内容は言いたくないと言うので、今は聞くのは我慢してあげよう――後でマチルダあたりから問い詰めてみることにしようかな。


◆ セントラル残留(修行)組


 私とエータ君が到着し、皆に声をかけるや否やだ。


「な……な……な……、何なのですかこの子たちは!」


 やっぱりそういうリアクションになるよね、この子達可愛いよねぇサクヤ。


「な……な……な……、この子たちは!」 


 興奮気味なマチルダ ――うんうん、そうだよね、この子達可愛いよね。


「売ったらいくらになるんでしょう?」


 ――て、おいツカサさん!!


 ……タツ君はヘトヘトになりすぎてリアクションすらしようとはしない、その隙にサクヤとマチルダが小竜をそれぞれ抱えて頬ずりしはじめた。


「「はぁぁぁ……」」


 恍惚の表情を浮かべてスリスリしている、竜麟は硬くなくてスベスベしているし、指でつつくと硬い鱗の感触ではなくプニプニとしたマシュマロ肌。頬ずりするその二人の顔には、先ほどまでの疲れた表情は全くない――そんなやり取りをしていると、いつの間にかおじさん……リードさんが声をかけてきた。


「戻ったか、その表情を見た感じ、クエストはまぁ予想通りだがクリアできたみたいだな、全く心配はしてなかったがな……そっちの坊主も大層なペットを捕まえてきたみたいじゃないか」

「捕まえてなんかいませんしペットだなんて言わないでください、インプリンティングっというやつです……所謂いわゆる刷り込みですよ、卵から孵ったときに僕が最初に見つけたっていうだけです」


 ※雛鳥が初めて見た物を親だと思い込むアレです


「いいや、そいつらはちゃんと従魔になっているようだぞ、ちゃんとお前を認めているみたいだな、あとでテイマー従魔術ギルドで登録して来いよ」


 ほうほう……テイマー《従魔術》ギルドなんてあったのか。


「いまはそれはどうでもいいだろう、クエスト『BreakBonds』――裏目標『枷を壊せ』のクリアおめでとう、それではクラン解説について説明しようか、おい!お前らこっちに来い!」


 ぶっ倒れているタツ君や、メロメロ2名、それを見ているツカサさんに声をかけた。


「クラン結成の条件は達成された、結成のために――を決めてもらうぞ」


 その内容は――。


・クランリーダー、サブリーダーを選任する、そのメンバーが引退か半年ログインしなかった場合は再度選任する必要がある

・クラン名を決める、あとからの変更はできない

・クラン徽章きしょう(フラッグの柄)を決める、あとからの変更はできない


 の三点らしい。


「どうする?サクヤ」


 リーダーは当然サクヤだ、それは決まっていたのだが、それ以外はなにも考えていない、どうしたものか。


「そうね……サブリーダーはツカサ、でいいかしら?」


 それには特に問題はないね、全員が頷いている。


「クラン名と徽章はどうする?」


 う~~~ん……どうしようかな、全然考えてなかったよ、よっぽど変な感じじゃなかったらサクヤに決めってもらったらいいと思うんだけど――。


「皆?リーダーのサクヤにクラン名はまかせてもいい?」


 その問いに特に誰も反論はない、ではサクヤに任せようかな――、その安易な決定のせいであのクラン名になってしまうなんて――、なんということでしょう?


「あとは、徽章だけど案とかある?」


 これには今までおとなしかったメンバーがいろいろと声を挙げる。


「オムライスにケチャップで小竜」

「小竜を模した弓」

「小竜のドクロ」

「盾を背景に、小竜」

「小竜ならなんでもいいです」


 いろんな意見ではあるのだが、概ね先ほどの影響を受けて、ある意味全員同じような感じの意見だ――。


 ……


「さぁ!いっくよぉぉお!」


 クランハウスには元気な声が響き渡り、金髪小柄な少女は待ちきれないという様子だ。


 留守番を引き受けた白髪の老人は手をひらひらと振る。


「行ってらっしゃいませ、お嬢様」


 と執事テンプレなセリフ、思わずクスリとしてしまう。


「昨日は徽章を考えるので寝れなかったもんな、だけどいい徽章が出来たぜ」


 剣と盾を背負った男がニヤリとして金髪少女に言い放つと恥ずかしそうにむくれている、尊い。


「まぁまぁ、ようやくクランとしての活動開始だし……ワクワクして寝れなかったんでしょう?今日から頑張ろうね」


 どこからどうみても魔女っ娘スタイルの女子はフォローとも追撃ともいえるような言い方だ。


 私はというとその光景をほほえましく眺めつつ、隣で同じく眺めている男子と苦笑いをしていた。


 最後にメイド服を着たすこしお姉さんチックな女性が場をまとめるように声をかける


「ではお嬢様とそのおまけ達、クランとしての初めての活動――魔法スクロールを探しに出発しましょう」

「おーーーーっ!」

「いぇーーーい!」

「よっしゃぁ」

「また、皆はおまけですか」

「はじまりですね」


 颯爽と魔導都市セントラルの中枢の一つ、『火の試練』に向かっていく六人――

レクイエムの異名……という生易しいものではなく、魔王軍という異名で恐れられることになるクランの冒険がここで――。


 ひっそりと、かつにぎやかに幕が開いたようだ。

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