バカと天才は“神”一重

抹茶

プロローグ


顔を上げると、十字の窓枠に4分割された青白い満月が見えた。


フォルス大陸中心部、ミストレアの街は分厚い夜の帳に覆われており、商店は戸を下ろしている。


現在時刻は深夜2時、多くの人は夢を見ている途中だろう。


──光を薄く照らす漆黒の髪をした少年は冷え切ったスープを銀細工の棒で数回かき混ぜ、一気に飲み干しため息混じりに呟いた。


「もう1ヶ月か」


 その言葉の真意は解らないが1ヶ月前、少年に何かが起こった事は明白である。


スープを飲みきった少年が空になった白いカップをこれまた白い受け皿にカツ…と小さい音を鳴らして置く。


「まだこの生活には慣れないな……」


視線を下ろすと、そこには白いシーツの上にふかふかの布にくるまった黒髪ロングの女の子が一定のリズムの落ち着いた寝息をたて、気持ち良さげに眠っている。


「ふぁ……俺もそろそろ寝よう」


虚ろな瞳の少年は欠伸をすると立ち上がり、食器を片した後、眠気に誘われるままに彼女の隣で眠りについた。

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