第8話妄想は力なり
ざわざわ……ざわざわ……
ここは、
そのなかで、一部の機材がエラーを起こしてしまい、その復旧のために担当者や責任者が必死に復旧作業を進めていた。
「パーツの交換はどうなっている!」
「くっ……この回路は完全に焼けてしまっているか」
「こっちも人を回してくれーー!」
おびただしい人数がせわしなく走りまわっている……その原因となったのは『雷』である。
データセンターなので避雷針などサージ設備は当然のように設置してあったのだが、電気の供給を行っている変電装置付近に連続して雷が落ちるという異常事態の結果――本来ならそれでも機材を守るために設置されていた雷対策装置(SPD)までもが焼けてしまい、その結果として過電流がサーバーまで到達してしまったようである。
「くっそ!なんなんだよ!『カタトゥンボの雷』でもあるまいし!」
「だが幸いだったのはこれがユーザーデータではなく、システムサーバーだったということだな、ユーザーデータが消えていたとした場合、補填が大変なことになっていたぞ」
「そうだな、ユーザーデータは複数拠点でバックアップを取っているから助かった」
……その後も、あわただしい作業に大勢が狩りだされ、復旧作業が急ピッチで行われた結果……
――昼間の喧騒が嘘だったかのように静けさを取り戻したデータセンターの一室で若手の職員は呟いた。
「何事も起きなければいいけどな……」
……
――夏休み3日目(7月23日)
「あれ~~?なんか
その
「まじかよ、夜までに復旧してるといいんだけどな」
「うん、そうだよね」
「ホントホント!そうよねー」
「まったくだわ、お父さん何やってるのかしら」
ん?お父さん?私以外の皆も
「え?そうか……まだ説明してなかったかもしれないわね……私のお父さん、というか
ほへぇ、財閥ってなると話のスケールが大きい、大きすぎる、ビックバンなのである。
……
話は戻り、合宿初日。
荷物を部屋に置き、リビングに集まった私たちに、
「それではお嬢様がた、それに
「なんだ?知ってるか?」
「わからないよ」
意味ありげに私たちを案内する
純和風で半畳くらいに区切られた畳スペースがある、枕?いや違うな……これはクッションか?
「こちらのクッションのような物は
いやいや……だからそれは何!?
「それでは、皆様には
「ちょ」
「え」
「なん?!」
「・・・。」
「「「「いやいやいやいやいや」」」」
おや?なんで
「
……思い返してみるとそうだね、――私は特に、速度に関してはステータス値は高いのだから、大分速くなっているんじゃない?的なノリが手伝って、驚異的な速度でクエスト無双をしていたし、皆もその効果を体験からか納得して頷いているようだった
「ですが、それではまだ本来のステータスを使いこなせてはおりません、本当ならば私はもっと力強いはずだ、もっと賢いはずだ、もっと速く走れるはずなのだと……そう思い込みイメージを定着させることで、現実では実現なしえない、夢の中だからこそできる極限状態の初期段階である『イマジネーションハイ』という状態になることができるのです――皆さんも聞いたことがあるのではないですか?人間は肉体を守るために30%までしか、その能力を使えていないということを……夢の中であれば、そのような制限はただの『枷』でしかないのでございます」
つまり、私はスーパーマンだぜ!って『妄想』したら強くなるってことなのか?
『くっ右目が疼くぜ』とか言ったら能力者にでもなれるのかな……。
「もちろん、直ぐには信じられないでしょう、ではなぜ私は老体にも関わらず皆さまよりも……おっとセツナ様はステータス的に異常であり……例外ですが、何故私は皆様よりも高ランクのモンスターと戦えるのでしょうか?レベルアップでの能力向上は通常微々たるものだということは既にご存じのはずです」
「だけどなぁ」
「けどやっぱり」
「やっぱりそうだったんですね!!!」
ふぇ?
「毒……じゃなくて、どうやったら凄い薬を作れるかを
ネルネルしたんですね、毒薬って言いかけたよね。
「そうしたら、いままでは品質が『通常』か『劣化』くらいだったのが、いきなり『最高品質』になったのよ」
とっても眼をキラキラと輝かせて説明してくれた……。
「確かに
ここまで話を聞くと疑う余地もない気がするね……(若干一名痛々しいって言葉に反応していたが)
とにかく、そんなこんなで上手く丸め込まれ、座禅を組むことになってしまった……だがみんな座禅なんかしたことはないし、足が綺麗に組めないよ!
本来の座禅は
さすがにそれはちがうやん!
※宗派によって名称、所作など違いがあるのでそれが正しいと決めつけないように注意です
……で!超人になったつもりで妄想したり、魔法少女の妄想をしたり、イケメンに囲まれる妄想をしたり、お金の山に飛び込む妄想をしたり、私の体の特定部分の丘が大きくなる妄想もしたし!……あれ?座禅って妄想していいんだっけ……?
でもそんなの関係ねぇぇぇ!と、妄想を続けるが、薄目を開き身動きが取れないこの状況……睡魔をレジストする術は、今の私にはないのだ、すやぁ……。
ばちーん!
おうっ!?
「
舟をこぎそうになったそのとき!必殺
ものすごく退屈な時間のなか、全員夢の国へまっしぐらだったのだけど、次の言葉で必死になった。
「次寝たら、もし
ひどい!化けて出てやるぞ、こんちきせう!
――くっ、しょうがないな!私の妄想力を見せてやる!いやっ、見れないけどね!
ヨーガ・スートラーーー!!!
……
「お疲れ様でした、リビングに
そう言って初心者にいきなり2時間も座禅をさせた鬼畜はスタスタと
「「「「「「足が動かないで……!」」」」」」
なんとか組んだ足を崩し、立ち上がろうとする……ぐうぉぉっぉぉおおお!
「「「「「「無理(やばい)(だ)(です)(でございますぅ)!」」」」」」
だって、まったく足の感覚がないんだもん(泣)……しばらく生まれたての小鹿のようにプルプル震えつつ何とか立ち上がる、ようやくリビングで食卓にたどり着いたその時には、せっかくのランチは冷えてしまっていた。
――すでにランチを終え、優雅に紅茶を嗜む
「明日から午前中は毎日です」
の一言に、みな茫然としていた。
◆ ???
誰も知らない場所
何時だったのかもわからない
……
ザザ……ザ、ザザザザ……
ゴ――ゴ…ゴ…
……
「コ……、コハ……?ボ…ク……ワ……タシ……オレ、ア……ソボウ」
……
夢の世界の無限化と思える世界のログにも残らない残滓と言える産声は電子の海へと消えた。
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