第34話 


「あんだよ?」


俺の声が煩かったのか耳を塞ぐ仕草を見せる。


「アンタ何言ってんの!? 何でそんな場でバトらないといけないわけ!? バカなの!? 死ぬの!?」

「だぁぁ! 落ち着けって!」


胸ぐらを掴んで思いっきりファウスト先輩を揺さぶってやった。


「ハッハッハ! ニュート、君はバカなのかい? コイツが僕に、この僕に勝てるわけがないじゃないか!」


ファウスト先輩の言葉を聞いたベルゴールは、さっきまでとうって変わって明るくなっていた。


「いや、ファウスト先輩……ソイツはちょっと条件が……」


シンが控えめに手をあげて発言する。


「だってここは魔術学園だぜ? 決着つけるなら戦った方がはぇーだろ」

「そ、それでも戦うってのは……」


テトラも戦うことに反対のようだ。

というかみんなそれはいくらなんでも……って感じの顔をしてやがる。


フィルを除いて……だが。


「リオードはどこが不満なんだよ」

「ランキング戦ってどーせ人前で戦うんだろ? んな大勢の場でなんてやりたくねーよ」


これ十割MAXの本音な。何が楽しくて観衆共がいるところで戦わないといけないんだか。


「おいおい、減らず口も大概にしなよ? 君の言葉を聞いているとまるで僕と戦うことは構わないみたいじゃないか」


ベルゴールは肩をすくめながらここぞとばかりに嫌味を言ってくる。


「そう言ってんのがわからねえのか? めでたい頭だわ」


というわけでこちらも嫌味で返してやった。

すると、どうだろう。あれよあれよといつの間にベルゴールの顔が歪んでいくではないか。


「貴様……」

「だから止めろってんだろうが」


再度一触即発な雰囲気になった俺らの間に、またしてもタイミングよく入り込んでくる。


「ベルゴールは別に構わないんだろ? ならいいじゃねえか」

「……チッ!」


ファウスト先輩の言葉に大きく舌打ちをする。


「リオードも細かいことは気にすんなよ。どのみちお前らやりあわねえと気がすまんだろ」

「いや、おい待て……アンタ俺の意見……」

「ハイ決まりーっ! とりあえず決着はランキング戦でつけるってことで!」


いや、だから聞けって……。

しかしこのクソ会長は人の話を聞くことなく勝手に話を進めていった。


テメーさっきまでのシリアスを返せ……。





所変わってここは生徒会室。

上手く(無理矢理)事を治めたファウスト先輩に俺とフィルは連れてこられた。

最後までシン達は心配していたが、どうにかこうにか言いくるめて帰ってもらった。


ついでに言うとベルゴールは


「この僕に挑んだ事を後悔するがいいよ!」


と捨て台詞を残して女をはべらかしながら去っていった。

もういっそのこと誰かアイツ消してくんねーかな。


まあ終わったことは仕方ない。悔やんだところで生徒会長がファウスト先輩…もうファウストでいいや。ファウストなのでどうしようもないからな。


というか。


「何故にミラ先輩とリューネ先輩もここにいるんすか」


ここ生徒会室だよね?

アンタら風紀委員でしょうが。


「細かいことは気にするな」


いや、気にするわ。


「ここは生徒会と風紀委員で仕切ってるようなもんだからな。よく集まって話し合うんだ。まっ、今日は特に何もねーがな」


んじゃ、ただ集まっただけじゃないっすか。

そう思ったが何となく口にするのは止めておいた。


「あの……何故私達は呼ばれたのでしょうか?」


生徒会室という場に畏縮してるのか、遠慮がちに声をあげるフィル。


「ん~まぁ特に意味はないがとりあえず今後の事を教えておこうかなと思ってな!」


椅子ではなく、机の上に座るファウスト。

ホント何でコイツ生徒会長になれたの。


「ならさっさと教えやがれ。俺は帰りたいんです」


俺はフィルと違って礼儀や遠慮というものを知らないのでズケズケ言いますよ。


「おま……何かくだけすぎだろ……まあいいけど」


少し驚いた様子を見せるが、何だかんだでそう言うファウストはいい先輩なんだと思った。少しな。


「まずは命令……とまではいかないな、お願いだ。絶対にベルゴールに勝て」


さらっと重大なお願いをする。


「それは絶対だな~。アイツ多少実力はあるけど、性格は最悪だからさ~」


よっぽど評判が悪いというのを教えてくれるくらいリューネ先輩の顔は不満そうだった。


「わかります。大した実力も無いくせに強いですってオーラ出してるのがムカつきます」


リューネ先輩の言葉にエレノア先輩は賛同しているが、あの人って一応学園9位じゃねえの?


それを大した実力じゃないって……。

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