第41話
『おぉっとー! リオード選手、珍しい服に身を包んでの登場です! そして簪にネックレスに指輪! 統一感の無いスタイルですね!』
「てめーさっきからうるせぇよ!!」
『おっとー! 私怒られてしまいました! 司会をやってきた中で初めての経験です!!』
司会者は俺の暴言に全く驚いた様子は無いくせに驚いたふりをする。
──ブゥゥゥゥゥゥゥ!!
そしてそれを聞いた周りからは盛大なブーイングが俺に向かってくる。
おーおー、見事なまでに悪役だこと。
「だぁぁぁ!! オメーらも静かに見やがれっつーの!!」
──ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!
おっと……ブーイング増しちゃったよ。
俺味方いねーじゃん。
「君は本当にバカだねぇ」
ベルゴールは俺がブーイングされてるのがよっぽど嬉しいのか、ニヤニヤと下卑た笑みを見せてくる。
あーあ、フィル達はどんな気持ちで見てるんだろうな。
◇
「おいおい、リオードめっちゃ嫌われてるじゃん」
あの後、観客席に移動した私達は兄さんが物凄いブーイングを受けているのを見ております。
ちなみにここにはエレノア先輩とリューネ先輩もいらっしゃるので、私達が文句を言われることはありません。
「これは、正に四面楚歌ですね」
「E組ってだけでバカにされるのにあんな態度とったらそうなるよ?」
グランは頭を抱えて、テトラはオドオドしながら辺りを見回します。
リリーは無言で中の様子を見ているだけ。
皆さんの方が兄さんより緊張していらっしゃいますね。
「この状況でどう戦うんだろうな〜」
あくまでリューネ先輩は楽しんでいるようですね。
ケラケラと笑っています。
「いやいや、戦うも何も流石に相手が悪いですよ! 学園9位はヤバすぎッス!」
シンさんは兄さんがやられることを想像しているのでしょう、落ち着かないですね。
まあそれはテトラ達も同じですか…。顔でわかりますね。明らかに負けると思っています。
「フィルは心配じゃ無いのですか?」
「私ですか?」
隣に座っているエレノア先輩が唐突に質問してきました。
それに対して私は首を傾げます。
「ええ、クラスメートはこんなにハラハラして、フィルだけは冷静に見てるだけのようですし」
いつの間に私の顔を見ていたのでしょうか。気付きませんでした。
「そうだぜ! フィルは心配じゃねえのかよ! 兄貴だろ?」
シンさんはそんなに兄さんが心配なのですね。そんなお友達がいて兄さんは幸せ者です。
おっと、そういう事ではありませんでしたね。
「大丈夫ですよ。兄さんは負けません。」
私は自信たっぷりにそう言います。
「フィルは何でそう思うの?」
テトラが怪訝そうな表情で私を見ます。
「皆さんは兄さんの強さを知らないのですよ。普段はあんな感じですから」
そう、いつもふざけているから勘違いされやすいんですよね。
「まあ、確かに彼が強いのはわかりますが、かと言ってランキング10位より上は教員レベルですよ? リオードにそこまでの力があると?」
「確かに、それに言っちゃ悪いが普段の行いというかどう見てもあいつはバカにしか見えないんだが……」
フフ……グランさんもシンさんもわかってませんね。
では、そんな皆さんに教え差し上げます。
「兄さんは天才ですよ。ほら、よく言うでしょう?“バカと天才は紙一重”と……」
◇
「エニックス!!」
あぁ~、誰か噂してんな~。
多分あいつらでしょうな。
「どうしたんだい? 恐怖で寒くなったとか?」
これでもかというくらい頻繁に嫌味を投げかけてくる。
「あーもーそれでいいっすわ」
相手すんのしんどい。
なんてことを思っていた時、またしても司会者が喋り出した。
『ここで面白い情報が入りました! なんでもリオード選手とキース選手は負けた方が勝った方の言うことをひとつ聞く……という賭けをしているそうです! これは面白くなってきたーー!!』
いや、何であんたが知ってんの?
あ、ベルゴールが言ったのね。ニヤニヤしてるからすぐわかるわ。
どうやっても俺を晒し者にしたいらしいわ。
『さて、ではそろそろ試合を始めましょうか! 審判は実践戦闘学のラント先生にお願いします』
司会者がそう言うと、俺達の間に1人の先生が現れた。
「では始めるぞ……」
低くトーンで放たれた声を聞いてベルゴールが構える。
それに対して俺は軽く腰を落とす。
「それでは……始めっ!!」
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