第35話 肇と理奈

 放課後になる、予定通りにみなもとさんと共ににしき家に向かうことになった、校門を出ると突然リムジンが出現して驚いていた、のだが……むしろ驚いていたのはみなもとさんよりも十文字じゅうもんじさんだったようだ、みなもとさんを見た瞬間に何か驚いているように見えたのだけど、そんな十文字じゅうもんじさんに促されるままに車に乗って錦邸へと出発した。


 その道中、車内ではみなもとさんがイギリスからの帰国子女であり、とある理由があって日本に戻って来たということを聞いた、逆にみなもとさんに対しても普段の佐久夜さくやのことや、その佐久夜さくやと私との関係性、冒険譚ララバイについてなどいろいろとお互いの話をしていた、それはただ興味があるというよりは、調べたいことがあるような感じもしたのだけど、特に断る理由もないし、私は聞かれるままに答えていった。


 私は佐久夜さくやとの出会いによって使用人になったこと、冒険譚ララバイでクランを組んだこと、その後の炎竜討伐によって不本意ながらも現実でもゲームでも一躍有名なクランとなってしまったことなどの説明をした、そのなかで『ヴァジェッタの村』での孤児院の話と、その時の男の子についてを説明している時、彼女が他の話の時と比べ遥かに険しい顔をしていたことに誰も気が付いてはいなかった。


 ……


 にしき家に着く……するとそこには何故か、にしきさんのお父さんが玄関の前で待ち受けていた。


 …


「来たか、待っていたぞ『みなもとはじめの要件だな?』


 そうにしきさんのお父さんが言うと、みなもとさんが頷く、それを見るや、十文字じゅうもんじさんに応接室に通すように指示を出し、建物に入って行った。


 …


 私共々、一緒に帰宅したメンバーは応接室に通される。


「さぁ、聞きたいことが有るのだろう?……『デイドリーム』についてだ。」


 そうにしきさんのお父さんが言う、

それを肯定するかのようにみなもとさんが頷いている。


 デイドリーム?確かそれは冒険譚ララバイの前身になっていた教育ソフトだっけな?


 ……


 そこからの話は衝撃だった、デイドリームについては聞いたことはあったんだけど、ニュースでは発売延期だという発表があった後にシレっといつの間にかデイドリームは発売されていた。


 その発売延期の原因が、子供たちの集団失踪(睡眠)事件だと言うのだ、しかもその事件を収めるために引き継いだ責任者がにしきさんのお父さんだったというのだ、夏休みの間、クランを創ったり、炎竜討伐をしていたり、楽しく魔法を放っていたりした私は、そんな状況の中で呑気に楽しんでいたのかと罪悪感が襲ってくる。


 私だけじゃない、つかささんも佐久夜さくやも、当然瑛太えいた君もその事実に驚きと戸惑いを隠せないでいるようだった。


 そしてその事件の後、源さんの両親とは音信不通になってしまったらしく、現在は日本にいる祖父母の家にお世話になることになり、その流れで転校してきたということらしい、少し家は遠いのだけど、この件があったから佐久夜さくやの通う高校に転校してきたのだと思う、なんとしても手がかりの心当たりがあるタルタロスを早く追わないといけない。


榊原さかきばら君?落ち着き給え」


そうにしきさんのお父さんが声をかけてきた、私が早く解決しようとしているると察したらしい。


「急ぎたくなる気持ちは分かる、だが……この冒険譚ララバイというゲームはその被験者たちの脳に一部リンクしているようでな、焦る気持ち、憎む気持ち、恨む気持ち、そねむ気持ち、そのような感情があるプレイヤーがいると、子供たちの脳に負担がかかってしまうということが脳波の測定からわかったのだ、その為にいままで十文字じゅうもんじにゲームの内外……いや外が主だな、で君たちの心を鍛えさせてきたのだ、君たちは今のままにゲームを楽しみ、そして試練を乗り越えていってほしい……そのためになるように君たちを含めたプレイヤーに楽しく、道への探求心を保つことが出来るようなイベントを用意していくつもりだ。できうる限りゲームを楽しんでほしい、そしてその中で最速での冒険譚ララバイ制覇を成し遂げてもらえると信じておるぞ。」


 ……分かるような、分からないような、ともかく悪い感情を持って冒険譚ララバイを遊ばないでほしいということらしいつかささん、佐久夜さくや、そして瑛太えいた君、それぞれの顔を見ると状況を理解してなのか真面目な顔で頷いて来た。


 ……


 その後もいろいろと説明を受け、解散することになった、そしてみなもとさんを錦邸から送り出す直前、みなもとさんが声を出した。


 …


「皆さん、お願いがあります」


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