第29話 いつも通りの朝2
4人の先輩達をからかうのは非常に面白いものだと認識したところで俺達6人は学校に着いた。
校門を潜った途端に突き刺さる多くの視線。
そして聞こえてくる話し声。
(ファウスト先輩だ!)
(ミラ先輩もいるよ! やっぱカッコいいね~)
(リューネ先輩とエレノア先輩……今日も綺麗だ……)
(あの1年生の娘も可愛いよな)
(あの長髪のやつって確か落ちこぼれクラスだろ? 何であんな奴が一緒に歩けるんだよ)
俺だけ人気無さすぎない?
ちなみに俺が何故周りの奴らの話していることが分かるかというと、耳がいいので少しは聞こえる……後は唇読んだ。
「何か……物凄い視線ですね?」
怜 フィルはそういうことには慣れていないようで……どことなく落ち着かないように見える。
その点4人は慣れているんでしょうね、堂々としてますわ。
「っつーか俺だけ場違いじゃないッスか?」
俺はファウスト先輩にそう尋ねる。
「場違いってどこが?」
「いや、学校でも有名な先輩4人にフィルは新入生の中でも有名らしいですし」
嫉妬じゃないく、純粋にそう思う。
「そんな事ないぜ? リオードだって私らのクラスの人達から結構人気なんだぞ?」
「マジッスか!? こんな落ちこぼれクラスの俺なのに!?」
リューネ先輩の話を聞いて柄にもなくテンションが上がってしまった。
「私たちのクラスにそんな愚か者はいません。だからこうして私たちはあなたと一緒にいるのです」
そう言ってフォローする言葉をを俺に飛ばしてくれるエレノア先輩。
信じちゃうよ!?
俺ピュアだから信じちゃうよ!?
「つか落ち着け、耳が痛い」
何故か顔をしかめるミラ先輩。
「え?」
「いや、口に出てるから」
おっと……ソイツは失礼しましたぜ。
しかし俺が歳上に人気があるとは……これからは先輩ハンターリオちゃんと名乗ろう!
そうやってテンションが上がっていた俺だがふいに寒さを感じた。
あれおかしいな……もうすぐ夏だから寒いなんて……。
「……ってフィルさん!?」
いつの間にかフィルさんからとてつもない冷気が溢れ出れるじゃありませんか。
「兄さんは歳上の女性がお好みなのですね。私みたいな子供では興味すら沸かないと……」
「いや、ちょ……フィルさん落ち着いてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
10秒後……立派な氷像が完成した。
◇
「ハッ……ハッ……ハルサーエイカーッ!!!」
「ど、どうしたの?」
「いや、くしゃみが出た」
「今のくしゃみだったの!?」
氷像になった俺はあの後ファウスト先輩に助けてもらい死なずにすんだ。
いや~自身が氷付けってあんまり体験できないよね。
ちなみにフィルだが感情の昂りによる魔力干渉ということで、お咎めは無かった。
まあそこらへんは風紀委員の2人に感謝ですわ。
「まー話聞く限りではお前が悪いところはないよな」
両手を頭の後ろで組んでいるシンは笑いながらそう言った。
「だろ? これで通算75回目の氷付けだわ」
「かなり多いんですね」
全くだ。何をあんなに昂る事があるんだか。
「リオードくんって実はドM?」
「失礼な……。俺はどっちでもいけるぞ?」
「それはそれでどーなんだ?」
フゥ……これだから庶民は。
俺はやれやれと肩をすくめた。
「でもいいよな~、朝からファウスト先輩達と登校ってさ~」
そう言ってシンは俺をジト目で見てくる。
「そんなに羨ましいことか?」
「えー、だってあの人達は俺らに普通に接してくれるじゃん」
「あ、わかる!他の人達って私達のことバカにしてるんだもん!」
テトラはシンの言葉を肯定しながら不満を吐き出す。
「それはありますね……正直あの態度は腹が立ちます」
グランもそれに賛同する。発言こそしないがリリーも同じようだった。
「ったくやってられんわ。俺らが特別扱いされてるってもこんなんじゃな……普通のクラスにいた方がまだ良かったわ」
おーおー、朝から不満だらけね君達。
まあ今朝みたいな事もありますし、俺だって気持ちいいことは無いが。
いや、待てよ……。あの視線を快感に変えれば学校生活だって有意義なものに……。
「ゲヘヘ……」
「リオードくん……顔が気持ち悪いよ?」
テトラが若干引いているようだが……何故だ?
「でもそれが気持ちいぃぃぃぃぃ!!」
「うるせぇ!」
「ぶふほふぁっ!!」
俺が反応できない程の回し蹴りとは……やるなシン……。
ここで俺の意識は途切れた……。
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