第2話 Eクラス
「それでも兄さんがEクラスというのには納得出来ません!!」
キッ……と、そんな音が聞こえてきそうなほど勢いよく、鋭く言い放ったフィル。
その目は不満、それ一択であった。
「まあ、あの試験内容じゃこうなってもおかしくないし……。俺は魔術は一切使えないからな~」
不満そうなフィルに対して少年は特に諌める事も取り繕うこともせず、ただのんびりとそう呟いた。
前述の通り、この世界は科学と魔術の力は何にも変えられない力である。
その魔術を未来へ活かすために国は普通の学校とは違う機関を設けた。
それが魔術学園。魔術学園はフォルス大陸だけでなく3大陸全ての大陸に大小様々な数を構えられている。
魔術を使えるものがその力を高めるために特別なカリキュラムをこなし、将来への肥やしとしていく為のもの。
少し説明が長くなってしまったが、この2人は今日からその魔術学園に通う未来ある若人であった。
「まあ、ミストレア学園は魔術学園の中でも指折りの有名校だぜ? そこに入れただけでも奇跡ってもんじゃん。俺受験してないんだし」
少年…いや、そろそろ名前を出しておこう。
少年の名はリオード・アンタレス。
隣を歩いているフィルと呼ばれている少女も同じくアンタレスの名を持つ。
二卵性双生児というやつで、顔は似ていないがれっきとした双子の兄妹である。
この2人は数ある魔術学園の中でもフォルス大陸1との呼び声の高いミストレア学園に入学が決まっている。
このミストレア学園には1~3までの学年があり、各学年にはそれぞれA~Dまでのクラスが存在する。
だがここで疑問が生まれてくる。
先程フィルからはEクラスという発言が出た。
説明の通りならばEクラスというのは存在しない。
ならば何故その話が出るのか……。
それはEクラスというモノはA~Dというクラスに振り分けるには余りにも魔術のレベルが低すぎる……という結果のもと構成されるからである。
ちなみにフィルはAクラス。
つまり極端に言えば妹は現時点で最高のクラス、兄は最低のクラスということになるのである。
「筆記試験でも兄さんは手を抜いていましたね? 何で真面目にやらなかったのですか!」
「え~、だってめんどくさいじゃん? 手を抜いたっていっても点は平均越えてるから問題ねぇよ」
「そういう問題じゃありません! 兄さんの力なら学年主席も取れるのに、その力を何故出さなかったのかと聞いているのです!」
チラホラ周りに人がいる中、道端で口論する兄妹2人。
仲睦まじいといえばそうなのだが、温度差が凄まじい。今にも激昂しそうなフィルと、あくまで冷静なリオード。まあリオードは冷静というよりは気に止めていないだけなのだが。
「それに…兄さんは実技の面でも素晴らしい力をお持ちです! それは私が保証します!」
勢いよくリオードにつめより、真剣な目で見つめるフィル。
リオードは苦笑いを浮かべながらフィルと目線を合わせた。
「入試の成績学年トップの妹にそんな風に言ってもらえるのは嬉しいよ」
宥めるように話しかけるのだが、それでもフィルは納得しなかった。
怒りとも悲しみともどっちつかずの表情を浮かべ口を開いた。
「でも兄さんは……あの事件が無ければ……」
「フィル」
しかしそのフィルの言葉をリオードは途中で遮った。
フィルがハッとしたようにリオードを見上げると、先程までの柔らかい表情は別物で射抜くような鋭い目をしていた。
決して敵意を示しているわけではないが、先程とは余りにも違いすぎる冷たい目。
「あの事は口にするな」
「…はい」
まるで機械のような受け答えだったが、リオードはそれでも満足したようでフィルの頭を優しく撫でた。
「ホラ、入学式に遅れちまう。行こう」
そう言って歩き出したリオードの後をフィルは無言で追った。
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