離乳の儀〈前編〉
乳民からのブーブーブーブーという騒めきが収まらない。
王子が乳柱に縛られながら、小刻みに震えながら摩擦音を出す乳房たちを見下ろしていた。
「これよりπ判を行う。まず始めに、被告乳リゾ・チムの
「ぱい、その通りにございます」
バスティ王子の胸がプルンと揺れた。
「そしてまた、乳離れを拒むことが乳渡りの乳習に反する巨乳罪であるということも知っていた」
「ぱい、その通りにございます」
「いや……チム……?」
チムの乳房がプイプイッと横に二回振られた。それは『何も言うな』という乳話であった。
「続いてラクト・フェリン、並びにプロティーン王国の他の四天乳よ」
「「ぱい」」
「なんちらはチムの貧行に従った。そのことを認めるか?」
「「ぱい」」
「おい……待て……」
「よかろう。それでは判決を言い渡す。これより共犯乳ラクト・フェリン、カ・ゼイン、イムノ・グ・ロブリナ、ラクト・ア・ルブミンを、一年間の《乳搾りの刑》に、被告乳リゾ・チムを、《片乳落としの刑》に処す!!」
乳民たちは胸を大きく反り返らせた。今までに聞いたこともないような巨乳罪だったからだ。
「ところなのだが――」
「
オリゴ王の言葉を待たずして、王子の裏返った声で叫んだ。
どよめく乳房に揺れる乳房、弾む乳房に、引きつる乳房。
その乳房の中でも、最も動揺していたのはチムの適乳だった。
「王子……お止めくださいまし! このままわちちだけが処されれば――」
「では、なんちが乳罪を被ると?」
オリゴ王は王子の乳房を見つめながら、その胸の内を推し量った。
その清乳は小刻みに震えこそすれ、堂々たる張り具合で乳王に向かって突き出されていた。
「いや、わちらに罪など無い。ゆえに罪を被る必要は無いのじゃ」
「ほう……乳白いことを言う。続けてみよ」
「そもそもじゃ。乳渡りをするからといって、なにゆえ乳離れをする必要があろう? なにゆえ乳王になる者だけが乳離れせねばならんのじゃ?」
「ちみは乳離れすることの意義を知らぬ」
「そんなもの知らぬわ。このような悪しき乳習など、わちらの代で止めてしまおう。もちろん、五大王国全てでな」
「ふん、その意見は吸えぬ」
オリゴ王はバスティ王子と乳を触れ合える距離まで歩み寄った。
「乳王は、どの乳房よりも大事に思っている四谷の乳慕と、四度も乳離れすることになる。その胸が張り裂けるような痛みは、乳民にも、他国の乳王にも知れたこと。だからこそ乳王は、乳民から敬われ、他国との乳交を保つことが出来るのだ」
それでも王子は納得できなかった。いくら乳王が自国の乳民の乳を呑み放題と言えど、あまりにも失う乳房が大きすぎると思った。
「そんなに胸が痛むのであれば、わちは乳王になど成りとうない! 乳渡りの旅も、ここで止めてやるわ!!」
「ならば、乳法に従い、ちみが四天乳となってカルボに残るか?」
「それも嫌じゃあ!!」
「であれば為すべきことは只一つ。誰の乳も斬らず、乳搾りに尽くさずとも良い方法を教えよう」
「なんじゃと!?」
オリゴ乳王の乳示によって、乳衛兵が王子らの乳縄を解いた。
「ちみにはビフィを送り届けてくれた恩がある。ゆえに逃げたことは許そう。ただし、リゾ・チムの代わりに乳離れする者を、この中から一谷選ぶのだ」
ω ω ω
オリゴ乳王の乳殿にある一室で、王子は横一列に立ち並ぶ五谷の乳房を見比べていた。どの乳にも一長一短の魅力があり、それゆえ、どの乳とも離れ難い。
「うぅむ……」
乳殿で一谷悩んでいた王子は、とある乳臣の美乳に横乳をつつかれた。
「もうじきπ陽が頂点に昇ります。それまでに候補乳を決めていただかねば――」
「ええい! 分かっておるわ!! 仕方ない。一谷一谷と個乳面談を行うことにする! まずはフェリンからじゃ!!」
小部屋に入ってきたのは、見目麗しい美巨乳だ。美しさと大きさを高い汁準で実現している乳房には、天下一とも評せるほどの乳汁が蓄えられている。王子はフェリンとだけは乳離れすまいと決めていた。
「チムと離れると決めたのは、おぬちか?」
「ぱい。その通りにございます」
「なにゆえじゃ?」
「四天乳の中では、チムが最も小さな乳房を持っておりますゆえ」
「なるほど。では、これからの乳離れも大きさごとに進めるつもりだったのじゃな?」
「ぱい」
王子が考えていた個乳面談の順番も、乳守を除いて乳房の大きさ順だった。
「ぱい分かった。次、ゼイン!」
続いて入ってきたのは、零れ落ちそうなくらいに丸々と実った超乳だ。ゼインの乳房は四天乳の中で最も貯乳量が多く、その乳首からは絶えず乳が滴り、パンパンに張った乳衣の二点を濡らしていた。
「わたくちの乳は、最後までとっておいた方がよろしいのでは?」
「たしかに……次、ルブミン!」
ルブミンの豪乳は筋乳質で、頬を当てると弾かれてしまうような張りがあった。
「わちちの乳は役に立つぞ! この豪乳で挟めば、どんな獣もイチポロよ」
「さようじゃな……次、ロブリナ!」
豊乳を下に垂らして、彼乳が部屋に入ってきた。
「やはり、わたちちをお選びになるのでしょうかぁ?」
「正乳、迷っておる」
「そうでございましょう。そうでございましょう。ではどうぞ、最後の直呑みを」
ロブリナの乳汁は量こそ少なかったが、他の誰にもない後味の爽やかさがあった。
「うーむ、この乳も捨て難い……さて、終いはチムか……」
あらためて王子はチムの乳房を見つめた。適乳と言えば聞こえは良いものの、やはり小ぶりだ。育乳著しい王子の乳房と、大きさ自体はさほど変わらなくなっている。
「誰を置いていくか、お決めになりましたでしょうか?」
「考えれば考えるほど、そちじゃった。せめて、もう少し乳が大きければのぉ」
「何を仰るかと思えば。わちちの乳は、王子よりも大きいではございませぬか」
「無乳な! 今は小さいかもしれぬが、旅の終いには大きくなっておるはず――」
「はてさて、それはどうでしょうか? 胸の大きさは、器量の大きさによって決まるとか……」
「おぬち、何を申したい?」
「器量の小さいバスティ王子は、いつまで経っても、乳房が小さいまま。乳上様の半分の半分の半分にも満たない極貧乳で、国中……いえ、天下の笑い乳になることでしょう。おっぱっぱっぱ!」
王子の乳房が紅潮し、その乳輪がぷっくりと膨らんだ。
「垂れ乳を揺らすな!」
「断崖絶壁のような胸板を持つ王子と共に旅を続けるなど、胸が萎む想いにございます」
「わちの乳は……そこまで平らではないわい!!」
王子は胸を振り乱して部屋を飛び出し、カルボの乳臣の前で立ち止まった。
その目からは、何日も乳溜めした乳房のように、上の乳が迸っていた。
「そろそろ――」
「決めたぞ! わちが乳離れするのは――」
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