第36話 新メンバーと離脱メンバー

 もう一度みなもとさんが言う。


「皆さん、お願いがあります」


「皆さんのパーティに私を入れてください、冒険譚ララバイは先日の増産で買うことが出来ました、私の弟を追うことが出来る唯一の手がかりです」


 私たちはその問いかけに顔を見合わせた、弟さんの話も聞いたし目的は分かる、つまりはゲーム内で弟の捜索をしたいのだろう。

 

「う~ん、私はいいと思うんだけどどうなんだろう?クランクエストはLV30以上とか指定があったけど、新規メンバーとかはそういうのクリアしてなくてもいいのかな?」


 その疑問には足立あだち君が答えてくれた。


「それについては問題ないですね、クランが乱立しすぎないようにするために設立時用の条件だったようです、もちろんアクティブなメンバー人数が6人を切ってしまうと解散になってしまうらしいですよ、なので僕は歓迎します」

 ※アクティブメンバーとは30日以内にログインしたプレイヤーのことを差します


「だったら私は賛成かな」

「あたしも問題なっしだよ」

「異論はありません」

「おぉ!俺も歓迎だな、人数多いほうがいろんなことできそうだしな」


 そう言って『イッシッシ』っと笑う瀬戸せと君、それについても私も同意見だよ、残るは早乙女さおとめさんだ、6人の視線は早乙女さおとめさんに集まる。


「えぇ、私も賛成でございます、むしろ少し安心いたしました、実は私事なのですがメイドの本格的な修行としてドイツのとある貴族の家から数年修行に来てみないかとお誘いを受け、ご主人様からも行ってきた方が良いと背中を押して頂いていたのですが、そうするとクランの人数の問題がございました、あちらに行った場合冒険譚ララバイにご一緒することは難しくなるかと思っておりましたので、申し訳ないと考えていたのです」


「「「「え?」」」」


 古参の5人が驚愕の表情を並べる。

 

「はぁ?」

「はい?」

「へ?」

早乙女さおとめさん?」

「つ……つかさ?!何よそれどういうこと?!」


 佐久夜さくやが取り乱している、だけどその気持ちもわかる気がするな、小さい時からお姉さんのようにずっと一緒居た人が遠くに行ってしまうかもしれないのだ、平静を保つのは難しいに決まっている……私からかける言葉なんて見つからないよ……、重苦しい空気の中早乙女さおとめさんが口を開いた。


佐久夜さくや様、私早乙女さおとめつかさは、次期錦家当主になられる佐久夜さくや様にふさわしいメイドになりたいと考えております、相談もなく勝手な申し出となってしまい、大変申しわけないのございません、お許しを頂きければと思います!」


 早乙女さおとめさんは目に涙を浮かべ顔を赤くして佐久夜さくやを見つめている……そうか、早乙女さおとめさんも妹のように大切にしてきた佐久夜さくやと離れるのが寂しくないはずがないんだよね。

 

 重い沈黙がしばらく続く……そして不意に佐久夜さくやが口を開いた。


「つかさ、だめよ」

佐久夜さくや様?」


 またしばらく沈黙が続く。


「本当の意味で私にふさわしいメイド帰って来なさい」


 へ?当主のお世話をするメイド以上なんてあるのか?


「ただのメイド長(女中長)では私にはふさわしくないんだから、わ……わ、わたしにふさわしいのは……世界一のメイドさんなんだからぁぁ」


 佐久夜さくやはそう叫んで早乙女さおとめさんに飛びついて肩を震わせていた。

 

 ……


 次の日、落ち着いた早乙女さおとめさんに話を聞くと、来年の3月末にドイツに行くことが決まったと伝えられたのだった。

 

 …

 

 そして学校とはみなもと理奈りなさんを迎えた始めての冒険譚ララバイログインは今日の夜からということにった……佐久夜さくやの目は赤く充血していたのだが気丈に振舞っていた。

 

 そしてその夜、ログインした私たちはセントラルにマジリハに移動した、いろいろと規格外になりかけていた私たちは冒険譚ララバイ時間での数時間で到着した。

 

 そしてマジリハの冒険者ギルドの前にいたのはみなもとさんだ、それはいいのだが……なぜその隣にあんたがいる椎名しいな先生!

 

「「「「何やってんですか先生!!」」」」


「お?!な……なんだよ君達、いいだろ?昼間に言ってた通りさ、あの後調べたらまだ遠くに移動してないみたいだったからね、ここでうろうろしてたらみなもとさん……じゃないか、リーンを見つけて一緒にいたんだよ、ナッハッハッハッハ」

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使用人の冒険譚《ララバイ》 かぼす @Lawliet

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