第14話 Eクラスの存在理由
5人……主に俺が騒いでいるとEクラスの扉が勢いよく開いた。
「お前ら外まで聞こえてんぞ~。というかチャイム鳴ったの気づかなかったのか?」
特に怒っているわけでもないその声の主は、Eクラスの担任であるベルド先生のもの。
昨日着ていた服とは違い、今日は黒のライダースーツの様なシャツの上からカーキ色のベスト、黒のズボンにサンダルと比較的ラフ気味な格好だった。
「お前ら全員いるな~?」
「いやいや、5人だけなんで見ればわかるでしょ」
「バカ野郎、全員が本物だといつから錯覚していた」
「なん……だと?」
「ホラ、証拠にお前のその体を見てみろ。」
「やられた……これが噂の……」
「アンタら朝から何言っちゃってんの!?」
意味不明な会話を繰り広げる俺と先生にシンが慌ててつっこんでくる。
ちなみに体におかしな所はひとつもない。
「ってなわけで出席とるぞ~。呼ばれたら元気よく返事しろよ~」
「子どもですか……」
グランの呟きは小さく、先生には聞こえていないようだ。
「シン・ワイルドシャウト」
「だから違うから!」
「テトラ・シルベス」
「はい」
「グラン・ビスク」
「はい」
「リリネット・ツィー」
「………」
廊下側の方から出席確認を取っている。
まあシンだけいじられているのは馴染んでる証拠だな。
「何で俺だけあだ名なの!? てか、ツィーはシカトだしっ!!」
「リオード・アンタレス」
「ハイッ!! 元気でぇぇぇぇぇっす!!」
「シカトっ!? てか、うるせぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「お、元気がいいな? 何かいいことあったのか?」
「いやそんりゃもう……昨日妹と激しかったんで眠くてハイテンションですわ」
嘘偽りなくそう告げると、シンが更に突っ込んでくる。
「どうゆうことっ!? お前らあれか!? 禁断の扉開いたってやつか!?」
「おいおい、そんな思考が生まれるなんて……よっぽど思春期真っ盛りなんだな金太郎」
「誰が金太郎だっ!! あれか!? まさかりと真っ盛りかけてんのかっ!?」
「し、シンくんスゴい……」
「えぇ、全てに的確にツッコミをいれるとは……」
グランとテトラが隣でヒソヒソとそんな話をしていたがシンには聞こえていないようだ。
ちなみに金太郎とはローランドの東に位置する昔話の逸話に出てくるデカい斧を扱う人物だ。
「んじゃ、全員いるとわかったところで……今日からいよいよ授業が始まるわけだが、ここでお前らに伝えることがある」
先生は出席状況を取り出したバンドツールに打ち込むと、真面目な表情で切り出した。
俺たちはその顔を見て各々姿勢を正す。
「まずはお前ら自分のバンドツールに配られたミストレア学園のアプリを開け」
そう言われた俺たちは自身のバンドツールを取り出して言われた通りに操作し、ミストレア学園のアプリを開く。
そこにはミストレア学園の学舎が掲載された、指紋認証式のログインページだった。
生徒はそれぞれ初日に指紋認証をして、自分の個人ページを作る。
そうすることにより一部を除いて他からはアクセスすることが出来なくなり、安全に利用することができる仕組みになる。
また学生証の代わりになったりと、多機能でありこういう面でも時代の進化を思わせる。
「開いたか? んじゃ、今度は個人というかクラス毎のカリキュラムの欄を探して開いてくれ」
俺は指示に従い自分らのクラス……つまりEクラスのカリキュラムを探して開く。
(昨日見た通り真っ白だな)
浮き出たモニターを見ながら短く息を吐く。
それは昨日調べてわかったときから何も変わっていなかった。それ同様に他の4人の画面も同じく真っ白だった。
何故先生はこんなことをさせるのだろうか?
俺以外の4人も内心そう思っているだろう。
「これを見た通りお前らにはカリキュラムが一切組まれていない。つまりやる授業が無いということだ」
先生はそう言いながらバンドツールを付けている腕を下げる。
「どういう意味ですか?」
少々面食らったようではあるが、持ち直したグランが代表して質問をする。
「どうもクソもそのまんまの意味だ」
しかし先生はそれにアッサリと返事をする。それも俺らにわざと疑問を残させるように。
「じ、じゃあ、私達は何のために……」
「そ、そうだよ! 入学は出来たのに授業出来ないっておかしいッスよ!!」
「まーまー落ち着け」
テトラとシンが慌てて反論し始めたのを穏やかに宥め手で制する。
そして再び静まった室内で先生は口を開いた。
「お前らEクラスが存在する理由は知ってるか?」
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