第6話合宿をしよう!

「――てぇぇ!私たちまだクラン結成してないじゃ~~ん!」


「どうしたの?突然」


 唐突に叫んだ私にサクヤはきょとんとしている……全員やる気満々で、いざ大冒険に旅立とうとしていた、だがサクヤの冒険譚ララバイでの目標は、まずは『クランを作ること』である、だがいきなり冒険に旅立とうと気合を入れてしまっていたので、思わずツッコミを入れてしまった。


 ……ごほん。 


クラン結成クエストを受領するためには、6人以上でパーティかアライアンスを組んだ状態で受領し、そのメンバーの6人以上が参加してクリアしないといけないクエストがある。


その名も――『BreakBondsブレイクボンズ』である、なんてひどい名前だ、まったく……直訳すると『絆ブレイカー』だなんてクランを結成する為のクエストとは思えないような、凶悪な名前だったのである。


「いや……私たちはまだクラン結成クエスト、クリアしてないでしょ?サクヤ」


 ――と、当たり前のことを主にサクヤに対して訴えかける。


「あ」

「おやまぁ」

「あちゃー」


「なんだ?それ」

「……。」


 ……このリアクションで誰が誰だかわかるかな?


 女子3名は言ったことを理解したようなのだが、ここでまだ問題があるのだ……このクエストはどうやら受注はまだ他にあったらしい、そしてその条件を今の私たちはクリアできてはいないらしいのだ……その条件とは。


・6人以上でパーティかアライアンス同盟を組み、そのうち6人以上がLV30を超えていること

・6人以上でパーティかアライアンス同盟を組み、そのうち6人以上が冒険者ギルドDランク以上になっていること

※冒険者ギルド登録時はGランクです


 これらをクリアするとようやくここから大分離れたところにある『魔導都市セントラル』の冒険者ギルドで受注できるようになるのだ、ここで問題になるのは|我々のステータスなのだが……。


――サクヤ

冒険者ギルドランクE

LV13


――ツカサさん

冒険者ギルドランクE

LV14


――私

冒険者ギルドランクA(大きさじゃないよ、さすがにもっとあるよ)

LVは4

クエストを回しまくった成果でA(大きさじゃないよ、さすがにもっとあるよ)

クエストはポイント制なので、低ランククエストでも大量にやれば昇格できるのだ……Aまではね。


――マチルダ

冒険者ギルドランクD(これはあの大きさも?……て、うるさいわ!)、ちなみに彼女は授業中にも一人で冒険していたようで、寝言で……。


「ゴブ……狩ったどぉ!」


 とか言っていて先生にめちゃくちゃ怒られていた、ちなみにLVは8である。


――タツ君

冒険者ギルドランクG

LV3


 特に何もない


――エータ君

冒険者ギルドランクF

LV6

 ……あれ?意外だFになっているようだね、LVも6か――後で聞いたところによると、個人情報の開示をしてリアルマネー変換をしていたようだ、金の亡者仲間が現れたみたいだ、公開についてタツ君に何か質問をされていたようだ。


――おまけでセバスさん

冒険者ギルドランクB

LV37

いやはや……何だ?この人は?後日、錦邸のお庭で本人に聞いてみた情報によると……。


「情報収集には実績も実力も必要なのですよ、ホッホッホッホッホ」


 って言っていた、まじですごいよ、私はクエストをやりまくっただけなんだもんもんね……特にすごいことはやっていない、チリツモなだけだもんね。


 ちなみに新規組にはまだ、私のステータスの全貌は秘密にしている、なので十文字じゅうもんじさんよりLVは低いのだが高すぎるステータスについてはまだ秘密になっている。


そして、冒険に出発したと思ったその時に私からのツッコミを受けた結果、サクヤとツカサさんとで、簡単な話し合いが行われていた、これからの目標が決まっていく。


――目標


・クラン結成

・魔法習得

冒険譚ララバイの世界中を冒険する

・所謂ラスボスを討伐する


 そんな案を考えている中で、途中、傑出して楽しそうな意見が上がっていた。


「ウチの別荘で夏合宿をします!」


 っというサクヤの意見には皆。


「「「「おーーーー!」」」」


 と賛同していた、富豪の別荘なんて一般人には行ける場所では、だいぶ場違いな感はあるが、そこに行ける数少ないチャンスなのだ、せっかくだからご厚意に甘えて思いっきり楽しむことにしようというのが庶民4名の心の結束となった――。


