第30話 擬似空間体験装置
その後の学校生活のことを語るのは止めておく。特別な事があったわけでもないので。
だから過去の事を振り返るのは止めて今を語ろうと思う。
既に授業は終わりホームルームなどを全て終わらせた俺がいるのは家……ではない。
クラスメートの4人とプラスフィルで一緒に校内を歩いているのである。
何故真っ直ぐ家に帰らないのかというと発端はEクラス1のバカであるシンの発言からである。
「もっと強くなりてぇ!」
奴曰く早くファウスト先輩やミラ先輩のようになりたいらしいが……。
強さはともかくあの先輩らのどこがそんなにいいのか……とも思ったが追求するのは止めておこう。
話は反れたがシンが言ったことにみんなが同意して自主練をすることになり、何故か俺まで巻き込まれた。
「ハァ……何で俺まで」
「まあまあ兄さんそんなに肩を落とさないで下さいよ」
俺の隣を歩くフィルは苦笑いを浮かべていた。
「リオード、僕達が認められるには強くなるしかないのです。貴方程の強さは僕達にはまだありません」
いや、そんな……俺なんて糞でございますよ。
でもまあ付き合ってやりますか。
コイツらは友達だしな。それに俺も自主練くらいしないと体が鈍るし。
「確か今日は疑似空間体験装置のあるルームに行くんだよね?」
「らしいな」
この2週間でリリーは少しは話すようになった。と言ってもほんの相槌程度だが……。
ちなみにテトラがさっき言った疑似空間体験装置というやつは、特殊な機械を用いて使用者をこことは違う空間を体験させる装置の事である。
カプセル型の全身を包み込むサイズの機械だ。
実際に体を動かすわけではないが、味覚や触角など五感は働く上に様々な地形、天候、状況、人数などを設定できるので経験を積むには持ってこいの場所である。
今日はその装置が設置されてる部屋を借りれたのでそこでやろうってことだ。
普通の修練室と違って人気があるため予約するのは大変だが、そこは我らがクラスメートの努力のおかげだろうな。
実は疑似空間体験装置に触れるのは初めてなのでテンションは上がってしまっている俺だった。
疑似空間体験装置のある部屋……通称フィアマットルームの前についた俺は意気揚々とドアを開いた。
「すっげぇ……」
中に入った俺の第一声はそれしか出てこなかった。
広さはそこまで無いが設置された6つの椅子。これが疑似空間体験装置、フィアマットである。
全体を白でデザインされた繭のような綺麗なフォルム、ガラスの蓋を開き中に座る……それだけでこことは違う空間を体験することが出来る。
それを若い世代から戦闘経験を積ませるためにも使おうって事になって今、学園でも普及しているのだ。
話は反れたがこの機械で俺らは夢を体験するわけだ。
つまり、それがどういうことかっていうと…
「むっちゃかっけぇぇぇぇ!!」
思わず子供のように叫んでしまう俺だった。
「全く兄さんったら……」
口元に手を当ててクスクス笑うフィル。
いや、あんただってこれ使うの初めてでしょうに。
「私は授業で何度か……」
「なぬ!?」
いつの間にかフィルは俺より先に…。
いや、でもクラスメートは初めてなはず!
「俺も何回かあるぞ」
「僕もです」
「私も」
「……」
なん……だと!?
リリーも無言で頷いたってことは……俺1人か……。
ハハッ、俺だけ先行く時代に取り残されてるじゃねぇか。
「ちょっ! リオード止めろっ!!」
「うるせぇ! こんな機械1発でぶっ壊してやるわ!」
「兄さんダメです!」
「止めるなぁぁっ! コイツが悪いんだ! 俺は新しいものに出会う喜びを体験したかっただけなのにっ!」
「意味のわからないことを言わないでください! あ、どこから持ってきたんですかその鉄パイプっ!」
「離せぇ! 離せよ! 俺は全てをぶち壊してやるんだぁぁぁ!!」
「り、リオードくん、これ壊したら弁償だよ!?」
「関係あるかぁぁっ!! コイツを全部壊して俺も死ぬんだぁぁぁぁっ!!!」
「ハァ……」
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