第10話 自己紹介
「よし、そんじゃまあ定番の自己紹介でも始ようか。とりあえず左から入口側から順番にな」
ベルド先生はそう言うと自分から見て左にいた生徒を指さした。
「俺スか? 何を言えばいいんスかね?」
ご指名を受けた生徒はそう言いながら立ち上がる。
「ん~とりあえず名前と……血液型とか趣味とか好きなタイプでよくね?」
「それ見合いじゃないッスか……」
この国にもある政略結婚などで見合いするそれの事だろう。
先生の言葉に生徒は苦笑いしながらも教壇に立った。
(コイツはさっきの……)
流れ的に自然に教壇へと目を向ける。
その生徒は俺と先生がコントを繰り広げている時にツッコミを入れて止めた生徒だ。
身長は俺と同じくらいで、薄い茶髪を短めに刈り込みツンツンに立てている。顔立ちはまあ整っており見ただけで明るい印象を受けた。
「え~っと~……。俺の名前はシン・ワイトハウト。趣味は体を動かすことかな? まあ1年間よろしく!!」
元気いっぱいで明るい熱血漢っぽいな。
俺と先生のコントに突っ込むあたり、いい感じのいじられキャラになりそうだな。
「何か良からぬこと考えてね?」
俺の思考を見事に感じとったシン、まるで魔法使いだ。まあ、ここは魔術学園なのだが。
そんなこんなでトップバッターという大役をこなしたシンは席に戻っていった。
次に立ち上がったのは鮮やかな栗色の髪を緩くカールさせたふわっとしたイメージのある女子。
「テトラ・シルベスです。趣味は特に無いけど、寝ることが好きかな? よろしくお願いします」
そう言ってテトラちゃんはペコリと頭を下げた。
おっとりというかなんというか……どこか不思議な感じのする少女。
その少女は右手の人差し指に銀色に光る指輪を嵌めていた。
(あの指輪は確か……。中々面白い子だな)
見覚えのある指輪を見て、少しテンションがあがる。
テトラちゃんが席に着き、その隣である少年が立ち上がった。
上背があるわけでもなく、そこまでガッシリとしているわけではない……所謂中肉中背とでもいう体格の少年。
特徴的なのは程よくウェーブされたミディアムの黒髪。
「グラン・ビスクです。これといって趣味などはありませんが、読書が好きです。1年間よろしくお願いします」
紳士的な口調でそう言ったあとペコリと一礼をする。
見た目からも口調からも冷静沈着な印象を受ける。そして少し長い前髪を指先でくるくると弄っているのを見てクールキャラだな……と位置づけた。
グランの自己紹介が終わり、次は隣の席にいたメガネ美少女の番だ。
無言でスッと立ち上がると早々と教壇に向かって歩いていく。
(ようやく超絶ツンデレ美少女の番か)
先程のやり取りで強烈なイメージを持ってしまったからか、他の人の自己紹介よりも興味が出てしまう。
「……リリネット・ツィー」
メガネ美少女はそれだけ言うとこれまた無表情のまま俺の隣の席へと戻ってきた。
(え、それだけ?)
そう思ったのだが、Eクラスという特殊な集団のせいか何も起きることはなかった。
(でもまあとりあえず名前はわかったことだし良しとするか)
4人とはこれから仲良くしていきたいから、後でお話しないとな。
「よし、次で最後な」
(お、俺か)
先生のその言葉に俺の体はピクリと反応した。
(あ~なんて言おうかな~。さっきのメガネちゃんみたいにしたら暗いと思われるし……かといって先生みたいなのだと引かれるし……迷うな)
必然的にシメという形になり、少々考え込む。
(う~ん……。俺はクールタイプってわけでもないし、かといって熱血漢でもねぇ。ウザすぎず、静かすぎず、それでいてかなり取っつきやすいような相手の心をグッと掴む挨拶……難しいな……、やっぱり無難な道を選ぶか)
ここまでの思考…0.02秒。
一通りプランを練った俺は臆することなく教壇まで歩いていき、中心で立ち止まる。
そして新たな1歩目を踏み出す為に小さく息を吸った。
「どーもーっ! Eクラス5番、リオード・アンタレスです!! 趣味は芋掘りで、特技は発掘です! 気軽にリオちゃんって呼んでくれたら嬉しいナ!」
一瞬にして空気が凍りついたEクラスだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます