第15話 Eクラスの存在理由2
「理由……?」
テトラが小さくそう呟いた。
「理由も何も落ちこぼれって事じゃねーの?」
特に何も感じることがなく、俺は椅子の背に体重をかけながら聞いてみる。
「でもそれじゃ納得いってないだろ?」
先生がそう尋ねるとシン、テトラ、グランの3人が頷いた。
「まあそれも兼ねて説明しよう」
先生はそう言って教壇から俺ら5人の近くまで歩み寄る。
「ここ数十年になってからの話なんだが、魔術師に求められているモノってわかるか? グラン」
「万能性……ですか?」
先生に指名されたグランは少し思案し、疑問を返すように答える。
「そーだ、よく知ってるな」
先生はグランの答えに満足そうに頷く。
「今言ってくれたのに関係して、魔術師は大きく2つのタイプに分けられる。まずは……」
宮本はそこで一旦説明を止め、チョークを持つと黒板に文字を書き始める。
「1つがグランが言ってくれた万能性のある魔術師。いわゆる
そして、と続けて更に黒板に書き加える。
「もう1つが
先生は苦笑いを浮かべながらそう話し、俺らはその説明を黙って聞いている。
「それはここミストレア学園も例外ではない……だが、かといってスペシャリストは貴重だという考えもある」
先生はそう言ってスペシャリストの文字を丸で囲む。
「だからこそこのEクラスが存在する。」
「「「!!!!」」」
先生のその言葉は俺ら5人を驚愕させるのには充分だった。
「ってことは俺達は……」
「そ、お前らはスペシャリストだ」
シンの言葉の先を先生は満面の笑みで答えた。
その表情はお前達は落ちこぼれじゃない……優秀な生徒なんだ、と言っているようにも感じた。
「ついでに言うと過去にもEクラスは存在した。俺もそうだったしな」
「え……」
「俺はここの生徒だったんだ。言ってなかったか?」
「初耳ッスよ」
おどけた口調で言う先生をシンが呆れたようにたしなめた。
「話を戻すぞ」
コホン……とわざとらしい咳払いをして先生は続ける。
「俺が学生の頃はEクラスの生徒は10人以上いた。全員がスペシャリスト候補だっつーことでな」
そう言った先生の表情はどこか何かを懐かしむような感じがした。
「んじゃ、その時代はスペシャリストってのは多かったのか」
「そういうわけでもなかったな」
俺の言葉を先生は否定する。
どうやら違うらしい。
「元々数が少ない上にその分野に秀でるというのは誰にも出来ることじゃない。現にEクラス在籍者の合計は100人くらいだったが、大成したのは10人もいなかった」
魔術には様々な系統が存在する。
例えば攻撃魔術を得意とするが防御魔術はあまり得意ではなく、補助魔術を多少使えるのならジェネラリストに分類される。攻撃魔術、補助魔術は基本不得意だがその分防御魔術に秀でているならそれはスペシャリストといえる。
細かく言っていけばジェネラリストとスペシャリストの境界は曖昧なものである。それを選ぶのが大変なため、昔は人を多く選抜していたらしい。
「つまりお前らはスペシャリストの中でも抜きん出た潜在能力を持っているからこそ、このクラスに選ばれた」
その言葉はみんなの顔を輝かせるのには充分だった。隣を見ると、あの無表情なリリネットも例外ではなかった。
「んで、元の話に戻るわけだがスペシャリストのお前らがジェネラリストと同じカリキュラムをこなすよりは、個人的に鍛えることを重点的にした方がいいというわけで決められていないってことだ。簡単に言えばほぼ自習だな~。あーめんどくせ……」
いいことを言っていたのだが、先生として見直していたのだが最後は非常に台無しだった。
しかし俺ら5人は特に何も言うことは無かったし、先生の事を少しなりとも理解できた。
「ベルさん」
唐突に手を挙げる俺。
ある事が頭を過った。
「おう、何だリオード」
どうやら俺ら生徒のことは名前で呼ぶことにしたようだ。さっきのグランもそうだったしな。つーわけで俺も愛称で呼ぶことにした。
「ってことは今から早速ですよね?」
俺はニヤリ……と不敵な笑みを浮かべてそう言った。
そしてベルさんもまた不敵な笑みを浮かべて口を開いた。
「お前ら全員着替えて第6修練室に集合だ」
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