 あれ?そういえば……冒険譚ララバイって寝ないと出来ないのに、夏合宿って何をやるんだろう?若干の疑問はあるが全員が参加することにした、別荘という響きには勝てない。


使用人のアルバイトは休みになってしまうと給料下がるかなぁ……?とかエータ君とひそひそとやり取りをしていたが。


「あ、使用人のお仕事は休みにはしないよ、少しあっちでも手伝ってもらうつもりだから」


 っとサクヤが言っていたため、たぶん解決。


 今日は7月9日、夏休みまではあと2週間――夏休みへの準備段階として、セバスさんによる特訓拷問やクエスト消化をメインに冒険譚ララバイでの日々を過ごすこととなり、なんで夢の中でまで、精神的に疲れなくてはいけないのか、疑問の日々を過ごすことになった。


 ――やっぱりセバスさんはおかしい、ステータスの高い私ですらも、時々動きを追えなくなることがあるのだ、「なぜだ?」っと納得がいかない顔をしていると、所謂『瞬歩』とでも言うような『アーツ』という技能が、多数冒険譚ララバイには存在しているということを教えてくれた。


 その後、合宿終了までに全員が覚えるべきとされたのはを3つの『アーツ』だ。


『空間把握』一定範囲の敵味方の位置を正しく把握する基礎能力

密集戦でのフレンドリーファイヤーや連携を組むときに重要になってくる感覚的なアーツである、位置を直感的に正しく把握できるようになることはタイマンでも多人数戦でも大いに役に立つだろう。


『速歩』瞬歩の一歩手前のアーツであり、移動速度の底上げにいいようだ

歩法を工夫することによって素早く最大速度まで加速、停止することが出来る基礎能力、当然汎用性に長けていて、いつでもその恩恵を受けることが出来るはずだ。


最後に『隠密』というアーツ

簡単に言うと、『抜き足差し足忍び足』を素で行うことが出来るようになるらしい、敵に位置を把握されにくくなったり、潜入系のクエストで効果を発揮すると思う。


 これらの『アーツ』は『スキル』のようにクエストをクリアすることのような、条件解放で覚えることは出来ない、ただひたすらに本人が訓練した結果として習得できる技能である。


現実世界でも、応用によっては効果を発揮することができるものらしい……当然パワーレベリングでは覚えられないし、唯敵を倒してレベルを上げていたプレイヤーには習得することは到底不可能であるパッシブ強化である。


つまり、特殊技能というよりは空手の黒帯のように、習得できているということを認定してもらったものが『アーツ』として認定を受ける事であるらしい。


 それは『自転車に乗れるようになるための練習が似たようなものだ』という説明は、とても分かりやすかった、確かに練習した結果として身についている。


さらに一部の『アーツ』はステータスに関係なく発動できるものなので現実世界でも多少おさらいをすれば同じような技術を扱うことができる、『速歩』などはさすがに限度はあるが、『隠密』のようなものであれば現実の世界でも同じように効果を発揮できることだろう。


 まさに自転車、本当に分かりやすい例だ。


 その修行は……セバスさんと『隠れ鬼』をすることで、なんとか『空間把握』と『隠密』までは夏休み前までに習得までこぎつけることはできたのだが――。


それは、軽くトラウマになるくらいの経験だった……逃げ切ったと思ったら、いつの間にか無表情で背後にお爺さんが立っているという状況には、恐怖を覚えたよ。


 ちなみに『スキル』は実行することを意識することで発動できる能力だ、特に意識しなくても発揮できる『アーツ』とは相反する設定であり、世界の理とは無関係に、特殊技能が実行される力のようだ。


