概要
業務上横領で逮捕された建設会社経理部長。
強制猥褻で逮捕された都議会議員。
二人のところには同じ文面の手紙が届いていた。
そしてその手紙が三人目の手元に届く。
彼は美術商。警察の世話になるようなことは何一つしていない。
一見、何の接点も無いように見える三人には、ある共通の秘密があった。
美女と野獣の同級生刑事コンビが怪文書の謎に挑む。
『フレンチクルーラー殺人事件』に続く、島崎・川畑シリーズ第2弾。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!これはミステリーをスパイスとした「愛」の物語です
全編を通じて感じたのは様々な「愛」。
そこには相手を思うがゆえの辛さ、苦しさも伴っています。
冒頭の第一話で示された手紙の一節だけで、読み手は作者の世界へ引き込まれるでしょう。
この手紙は一体なんなのだろう……。
タイトルとの関連は?
ある事件が起こり、登場人物たちのつながりが少しずつ明らかになるにつれ、手紙の持つ意味も鮮明になっていきます。
ミステリーとして謎解きの要素は薄いものの、ホワイダニットと呼ばれる「なぜ犯行をおこなったのか」という動機にスポットを当てて物語は進みます。ときおり挟まれる女性主人公の一人称視点での語りも、読み手の心情をぐっと近づける効果があると感じま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一つのタイミングの狂いから変わる人生とは。
つくづく人は誰かの人生の一部しか見ていないんだなと思う。
それはまるで額縁に飾られた一枚の絵のように、ほんの一面なんだ。
そんなジグソーパズルのような切れ端から、その人がどんな人かを想像する。
人生の裏側に何が並んでいるのかと。
ミステリーは謎解きばかりではなく、動機の解明に魅力が現れる。
そしてそんな作品は、人物設定が極めてしっかりしているんだな。
私は豪華なソファーに座ってブランデーを舐めながら読んだ。(イメージです)
「ふっ、重厚な作りの作品を仕上げてきた、この作者」(遠い目)
悲し過ぎる結末を思い胸が傷む。当事者にはまるで反省などないものだな。
登場人物たちがふと口にする言葉が、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!二つの視点から明らかになっていく、愛と哀のミステリ
本作は、いわゆる「本格」ではなく、人間ドラマを主軸に展開していくミステリだ。
奇抜なトリックや非現実的な舞台装置は存在しない。犯人も早い段階で明らかになる。
読者はただ、作者氏の巧みな筆致によって描かれる人間模様と、それを通して浮かび上がる「ホワイダニット(何故、犯人は犯行を行ったのか?)」に身をゆだねるだけで、極上の物語を体験できるはず。
「ミステリってなんか難しそう」と普段は敬遠されている方も、どうか安心してお読みいただきたいと思う。
島崎と川畑、二人の刑事コンビが真相に迫るというバディものの側面も持っており、二人の微妙な関係性も見所。
私などは「もう、やきもきさせるなぁ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一通のラブレターによって浮き上がらせる三十五年目の真実と感情
僕は基本的に物語がシームレスにかつ一定のスピードを保って流れていくのが好きで、書くのも読むのもそういう作品を意図してしまうという自覚があります。そしてそういう作中での時間の流れをどれだけ巧くコントロールできるかという所に作家の技量は出るかなと勝手に思っております。
いや、なんでそんな話をするねんというと「如月芳美さんはそれがどちゃくそ巧い作家なんですよー」という、ちょっとそれはどうなんよというヨイショではなくてですね、どっちかっていうと言い訳なんです。
如月さんの作品を三作読んでおきながら、とりあえずはこの一作だけレビューするのは、つまるところそういう理由です。僕の中の好き・レビュー…続きを読む