二つの視点から明らかになっていく、愛と哀のミステリ

 本作は、いわゆる「本格」ではなく、人間ドラマを主軸に展開していくミステリだ。
 奇抜なトリックや非現実的な舞台装置は存在しない。犯人も早い段階で明らかになる。
 読者はただ、作者氏の巧みな筆致によって描かれる人間模様と、それを通して浮かび上がる「ホワイダニット(何故、犯人は犯行を行ったのか?)」に身をゆだねるだけで、極上の物語を体験できるはず。

 「ミステリってなんか難しそう」と普段は敬遠されている方も、どうか安心してお読みいただきたいと思う。

 島崎と川畑、二人の刑事コンビが真相に迫るというバディものの側面も持っており、二人の微妙な関係性も見所。
 私などは「もう、やきもきさせるなぁ!」と何度思わされたことか(苦笑)。
 そんな「過程」の描写も本作の魅力の一つ。

 数々の人間模様を通して明らかになる「三十五年目のラブレター」の真実とは?
 愛と哀に溢れるその結末を、ぜひとも目撃していただきたい。

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