第3話 愛されなかった孤児
――両親の死。
元はと言えば、これが契汰の生活を一変させた原因だ。
唯一頼れる親戚に預けられた。
そこから地獄が始まった。
彼らは契汰に愛情を傾けることはほとんどなかった。
いやむしろ、邪険に扱われたことしかない。
両親の遺産はほとんど無かったらしい。
契汰は「金食い虫」と罵られながら育った。食事すら出ない時もあった。
それならばいっそ施設に入りたいと言ったこともあったが、手ひどい目に遭い諦めた。
もっと最悪なことに、養父母の息子が家だけでなく、学校でも契汰をいじめた。狡猾な彼の遊びによって、契汰には友達すら出来なかったのである。
……孤独な彼が唯一コミュニケーションを取れたのは、「視えざるモノ」達だった。しかしこの能力は皮肉にも、契汰をますます孤立させる。
そこから少しでも早く抜け出したくて、契汰は必死に勉強した。
『学んだことは誰にも奪われない』から。
その甲斐あって、公立の良い高校に進学が決まる。
親戚は高校入学のための資金は用意してくれた。
勿論くれた訳ではない、高い利子付きの借金という形だ。
契汰に選択の余地は無かった。なけなしのお金で、一人暮らしの家を借りた。結局お金は足りず、大家さんに頼みこんで敷金礼金は分割で収めることになった。
中学を卒業すれば、アルバイトが出来る。
そうなれば幾つもバイトを掛け持ちする毎日だ。
全ては学費の為、生活の為。贅沢は言えない。
――しかし、そうは言っても必死で借りた自分の家。
ぼろアパートだが、あの家に比べれば天国だ。
浮き上がるような気持ちを抑えつつ、契汰は荷物を鞄に詰め込んだ。
意気揚々と玄関ドアを開け、光溢れる世界へと踏み出す。
まさに季節はうららかな春、文句なしだ。
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