第3話はじめてのレベルアップ

 おやすみなさいログインします、まったく今日は不思議な日だったな。


 ……すやぁ


 さてさて、セバスさん(十文字じゅうもんじさん)が教えてくれた、町の外れにある『シンフォニア』というお店に行ってみるとするか!


 もしかしたらにしき家みたいに、城とは言えないまでも、ものすごく華美な建物なんじゃないか?とか妄想しながら走り、町の外に出た。


 うわあ……指定された場所に到着した、底に見えたのは華美な建物でも、お城でもなく……テキサスのガンマンとかがテキーラでも飲んでいそうな、両開きの押して開く扉が付いた古風な建物だった――看板にはたしかに『シンフォニア』と書いてある、イメージとは全然違ってはいたけど入ってみますか。


 なんとなく入りづらい雰囲気だったが、突破し入店する、すると店内にはテーブル席についているサクヤとツカサさん、そしてバーテンダーにしか見えないセバスさんがカウンターの中でシャカシャカとやっていた。


 めちゃくちゃ似合っているなぁ……この人、ものすごくロールプレイングを楽しんでそうだよね、このやる気は見習わなくてはなるまいな。


「あ!キタキター、おーい!」


 サクヤがおいでおいでと手招きをするのでお隣に座らせて頂く事にする、ゲームの中ではご令嬢っていう感じが全然しない、現実が『キャラ』なのかもしれない。


「どっこいしょういち……とぉ、さて何をして遊ぶ?」


思いっきり気を抜いて着席した、そんな私に二人はツッコミを入れて来る。


「じじくさい」

「じじくさいですわね」


 ぐわぁぁぁあ……大きなお世話だ、バイト先の店長の口癖が感染したうつっただけだい!


「まぁまぁ、それは横に置いておいてあげるわ、それで……セツナはいまレベルはいくつなの?」


 ほう……?鑑定で強制的にそのくらいの情報であれば調べることもできるのに、律儀にゲームマナーを守ってくれるのか……のぞき行為を嫌う人は多いからねぇ――(そもそも個人情報を公開しているのだが……)


「見ていいよ、ステータスオープン」


プレイヤー名【セツナ】

レベル【1】

経験値【0 / 10】

体力 【10】

魔力 【10】

力  【1】( 743 / 1000)

防御力【1】( 390 / 1000)

知力 【1】( 612 / 1000)

精神力【1】( 879 / 1000)

機動力【1】(1000 / 1000)

魔法 【無し】

アーツ【無し】

スキル【ルート最適解・マップ形成】

称号 【無し】

装備 【村人の服】

コイン【651000】


 あれ?スキルなんて項目がいつのまにか増えていたんだね――というか『経験』もたぶんなんだけど、数値を見た感じ、だいぶ溜まって来ている感じがするね……。


まぁ実のところ、途中から気が付いてはいたのだけど、冒険譚ララバイではレベルなんて上がらなくても『経験』が入るだけで実際にステータスの数値には反映されないだけで、既に効果は出ていた・・・・・・・・・たんだよね。


 機動力の数値が100を超えたくらいのときから現実世界リアルでは100メートル18秒だった鈍足の私が、冒険譚ララバイでは10秒前後で走れるようにになっていたし、今じゃバトル漫画の主人公も真っ青な機動力になり始めているくらいなのだ。


 私個人としては、なによりも足が速くなったことでクエストの消化効率がぐーんとあがったので、金策欲も重なってしまい……やりすぎてしまった結果起きれなくてログアウトしなくて学校に遅刻した――先生に怒らてしまった日もあるのだ、もちろん反省はしているが後悔はしていない、一応成績は良いから先生も厳しく言ってこないのさ!


