第34話 精鋭たちの猛攻……しかし。

「桐生補佐官!」

「よく持ちこたえたわね、藤くん。危ないからそこをどいていなさい」


 桐生は美しく微笑む。久しぶりに見た学園の息吹に、契汰はほっとした。

彼女に続いて、沢山の異能者がなだれ込む。


「総攻撃!」

 

 桐生が叫ぶと、異能者が一斉に一ツ目に攻撃を始めた。ある者は火、ある者は水、ある者は土、岩……弓や剣、槍を使う者、植物の鞭を使う者もいた。圧倒的な戦力だ。一ツ目はみるみる内に縮こまっていく。


「押せ、押せぇ!」

 

 桐生の冷たくも威勢の良い号令で、彼女の部下である補佐委員を中心とした部隊は、各々の得意とする技で砲煙弾雨を容赦なく浴びせた。

 

 ごごごごぐぐうぎあああああああああああああああああああああああ!!

 

 まさに破竹の勢いだ。今まで見たこともない超人的な異能の数々に、契汰は血が騒いだ。


「凄い、本当に凄い!」

 

 圧巻の一言に尽きるさまに、三人は離れた場所からただ茫然と眺める。


「流石桐生補佐官、やっぱりあの人有能だ。良かった、生きて帰れるぞ」

「どうかな」

 

 永祢が、少し怯えた表情を見せた。


「これだけやって倒せない物の怪なんているかよ、素人の俺でもわかる……」

 

 契汰の耳に地鳴りのような振動が届いた。それは、一ツ目の方角から響いてくる。


「何の音だ、これ」

「……だめ、だめ! 離れないと」


「へ?」

「伏せて!」

 

 永祢が契汰に抱きつき、そしてそのまま押し倒した。

 

 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 

 轟音と共に、一ツ目から無数の手が溢れ出て、異能者たちに掴みかかった。


 首を吊られ、腹部を殴られ、足を折られ、手を切断され、自らの武器で刺され……。

 目を覆いたくなる様な惨状だった。辺りに血が飛び散り、隊員たちのうめき声が転がる。あっという間に形成は逆転してしまった。司令官の桐生は頭を黒い手に鷲掴みにされ、今まさに握りつぶされようとしている。


 予想をはるかに超える一ツ目の強さに、契汰は戦慄を覚えた。


「なんやあの物の怪。あんなヤツ、視たことない」

 

 長くこの世ならざるモノを視てきたであろうねこまるですら、動揺していた。


「物凄い力や。それにあの硬さ。防御力とかそういう次元と違う」

「次元が違うって?」

「攻撃そのものを受け付けてないんや、アレは。これだけの手練れでも歯が立たんはずや。あんなもん、どないせぇっちゅうねん」


 契汰は混乱した。このままでは討伐隊自体が壊滅してしまう。


「契汰」

 

 永祢が契汰の手を握って、じっと見つめた。契汰は焦りと恐れで息が上がってしまい、返事が出来ない。


「契汰なら、倒せる」

「俺なら倒せるって?」


 契汰は驚いて、永祢の目を見返した。

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