第29話白と黒と紅
「あ……副会長だ」
マチルダの自然な呟きに凍り付くその場にいる8名。
「あれ?書記君と会計君もいるじゃん、ヤッホー!」
ゲーム内で思いっきりリアル情報な発言をしているマチルダ、これはマナー違反な気がするのだが、突然に出くわした三人にはたしかに見覚えがある、というか学園の生徒であれば生徒会選挙の結果発表時に顔だけは見ているはずだ。
生徒会副会長、
才色兼備だがどこか残念な感のあるやりすぎ女子という噂がある、所謂ツンデレ女史。指をさしながらツインテールをなびかせる例のアレだ、母親がデンマークの人らしく、
生徒会書記、
右眼が碧く、左目が黒いオッドアイ、双子で生徒会に立候補し、女子からの絶大な得票で書記の席に着いた、坂本兄弟の兄。
生徒会会計、
右眼が黒く、左目が碧いオッドアイ、双子で生徒会に立候補し、女子からの絶大な得票で書記の席に着いた、坂本兄弟の弟。
といった生徒会の役職者たちと
かく言う私たちも実は、なんだかんだで学校内では有名だったりする。
タツ君は剣道の県大会では上位に食い込むそれなりの実力者だ、だけどゲーム内では初心者のころは敵が人型でないときには一気に型が崩れてダメダメになってしまっていた、もちろん
マチルダは化学部でいろいろな薬品をネルネルしすぎた挙句、自分自身が自作クロロホルムの被験者になり半日以上寝たおバカさんだ、生徒が倒れている!といった騒ぎになり救急車を呼ぶ直前にまでいったらしい。電話をかけようとボタンを押している最中に――
「おっはよう?」
とか言っていたそうな。
当然、生徒会や先生から散々に怒られたという経歴がある、当の本人は寝ぼけた顔で目をこすっていたらしい。
エータ君は今までの
錦家にお世話になるまでは、朝は新聞配達、放課後はタウン誌配達、正月は年賀状配達――と、ひたすら配達系のアルバイトをしていたようだ、聞いたところによると同時に配達した方が効率的だからやっていたらしい。
これだけで有名な理由になるだろう、だが
髪型は定番のツインテやポニテではないが素直に下した腰まで届くような長髪が天使のようだと噂になるほどだった。
さすがにツカサさんは面識がないので反応はない、だが
最後に私、部活もやっていないし、目立つような容姿ではないと自認している。
普通に学校で先生の授業を聞く程度にしか勉強はしていない。
お金がないので塾に行けるわけもない。
特別、家で予習・復習をしているわけでもない。
誰にも話してはいないことだし、これからも誰にも話すことはないかもしれない――
つまりは、成績学年トップ――それが私のアイデンティティ。
◆ 『紅蓮の咆哮』・『炎の赤岩』攻略チーム
「あなたたち、2組の?」
本来はゲーム内でリアルの発言をするのはマナー違反ではあるが、この場には私たち以外には人はいないので続ける。
「はい、そうですが生徒会の皆さんも
なぜこの人が?いや……そんなことを気にしている場合ではない、いい加減に先に進まないと会長の期待を裏切ってしまうことになりかねない。
だが、現状の私たちでは攻略の糸口すら全く見えていない状態なのだ。一番を取られるくらいなら同着一番になるのが落としどころだろう。
「
「私のことはサクヤ、それから――」
「わかりました、それでは突然にではあるのですがこの洞窟のクリアまで、手を組みませんか?あなた方に利点はないかもしれないけど、今後そちらのメンバーだけでは攻略が難しいコンテンツがあった場合、手を貸すことを約束します」
遠目には見えているのだがダンジョンの熱で到達することが出来ないあの巨大な赤い門、おそらくはあそこがダンジョンのボス部屋か、最終階層への入り口か。
この熱波の中でも平然として立っている彼女たち、きっと何らかのスキルが影響しているのであろう、
暑さなどではなく、もし最終関門が戦闘関連なのであれば、戦闘の場数は自慢できるほどの数こなしてきた私たちのチームワークなら、少なくとも負けはしないだろう……さらにこの人たち6人とアライアンスを組めば、勝率はさらに上がるはずだ。
話し合いをした結果、彼女たちは提案を受けてくれた。
特に断る理由もないし、みんなで遊んだほうが楽しそうだという気楽な返答だった。
ゲームシステムで目の前に表示することが出来る『パーティ編成ウインドウ』を使用し、アライアンス申請を送り、受諾してもらった。
視界に見えるパーティ名の情報(頭上に名前が表示される)の中に紹介されたのとはまた違う名前が2個あることに気が付いた。
「ルリム?シュブ?なんですかこれは?」
この声に反応して姿を現した白と黒の小竜、『それ』を見た瞬間にサクヤさんが外套の背や、リストバンドを強調というかアピールしてきた意味が分かった、この子たちがモデルになっている徽章だったのか。
小竜に夢中になっている私を尻目に両隣から声が聞こえた。
「「あ……暑くなくなりましたね」」
タクマ君とユウマ君はいつものようにハモっていた。
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