乳舐祭〈後編〉
焚き乳の火が、バスティ王子とリゾ・チムの胸元を照らしていた。
どれほど乳房を揺らしたか分からぬほど走ったが、城壁を取り囲むように植えられた乳樹の甘い香りは、ここまで届いてこなかった。
巨乳門に辿り着いたとき、王子の胸が震えた。
その巨大なる乳の扉は開け放たれており、周りには乳っ子一谷いなかったのだ。
「これから、どういたしましょう?」
胸を横にしていたフェリンとゼインを見下ろしながら、チムが呟いた。
「南の国ミナラルは、π陸から離れた島々の一つだと聞いておりますが……」
「正確な位置となると乳地図が無ければ分かりませぬ」
「乳筏に乗って渡るとも聞いておりまするぅ」
ルブミンとロブリナの二谷にフェリンとゼインを背負わせ、この宿営乳までやって来た。
自分の思い通りに事が進んだというのに、王子の胸色は悪い。
「追っ乳に捕まってしまったら、ただでは済みませぬ。π悪、乳斬りごっくんもんでしょう」
「なっ……乳斬りごっくん……もんじゃと……?」
乳房が斬りとられてしまう。もしそうなってしまえば、これからどうやって生きてゆけば良いのだろう。
「いやいや、捕まらなければ良いのじゃ! このまま逃げきってミナラルまで行こう!」
「では、どのようにして向かいましょう?」
「それは……フェリンが起きたら聞けば良かろう」
「……ぱい」
王子の垂れ下がる乳房を見たチムは、太腿の上をポンポンとたたいた。
「ん? なんじゃ?」
「王子が吸ってくれませぬゆえ、わちちの乳が寂しがっておりまする」
「そうかそうか、それは悪いことをした」
王子はチムの太腿に腰を乗せると、その柔らかな左腕に背中と頭を受け止められた。
チムは乳房こそ小ぶりだったが、乳守や他の四天乳らと比べて手足の肉が厚かった。王子は彼乳に抱かれると、まるで空に浮かぶ乳雲に包まれながら、乳神様の乳を頂いているような気分になるのだった。
乳衣が捲られ、愛しさの塊が姿を現す。
「初めて王子を抱いたときのことを思い出しまする。わちちの乳首をその口元で探し当てると、それはそれは乳首が取れんばかりの吸引力でしゃぶられました」
「はて、覚えとらんな」
王子は何度も揉みしだき、味わい尽くした名乳にかぶりついた。チムの熱が、乳首を介して腹の中へと染み渡ってゆく。
ニプル山のように聳え立つ立派な乳輪、小ぶりながら柔らかくて温かい乳房。そして、その乳柄を表しているかのような優しい甘さの乳汁。
それらのどれもが愛おしい。彼乳のことをカルボに置いてゆくなど、乳語乳断なことだった。
後ろを振り向きもせずに駆けてきた疲れからか、それとも乳を呑んだ安乳感からか、王子の瞼が閉じられ、その唇が乳首から離れた。
すると、その寝息が聞こえてくるのを待っていたかのように、横になっていた二谷が起きあがった。
「なんと!!」「ぱわわ!!」
ロブリナとルブミンの乳房が固まった。
「やはり、こうなりましたか」
「わたちちたちの王子は、ぺたなことをしてくれましたね」
その起きあがった超乳と美巨乳は、カ・ゼインとラクト・フェリンの乳房だった。
「わちちの最後の願いをお許しいただいたこと、真乳に感射いたします」
「チムは知っておったのか!?」
ルブミンの乳房がブルンと横に揺れた。
「ぱい。これからバスティ王子は、わちちたち一谷一谷と乳離れしていかなくてはなりませぬ。それゆえ、乳離れを拒むとどうなるか、胸の底から知る必要がございまするゆえ」
「覚悟はよろしいのですね?」
ゼインがチムに問いかけた。
「わちちは、バスティ王子の乳渡りが成し遂げられるのであれば、この両乳を失っても構わぬ胸中にございますゆえゆえ」
「よくぞ申しました。では、
フェリンはそう言い残し、ゼインと共にその場から立ち去った。
チムは自分の腕の中で寝入りながら、まだ吸い足らなそうに口をモゴモゴと動かしている王子の乳房を揉んだ。
ω ω ω
「この裏斬り者!! さぁ、戻ってきてもらうぞ!!」
翌朝、王子は乳をもがんばかりに荒ぶる怒声によって起こされた。
「これこれ、そのように乳を強く揉むでない」
王子が寝ぼけ眼で怒れる声の方を見ると、胸当てで持ち前の美乳を強調させた乳衛兵らが何谷か立っていた。
彼乳らはチムを背後から乳交い締めにしており、今にも手持ちの乳刃で乳房を斬り落とさんばかりの勢いで迫っていた。
「バスティ王子にもお戻り願います!」
乳衛兵の言葉で、王子の乳房は硬直した。
「乳斬り……ごっくんもん……」
王子とチムは、乳房に乳縄で縛られた。こうなるともう、うかつに乳出しは出来ない。
「フェリン! フェリンはどこじゃ!?」
ロブリナとルブミンは先に縛られてしまったようだが、フェリンの姿が見当たらない。それにゼインもいないようだ。
「バスティ王子」
チムが王子の胸元で囁いた。
「なっ、なんじゃ?」
「これから何を聞かれようと、『すべてチムがやったこと』だと仰りくださいませ。でなければその乳、斬り落とされてしまいまするゆえゆえ」
「ひぃ!」
乳錠を引かれてカルボまでの道を歩きながら、王子の目から上の乳が零れていった。
どんなに小さいものとはいえ、王子にとってこの乳房はかけがえのないものだ。
この乳が無くなってしまえば、乳渡りを続けられなくなってしまうばかりか、生きていく自信すら保てなくなるだろう。
チムにも悪いことをしてしまった。自分が勝乳に乳同を連れて行きさえしなければ、こんなことにはならなかっただろう。
王子は連れられるまま巨乳門を抜け、大勢の乳民たちが立ち並んでいる広場まで出てきた。
「フェリン……ゼイン……ビフィまで……」
自分たちと同じように乳縄で縛られた三谷の乳房が目に入る。彼乳らは乳舞台上に縛られており、乳動き一つとれないような状態になっていた。
「なにゆえフェリンが……昨夜まで共におったではないか……」
王子とチムもまた彼乳らと同様に乳台へと運び上げられ、乳柱に乳縄で縛りつけられた。
「バスティ王子よ、π変なことをしてくれたな……」
向かい側の乳舞台にはオリゴ乳王とラクトースの君が乳座に腰を下ろし、まるで乳親の乳汁を呑み損なったかのような乳首を、王子たちの方へと鋭く尖らせていた。
「これより、乳前逃亡者へのπ判を行う。離乳を拒んだ罪は、乳神の乳房よりも重いぞ?」
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