第31話 学園9位
「騒々しいね~」
俺達が騒いでいるところに何やら気の抜けたような声が響いた。
声のした方向……つまり入り口に目を向けると、茶髪の毛先をカールさせた無駄にイケメンな男とその男にピッタリと引っ付く3人の女が立っていた。
ちなみに4人共3年生である。
何このハーレム野郎。
「もしかして……ベルゴール先輩?」
「お、僕を知ってるのかい? 流石は僕だね」
控えめに尋ねるシンと、それを聞いて嬉しそうに自分の髪をかきあげる男。
この人めっさナルストシーやん。
「フィル、このナルシスト誰?」
隣のフィルに周りには聞こえない程の声で聞く。
「この人は確か学内ランキング9位のキース・ベルゴール先輩ですね。ランキング一桁に食い込むだけあって実力は高いみたいですよ」
ナルシスト……という言葉に苦笑いしながらもしっかりと答えてくれた。
ランキング9位とはこれまたスゴい人が来たもんだ。
「ここのフィアマットルームは君達が使うのかい?」
ナルシストなベルゴール先輩は俺達……というかテトラを見て尋ねた。
この人……ナルシストな上に女好きだわ。
「は、ハイ……」
その視線を感じ取ったのか、若干引きながらテトラは答えていた。
「そうか、仕方ないね。今日は他のところでやろうか?」
「えー!」
「ここは使わないんですか、キース様~」
「先客がいるからしょうがないよ。別にここじゃなくても僕の優雅な魔術は見せられるからね」
な ん な の コ イ ツ ら
ナルシストなこの男もそうだけど、それに様付けとか周りも中々におかしいわ。
多国籍にナルシストとかこの魔術学園ぱないっす。
「それじゃ、僕達は失礼する……おや?」
ナルシストなベル……もうナルゴールでいいや。
カッコつけて去ろうとしたナルゴールは視線を一点に向けた。
その先は俺の隣……フィルだった。
「君、名前は?」
「は、ハイ……フィル・アンタレスと言います」
まさか聞かれると思わなかったフィルは戸惑いながら答える。
「アンタレス……あぁ、今年の新入生代表の子か。道理で見覚えがあると思ったよ」
ナルゴールはフィルを見て妖しく笑うと何かを考え込むように動きを止める。
そして、何を思い付いたのかもう一度そのイケメンフェイスに笑みを灯した。
「君、僕の女にならない?」
「え?」
「は?」
フィルと俺は声を漏らした。
「君みたいな美しい女性は僕の様な美しい男としか釣り合わないよ」
まるで詩を朗読するかの如く寒気のする台詞をさらっと言いきったナルゴール。
言い忘れたけどコイツの目青いんだよな。やっぱイケメンだわ。
言ってることキモいけど。
「は、はぁ……」
ホラ、フィルも引いてんじゃねえか。っつーか俺ら全員引いてるわ。
「怯えなくていいんだよ? 僕と一緒にいるだけで君の美しさは更に際立つよ。この娘達のようにね」
え、何コイツ。頭にキモワード辞典でも装備してんの?
チキンスキンがスタンダップなんですけど。
「に、兄さん……」
フィルが怯えながら俺の袖を掴む。
これは兄貴としてビシッと言わないとな。
「ちょっと待てコラ」
俺はフィルを庇うようにナルゴールと前に立つ。
「何だ君は?」
ナルゴールは怪訝そうに俺を見る。
「俺はコイツの兄貴、リオード・アンタレスだ。ウチの妹に手を出すのは止めてくんねーかな。ベルゴール先輩よぉ」
少しだけドスのきいた声を発してナルゴールを睨む。
「兄? 君がこの娘の? 冗談は止してくれよ。全然似てないじゃないか」
「二卵性の双子なんだよ。何だったら理事長から証明書持ってきてやろうか?」
双子の説明何回すればいーんだコラ。
「妹と違って君は躾がなってないようだね。というか僕は男には興味ないんだが」
「敬う価値のあるやつには礼儀正しくするわ。俺もそっちの趣味はねーよ」
ファウスト先輩とミラ先輩は例外だ。あの人達は尊敬するに値するが敬語を使わないだけよ。
「一々ムカつくね君は………ん? 何だ、君は噂のEクラスの生徒じゃないか」
何故顔を見ただけでわかるほど噂が広まってるかは知らんが、それがどうしたってんだ。
「フッ……全然礼儀がなってないと思ったら君は落ちこぼれクラスか」
「だから何だってんだ」
デジャヴを感じるやり取りだなと思ったら前にスピンロッドさんとやり合った時と同じじゃねえか。
何この暴言のリサイクル。
「君の優秀な妹以外は全員落ちこぼれか。相手にするのもバカバカしいよ」
鼻につく嫌味100%な言葉を息をするようナルゴールは吐き出した。
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