第6話 入学式
生徒会室を後にした私は、真っ直ぐ第1講堂に来ました。
そして時刻は8時28分。まもなく式が始まります。
私以外の新入生は全員、私の今いるステージ上より1段下で用意された椅子に座って待機しています。
その様子を幕の隙間から覗き込むと、先頭で椅子に座っている兄さんの姿が丁度見られました。あの後ろに並んでおられるのはクラスメイトの方達で良さそうです、随分と少数のようですが……。
兄さんは既に眠っていますし、ちゃんと私の挨拶を聞いてくださるのでしょうか。
ちなみにステージ上から見て1番左側に1年のAクラス、その右側にB、C、Dクラスと続き、その次は2年生がAクラスから順に並んでいます。そして3年生へと続くのですが、兄さんが在籍するEクラスは3年のDクラスの右側に並んでいます。
兄さんは気にも止めずにお休みになっていますが、後ろに続く方々は3年Dクラスの方々の視線が気まずいようで、強ばっています。
「ただいまより、第58回ミストレア学園入学式を開始する」
突如ステージの中心に現れた謎の男性。
見たところ年齢は50~60歳くらいでしょうか、威厳のある面立ちで開会宣言をしました。
「最初にこの学園の理事長である私が新入生全員に一言」
どうやら司会進行は理事長が務めるようです。一見普通に喋っているようですが、恐らく空気振動系の魔術を使って自身の声を第1講堂中に届かせています。
「今年は
。以上です」
いやらしく口角を上げてそう言い放った一言。一言でしたが、生徒達、特に男の子達にはとても響いたようで、身を震わせて早く力試しをしたいとでも言わんばかりの表情の方が大勢いらっしゃいます。
兄さんはまだぐっすりのようですが。
「続いて新入生代表、フィル・アンタレス」
「はい」
名を呼ばれた私は先程まで理事長が立っておられた場所に立ち、生徒達の方へ向く。
そして内ポケットから封筒を取り出し、その中からさらに折りたたまれた1枚の紙を開いた。
どうやら兄さんは起きたようです。
私はそれを確認して、空気振動系魔術を自分に施す。
「はじめまして、本年1年生主席となりましたフィル・アンタレスです。ここにいる生徒たちは多くの受験者の中から勝ち残った優秀な生徒、主席を頂いたからといってうかうかとはしていられませんね。私は小さな村出身の田舎者ですが、教育には貴族も平民もありません。学ぶ権利については初代国王より全ての国民は平等に教育を受けることができると定められています。これからの学園生活では家柄やクラスに囚われずに友人をつくっていきたいと思っております。先生、先輩方々、これから色々とお世話になると思いますのでよろしくお願いします。新入生代表、フィル・アンタレス」
一礼すると、盛大な拍手を頂きました。
あまり人前で話すのは慣れませんが、無事に終了してよかったです。
兄さんを見ると、泣きながら拍手していました。全くもう……兄さんったら。
本当は10分ほどの長文だったのですが、理事長の手前、大幅に省略してしまいました。
アドリブだったのでおかしい点が無ければ良いのですが。
出番が終わった私は、ステージ裏でその後も式が終わるのを眺めていました。
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