 まとめると……。


『アーツ』

個人の能力、経験として習得した技能であり、いつでも発揮することが出来る。


『スキル』

そのスキルを実行すると決めたときに、必要であればMPを代償としたり、再度同じスキルを使用できるようになるための待ち時間が設定されている、ゲーム制作者が用意した特殊技能。

※後から知ったことだが、無から有を生み出すことは出来ない、そのあらゆる力の性質を操ることで、その効果を発揮しているということだ


『魔法』とはMPを消費して、(公式発表ではだが)6属性の魔素を扱り、無から属性の物質や力を発生することが出来る能力になるらしい。


 マチルダの希望で早いうちにスクロール集めもすることになっていたのだが。


やはり魔法という物への憧れは全員共通で強いらしく、セバスさんも含め全員が魔法習得関連クエストへの参加を希望していた。


 ……


 ――修行寝るの日々は過ぎていく、それに伴ってクエストの消化量もすごいことになっていたし、それに伴い、LVも皆だいぶ上がって来ていた、そしてそして……そろそろ夏休みだ!


……


 ――そんなある日。


ぽーん

「【システムメッセージ】総踏破距離が1000キロメートルに到達したプレイヤーが現れたため、初級土魔法が解放されます」


 おお!


……久しぶりのシステムさんの声だ。


5属性目の魔法解放だ、土か……いろいろなことが出来そうな気がするよ、というかステータス突破以外で魔法を解放することもあったんだね、いままではステータス値が500を超えたときに魔法は解放されていたと思う……。


たぶん最後の魔法属性は闇だと思うんだけど、ステータス関連の種類はHP/MP以外では5種類しかない、たぶん防御力が闇になるのかな?けど闇とかだったら邪眼の力に目覚めて……。


「くっ右眼が!」


 とか言っていたらいいのかな……。


1回くらいはそれを言ってみるのも、定番のお約束だと思うんだよね……。


 それはそうと、みんなセバスさんの影響もあってか、とても成長著しい。


 サクヤなんてタツ君と早寝してランデブー――もとい狩猟系クエストで連日のレベル上げだ。


……気のせいか?いや、気のせいではないみたいだ。


この二人、ものすごく息が合っている気がする……!なぜかツカサさんがタツ君の事を睨みつけているような気がするのだが、気にしてはいけないのだ……そういうのは邪魔しないでいるつもりだ……。


 マチルダは修行の合間に、薬草やら毒草やらをネルネルしつつ、採集系クエスト中に襲ってきたモンスターに『毒団子』を御馳走する、という恐ろしい子――けど、何故だかやたらと似合っている。


 マチルダはセバスとも気が合うようで、『シンフォニア』の厨房の奥に2人で入っていくのを見かけることが度々あった、何をやっているのかはご想像にお任せしておこう……と伏線を張っておくのを忘れない。


 最後にエータ君だが……。


人助け系のクエストを網羅しつつ、その道中で狩りもしていたようだ。


 ――だがそんな普通の生活をしていたのにもかかわらず……だ。


 称号『みならい勇者』というものと、もう一つの称号がステータスボードに表示されるようになっていた。


あれ?そういえば勇者って、魔王の敵じゃん?つまり?


……これは伏線にならないことを祈りたいよ?フリじゃないよ?


◆ 初老の老人が目に入る第三者の視点


「ご主人様、よろしいでしょうか」


「うむ、首尾はどうだ」


「皆、順調に成長しております」


「よかろう、では『カーニバル』には間に合うのだな」


「左様でございます」


「うむ、ではあやつらの晴れ舞台を用意しようではないか」


 翌日、冒険譚ララバイの公式ホームページには『カーニバル』の告知メッセージが掲載されていた。


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