まず、言葉選びが美しい作品である。それが一番の印象だ。ひとつひとつの行動や思考を、丁寧に表現されている。それは抽象的表現であるはずの言葉なのに、しっかりと登場人物の心情を表していて違和感なく、すとんと思考に落ちてくる。物語は色も音も無い部屋の中だが、作者が紡ぐ言葉が色彩を宿し、目の前で登場人物が呼吸をする音が聞こえてくる。物語はまだ序盤で謎が多いが、この先の展開を楽しみに読んでいきたいと思える作品だ。