第42話
試合開始と共にベルゴールが左手の指輪を外す。
「出でよ、ムーンライト・シャイニング!」
「だっさ!!」
恐らくMWの名前なんだろうがめっちゃだせー!
もちっとマシな名前があんだろうよ。
ベルゴールの右手には両刃の剣が握られていた。
「君みたいな人には僕のムーンライト・シャイニングの良さはわかんないよ」
いや、わかりたくもねーよ。
「いざ……参る!」
「まいんな!!」
しかし俺の叫び虚しくベルゴールは力強く地面を蹴っていた。
一瞬で俺との距離を詰め、横薙ぎにむ、ムーンライト・シャイニングを振るう。
「おっと」
そのままでは斬られてしまうので、後ろに飛びながらかわした。
「ほう、反応は中々のようだね」
「そりゃどーも」
形ばかりのお礼を言っている間にベルゴールは次の攻撃へと移っていた。
ヤベッ、ボーッとしてたから見失ったよ。
しかしそこで慌てる俺じゃない。
前、左、右……いない……ならば。
「背後か!」
咄嗟に頭を沈める。
その瞬間に奴の剣が俺の上を通り過ぎる。
「まだだよ」
袈裟斬り、突き、横薙ぎと様々な方向から刃が迫ってくる。
まあ普通にかわすけどね。
「ホラホラホラ! 避けてばっかりでは勝てないよ~!!」
笑いながら剣を振る様は正に変人!
しかしまあ、俺も奴のそんな顔を見たくは無いので。
「なめんな……よっ!」
腹部を狙って蹴りを放つ。
「おっと」
俺の鉄下駄と奴の剣がぶつかり合い、軽く火花が散る。
「中々いい蹴りじゃないか。けど、丸腰で僕に勝てるとでも?」
鍔迫り合い……俺が足だからそうは言わないか。
お互いに押しあったままその場から動かない。
「んじゃ、こんなよはどうよ?」
俺は自由に動かせる腕で袖口から1枚の魔符を取り出す。
「ほれ、“爆”」
「チッ!」
ベルゴールが舌打ちをし、後ろに飛んだ刹那魔符が爆発する。
その勢いを利用して俺も後ろへと飛んだ。
煙が徐々に晴れていき、俺はベルゴールの姿を確認する。
「何だ無事だったか」
「君のほうこそ中々厄介な戦い方だね」
体勢を立て直した俺らは軽口を叩き合う。
『おーっと! 何だ今の攻防は!! リオード選手、キース選手に引けを取りません!!』
「フッ……褒められて良かったじゃないか」
実況を聞いたベルゴールは嫌味を込めてそう言った。
「オメーに言われても嬉しくないけどな」
「そうかい……まぁ、僕がこれで終わりと思わないでくれよ?」
ベルゴールがそう言った瞬間、奴の剣が金色に光り出す。
「さて、楽しませてくれよ」
ニヤリ……と笑って剣を振るうと、金色と光がそのまま斬撃となって俺に向かってくる。
俺は横に体を反らしてそれをかわす。
「どれだけ避けきれるかな」
段々と増えていく金色の斬撃。
これを全部避けるのはちーっと骨が折れるな。
そう判断した俺は和服の懐から脇差サイズの刀を取り出す。
それを鞘から抜き放ち、迫ってくる斬撃を見据える。
そして自分に向かってきた方から軽く脇差を当てて軌道をズラす。
「なっ!?」
これにはベルゴールも驚いたみたいだ。
まあ斬撃の軌道は直線的だからそれをズラすだけで簡単に反れるんだよ。
これをチャンスと見た俺は、迫り来る斬撃をいなしながら徐々にベルゴールとの距離を詰める。
「ナメるなよ!!」
ベルゴールの動きが加速し、斬撃の数はどんどん増えていく。
しかしここで俺が止まればヤバい事になるので、次々と飛んでくる斬撃を迎え撃つ。
そしてベルゴールとの距離が俺の射程圏内に入ったところで脇差を大きく振りかぶる。
貰ったぜぇぇぇぇ!!
「チッ!」
このままではやられると判断したのか、大きく舌打ちをしたベルゴールは剣を思い切り地面に突き刺す。
すると地面からさっきよりは細い針状の光が無数に俺に向かってきた。
「おまっ!そんなの聞いてねえよっ!!」
このまま突っ込んだら蜂の巣なので慌てて回避を試みる。
まずは地面を強く蹴り、後ろに飛ぶ。
そして迫ってくる金色の針は脇差を振るって弾き飛ばす。
激しい金属音が鼓膜を打つがそんなことに構わず腕を動かし続け、何とか着地した。
しかし全てを避けるのは無理だったので、俺の顔や体にかすり傷がいくつも出来てしまった。
「あっぶねー」
何とか致命傷を避けた俺はホッと胸を撫で下ろした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます