第38話


「相変わらず仲良いな~お前らは」


 聞き覚えのある声が耳に入ってきた。

 だが、俺は無視した。


「うぉい!!」


 しかしうるさかったので仕方なく俺は後ろを振り向いた。


 そこには白シャツに黒いベスト、カーキ色のパンツに戦闘用のブーツを履いたファウストと、黒のライダースーツのようなシャツに黒のパンツ、黒のブーツを履いた黒ずくめのミラだった。


「何だ、ファウストにミラか」

「おい、何だとは失礼だな」

「生意気になったな」

「今日はお二人とも出場されるんですね?」

「おう、何故か俺ら2人とランキング3位の奴は強制出場だ」


 全くめんどくせぇな……と悪態をつくファウスト。仮にも生徒会長そんなこと言ったらダメだろ。


「流石ランキングTOP2は違いますね! スゴイッス!」


 目を輝かせて喋るシン、余程この2人への憧れが強いみたいだ。

 そんな大した奴らじゃねえよ?


「お前に言われたくないな」


 ちょ、ミラさん心を読むのは……。


「皆さん集まっていますね」


 優しげなその声の主は制服姿のエレノア先輩。隣にはリューネ先輩もいる。


 2人とも袋を手にぶら下げていた。


「はいファウスト、オレンジジュースです」

「お、サンキュー」

「ミラはコーヒー!」

「悪いな」


 何かムカつくまでにラブラブなやり取りを見せつける2組のカップル。

 もつ清々しいッスわ。


「みんなも来てると思ったからその分も買ってきてるぞ〜」


 そう言いながら袋を広げて見せてくれるリューネ先輩。

 アネゴ流石ッス!!


「リオードくんにはこれ、納豆サイダー」

「何すかそれっ!?」


 笑顔のリューネ先輩の手には茶色と青のコントラストが眩しい缶。

 いや、これ無茶苦茶体に悪そうなんですが……。


「納豆のネバネバ感とサイダーのシュワシュワ感が癖になる一本だよ?」


 いやいや、飲み物でネバネバって……完全にハズレ商品じゃねえか!!


「リューネは味オンチだからな」


 そう言いながら我関せずとコーヒーを飲んでるミラちょっと来いや。

 お前の女だろうが。


「いらない……か?」

「有難くいただきます」


 悲しそうな目をされたら飲むしかないじゃない。

 だって俺の為に選んだくれたんだもの!


 俺は受け取った納豆サイダーを恐る恐る飲んでみる。


「気分悪い……」

「大丈夫ですか?」


 今朝食べたスクランブルエッグをリバースしそうになっている俺の背中をフィルが摩ってくれる。


 何だよあれ……。人間界にある飲み物じゃねえよ……。飲んだ瞬間走馬灯だよ……。


「えー美味しいと思うけどな~」


 そう言って不思議そうに納豆サイダーを見つめるリューネ先輩。

 もう貴女がランキングTOPだよ……。


「相変わらず品が無いね君達は」


 鼻につくような嫌味な声。

 一瞬で誰だかわかってしまったが、俺は仕方なく振り向く。


 そこにはやはりナルシストのベルゴールがこれまた取り巻きの女もご一緒に降臨なされた。

 まるでおとぎ話に出てくる騎士を思わせるその格好は正に時代遅れ。


 というか、コイツホントナルシストだわ。もう最上級レベルだからナルシストストだよね。


「よう、ベルゴール。調子はどうだ?」

「もちろん絶好調だよ。今なら君にも勝てるかもね」


 ファウストの挨拶に要らん台詞まで加えるベルゴール。


「いや、瞬殺されるだろ」


 俺は缶を咥えたままリューネ先輩がそう呟いたのを聞き逃さなかった。


「どうだい、僕にやられる覚悟は出来たかい?」


 ドヤ顔とウザったい仕草で、髪をかきあげながら俺を見るベルゴールはマジでウザい。


 何回ウザいと言わせれば気が済むのか。

 フィル達はガチで睨みまくりじゃねえか。


「僕ちゃんにやられる覚悟はまだ出来てないでちゅ~」

「なっ!」

「プッ…」


 上からバカにした口調の俺、驚いたベルゴール、吹き出したリューネ先輩です。


「ブルグ! 何がおかしい!!」

「ププッ……。い、いや何でも……」


 どうみても笑いを堪えてるのが丸わかりなリューネ先輩。

 まあファウストにミラも笑ってるんだけどね。


「リオード・アンタレス……だったね。君は人をバカにするのが得意なようだね」


 一見冷静を装っているように見えるが、怒りを含んでるのは明らか。だって肩がプルプル震えてるんだもの。


「やだなぁ。美しいアンタをバカになんてしてねぇよ」

「なら褒めているとでもいうのかい?」

「どうやったらそんなポジティブに考えられるんだよ。バカにしてるに決まってるだろ」

「貴様っ……!」

「ブハッ……」

「アッハッハッハッハッ!」


 ついに耐えきれなくなったのかファウストが吹き出した。

 リューネ先輩は遠慮せずに笑っているが。


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