 あれ?サクヤたちが固まっているぞ?なんだろう、疲れちゃったのかな?寝ているのにね。


 つんつん……つんつん……おーい、おーい。


――お! 起きたようだよ?寝ているのに。


「セツナさんこの括弧表示はなんですか?」


ツカサさんは顔が固まったまま聞いて来た。


「セツナまだLV1だったの?なのにこんな力とか機動力とか……とかチート?!」


サクヤは目を大きく見開いてステータスと私を交互に見ているのだが……う~んどう説明したものかなぁ……ざっくりと説明してみるしかないか。


「とりあえずまだLV1な理由は、初めてログインした日に狩場が混んでたからモンスターとまだ戦ってないからだよ、だから町の中でお使いクエストの消化をしてたんんだよ、それで、そのまま惰性で次の日も……次の日も……って感じで今日まで。

この括弧表示はクエスト達成数ボーナスの時に管理者さんからもらえたよ」


「お父さんか……」


「ご主人様ですね……明日締め上げておきます」


 おや?なにか小声で不穏なことを言っていた気がするぞ?まぁいいか。


「ふぅ……ツカサ、参考までにセツナにステータスを見せてあげて」


 なんだ?何故かは解らないけど、飽きれられたように聞こえたよ?


「かしこまりました」


プレイヤー名【ツカサ】

レベル【13】

経験値【10023 / 80000】

体力 【140】

魔力 【70】

力  【32】

防御力【18】

知力 【36】

精神力【33】

機動力【51】

魔法 【無し】

アーツ【無し】

スキル【連射】

称号 【リザード殺し】

装備 【ショートボウ・隠密の服・リザードレッグ】

コイン【158300】


 おおLV13もあるのか、ゲーム公開から1週ちょっとでこれはだいぶ強いんじゃないかな?


「で、次は私ね」


プレイヤー名【サクヤ】

レベル【13】

経験値【10023 / 80000】

体力 【140】

魔力 【70】

力  【96】

防御力【67】

知力 【25】

精神力【19】

機動力【34】

魔法 【無し】

アーツ【無し】

スキル【連射】

称号 【リザード殺し】

装備 【ショートソード・剣士の服・リザードレッグ】

コイン【2300】


 ずっと二人で行動してたのだろうか経験値は全く同じだし、リザード系の称号も不たちとも持っているようだ、あとサクヤはツカサさんにお財布を管理されているのがはっきりとわかる……お嬢様にお金持たせていたらすぐにスッカラカンだもんね、うんツカサさんガンバだよ!


「普通はこのようにLVを上げてステータスを伸ばすものなの、だけどおと……ゲームマスターはときどきゲームのカンフル剤として尖ったというか変なプレイヤーを作るものなんだけど」

「やりすぎでございます、当然明日絞めておきます」


 こほん……。


「とりあえず、LVを上げて帳尻をあわせるのがいいと思う、ある程度までLVを上げていれば、自重さえすれば目立つことも少なると思うから」


「そうだね~、あ……ごめん、雇い主にタメ口はだめだ――ですよね。」


「ん……だめじゃない、友達なんだからタメ口でいいの」


 アヒル口になっちゃった、どんな顔でも可愛い――なでなでしたくなる。


「はい……いや、わかったよ」


 ぱぁっと笑顔になるサクヤ、顔芸すごいね。


 この時から私はサクヤとツカサさんのことをリアルでも現実でも下の名前で呼ぶことになった。


「うーん、やっぱりとりあえずはゴブリンでLV上げるのがいいのかな?」

「そうですね、ソロで討伐できればそれでLVは2には、上がるはずでございます」

「わかったよ、あとツカサさんも気軽に話してよ……」


そういい終わるのを待たずに遮られる。


「これが癖ですので無理でございます」


――はい、わかりました。


 ……


 今、私の手にはそこらで拾った最強のヒノキの棒が握られている……もちろんそれはただの木の棒だ。


そして眼前には、はぐれたゴブリンが一匹いる状況だ、初めて町から出たときには他のプレイヤーに狩りつくされてモンスターの『モ』の字も見えなかったのだが――草むらに潜んでいるソロゴブリンをツカサさんが簡単に見つけたくれた、さすがアーチャーだ、索敵の上手そうなイメージそのままだね。


 とにかくだ……ついに初バトルだよ!


冒険譚ララバイでのバトルは、今迄のゲームのように画面内に並んでいる敵にカーソルを合わせるのではない――実際に目の前にモンスターがいるのである、この臨場感はさすがに体験したことがない。


 声をあげられて増援されるとまずいかな……と冷静に考えて後ろから行くことに決めた。


気が付かれる前に……先手必勝ぉぉっっ!


 メェーんっっ!(背後からなのに面なのは気にしないでおくれよ?)


◆ サクヤの視点


 ツカサが敵の位置を教えてあげた、それにゴブリンの特性として敵を見つけたら仲間を呼ぶことも教えた、何かあったら手助けに入るように準備をして構えていたんだ。


セツナは敵の背後から臨戦態勢に入った、セツナは初めての戦闘バトルだ、だけどあのステータスだ、きっと面白いものが見られるに違いない――次にセツナは身を低くし……ゴブリンの背後から飛び掛かった!


いや、消えた。


 鈍い音がしてゴブリンに目を移すと……既に息絶えたゴブリンから光の粒子があふれ出していた、光の粒子に包まれながら消えていったその場には魔石が残っていた。


「は?どういうことなの?」


◆ ツカサの視点


 私はセツナ様にゴブリンの位置を教え、サクヤお嬢様と一緒に離れた位置から様子を、見守っておりました。


セツナ様は助言の通りに身を低くし、飛び掛かかるタイミングを計っている様子でした。


そして意を決してぐっと構えたと思ったら……彼女を見失ってしまった。


まったく動きを追うことができませんでした……ゴブリンのほうから鈍い音がしたのでそちらを見てみると『ぐっ!』っとガッツポーズをしているセツナ様の姿がありました。


「なん――だと……?」


 おっといけません、思わず好きなおしゃれ漫画のセリフが出てしまいました。


◆ 魔王の産声


ぽーん

「セツナは経験値を10入手し、レベルが2に上がりました」


プレイヤー名【セツナ】

レベル【2】

経験値【0 / 50】

体力 【20】

魔力 【15】

力  【744】

防御力【391】

知力 【613】

精神力【880】

機動力【1001】

魔法 【無し】

アーツ【無し】

スキル【瞬殺・ルート最適解・マップ形成】

称号 【無し】

装備 【木の棒・村人の服】

コイン【651000】


 変なスキルが増えている……まぁそれはいい。


 何だろうか?このステータスは……大魔王でも倒せそうな気がするよ。


 草むらの方のサクヤとツカサさんから何やら驚いた声が聞こえる。


「は?」


 とか


「なん――だと……?」


 とかオレンジ頭の死神のセリフも聞こえるが、きっと気のせいだよね、これ以上は言えないよ?怒られるのは勘弁だ、後ろから不意打ちという、某おしゃれ漫画だと負けフラグが立つような戦法だったけど、あっけなかった。


ぽーん

「【システムメッセージ】力が500に到達したプレイヤーが現れたため、初級火魔法が解放されます」


ぽーん

「【システムメッセージ】知力が500に到達したプレイヤーが現れたため、初級水魔法が解放されます」


ぽーん

「【システムメッセージ】精神力が500に到達したプレイヤーが現れたため、初級光魔法が解放されます」


ぽーん

「【システムメッセージ】機動力が500に到達したプレイヤーが現れたため、初級風魔法が解放されます」


ぽーん

「【システムメッセージ】機動力が1000に到達したプレイヤーが現れたため、中級風魔法が解放されます」


ぽーん

「【システムメッセージ】これに伴い『エピックコンテンツ』サブストーリー『風の迷宮』が魔導都市セントラル付近に発生しました」


ぽーん

「【システムメッセージ】これに伴い『エピックコンテンツ』サブストーリー『火の迷宮』が魔導都市セントラルに発生しました」


ぽーん

「【システムメッセージ】これに伴い『エピックコンテンツ』サブストーリー『水の迷宮』がとあるエリアに解放されました」


ぽーん

「【システムメッセージ】これに伴い『エピックコンテンツ』サブストーリー『光の迷宮』がとあるエリアに解放されました」


ぽーん

「【システムメッセージ】秘匿条件が達成されましたので、討伐コンテンツ『刹那』を予告します、実施準備ができ次第追って報告します」


 ん?『刹那』だと?


なんだか非常に嫌な予感がする――。


さっき自分で大魔王って言っちゃったよね、もしかしてそういうことかな?野生の魔王ってやつなのかな……。


「セツナ!」

「セツナ様」


 ――あぁ、なんだか悟ったような……申し訳なさそうな顔をしている。


この二人……近い将来なにかめんどくさいことになりそうなのを悟っているな。


 うーむ……とりあえず、現実逃避ログアウトだ。



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