僕を無価値という、この世界へ

水谷 耀

第1話 独白

 視えざるモノ。

 それは幽霊であったり、物の怪であったり。

 そして何物にも分類されない、ただの憐れな思念の塊であったり。

 物心がついた時から、他人には「視えないもの」を感じることが出来た。


「視える」


 そんなことを周りに言うと、俺は「腫れもの」になった。

 群れに溶け込めない羊だった。

 助けを乞うた。

 しかし願いが聞き届けられたことは一度としてなかった。

 同じ人間でもこんなものだ。

 みんな善人の皮を被っているが、自分の都合で他者を愛でもすれば、貶めもする。


 でもそれは俺も同じ。

 他人に気を使って、媚を売って、優しいふりをして。

 そしてわざと傷つけて、騙して、勝手に絶望して、泣いている。


 しかし視えざるモノ達はとても自由に、人間など意に介さず振舞っている。

 なんとも不可解で、捻くれた人間の社会よりも、ずうっと解りやすい。


 俺は、ただの傍観者として、彼らを視ているだけだ。

 俺は、自分に視えるモノが何であるかわからない。

 俺は、彼らの世界に干渉する気もない。


 ただ、意識して姿を現すモノ達は、極々稀にいる。

 きっと伝えたいことがあるのだろう。

 語りかけてくる。

 だけど、なぜだろう。

 彼らは言葉として、意思を「現世(コチラ)」に伝えるのが苦手なようで。

 俺はただ、言葉にならない想いを、頷いて聞いてあげるしか出来なかった。


 満足したのか、消えてゆく存在もあれば、哀しそうに去ってゆく存在もある。

 どちらにせよ、どんな相手も、満たしてやることは出来なかった。


だからだろうか。


 いつも俺は、無力感に苛まれている。

 誰も助けてあげることが出来ない。

 こんなちっぽけな存在の自分に。

 嫌気がさすんだ。


 でも。

 予感がする。

 

 今日からの自分は、少し変われる。

 そんな気がする。


 勿論、人生、そんなに都合良くいかない。


 だけど。

 いつか、こんな自分でも誰かを、救えるんじゃないかって。

 必要としてくれる人と、出会えるんじゃないかって。

 希望を描いてしまうんだ。


 何処かの国の、偉い人が言っていた。


「夢を見ることは、悪いことじゃない。」


 もっともな意見だ。

 そうだろ?

     

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